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Thursday, May 25, 2023

ブラジル連邦上院、2024年1月1日施行予定の新移転価格税制法案を ... - EY

  • ブラジルの連邦上院は移転価格税制法案を可決した。
  • これは、経済協力開発機構(OECD)によって設定されたガイドラインに従って移転価格税制を実施する上での最終ステップの一つであり、多国籍企業各社は変更に応じた適切な準備を行うことが必要になる。
  • 本税務アラートでは、最終的な法律と前回の法案からの変更点を解説する。
概略

ブラジル連邦上院は、新移転価格税制の法案(ブラジルの移転価格税制の枠組み)を可決しました。具体的には、2023年5月10日に可決された2023年法律第8号案は、2022年12月29日に公表された暫定措置(PM)第1,152号(PM 1,152/22号)に由来しており、新たな移転価格税制の枠組みに対応するものです。この議会承認は、経済協力開発機構(OECD)のガイドラインに従った移転価格税制を導入する上での最終ステップになります。

新移転価格税制は、ブラジルをグローバルバリューチェーンに統合し、二重課税と二重非課税の両方のリスクを軽減することを目指しています。さらに、この新移転価格税制の導入によって、ブラジルが関与するクロスボーダー取引で支払われる所得税、ならびに源泉徴収される所得税から生じる米国での外国税額控除の認識に関する障害が取り除かれることになります。

承認プロセス

暫定措置第1,152/22号(PM1,152/22号)法案は2023年3月30日に連邦議会の下院で審議・可決された後、上院で可決されました。

当該暫定措置の原案に対して下院で加えられた主な修正の内容は次のとおりです。

  • 第13条の修正:商品取引の明確化として以下のものが含まれる。

i. 内部間比較対象取引の使用を許可する。

ii. 独立価格比準法(CUP法)以外の移転価格算定方法の使用を許可する。

iii. 独立価格比準法に比較調整を入れる場合には、慎重を期した上で、別の移転価格算定方法の選択も検討することの重要性が強調されている。

iv. 公的価格(public price)が独立間企業価格を検討する上で優先されるべきであると強調されている。

v. 公的価格の使用により得られる結果が独立企業間原則と矛盾する場合など、特別な状況下では、当該の公的価格の使用は不適切であると判断されるべきであると強調されている。

  • 第17条の修正:二次調整の概念が削除された。
  • 第19条の削除:二次調整の仕様が削除された。
  • 第45条の修正:法人所得税(IRPJ)および法人所得税に対する社会負担金(CSLL)の算定基準について、国・地域において居住者である事業体、あるいは住所を有する事業体、または、税制優遇措置や特権的な財務優遇措置が適用されている事業体へ、ロイヤルティとして、また技術的、学術的、事務・管理的な支援、その他の類似する支援の対価として、支払い、クレジット、引き渡し、使用または送金される金額に対する控除制限が削除された。

連邦上院での暫定措置第1,152/22号法案の審議の過程で追加の修正案が提案されましたが、承認されませんでした。当該修正案を以下に要約します。

  • 修正案第108号は、新移転価格税制の施行時期を2024年から2025年に後ろ倒しにすることを目的としていた。
  • 修正案第109号は、独立価格比準法(CUP法)を適用する際に、政府機関が設定した見積もり価格が商品価格を決定するための適切な参考価格と見なされるように第13条のセクション6を修正することを提案した。

最終的には、上院で追加修正案はすべて否決され、下院で可決された暫定措置法案が追加修正なしに上院で承認されたような結果になりました。

次なるステップ

ブラジルで新移転価格税制を実施する上での最終ステップとして、暫定措置第1,152/22号法案は大統領の最終承認をされることになります。大統領の承認を得た後、当該暫定措置法は連邦官報に掲載されます。

ブラジルの納税者は、今年(2023年)からOECDのガイドラインに沿った新移転価格税制の早期適用を選択することができます。そのためには、納税者は2023年9月1日から9月30日までの間にブラジル連邦歳入庁(RFB)1にその旨を通知しなければなりません。2024年1月1日からは、新移転価格税制の適用がすべての納税者に義務付けられます。

新移転価格税制に係わる暫定措置第1,152/22号法の成立はブラジルにとって画期的であり、同国の国際的立場において新たな章を象徴するものとなります。新移転価格税制の枠組みによって、海外からの新たな直接投資が呼び込まれ、ブラジルがグローバルバリューチェーンに統合されることが期待されます。こうしたことから、多国籍企業は、ブラジル国内外での事業への潜在的な影響(例えば、早期適用、法人所得税や関税評価への影響、米国における外国税額控除など)をマッピングすることを含め、この変化に適切に備えることが不可欠となります。

新移転価格制度モデルの主な技術的側面に関する概要

暫定措置第1,152/22号の主要なポイントの中で、次の点をハイライトしておきます。

  • 当該暫定措置の発効日は2024年1月1日であるが、2023年1月1日から早期適用が可能。
  • 独立企業間原則が導入され、また関連当事者の概念が広がる。
  • 新移転価格税制は関連会社間のすべてのクロスボーダー取引(つまり、無形資産、コストシェアリング契約(CCA)、事業再編)にも適用される。
  • 独立価格比準法(CUP法)、再販売価格基準法(RP法)、原価基準法(CP法)、取引単位営業利益法(TNMM)、利益分割法(PS法)および、関連会社間取引の分析のベストメソッドルール(最適方法ルール)に従って、すべてOECD基準の移転価格算定方法が実行される。
  • 新移転価格文書では機能分析(機能、資産、リスク)および経済分析を導入する。
  • クロスボーダー商品取引において、信頼できる比較対象取引が利用可能である場合には、独立価格比準法(CUP法)を適用する。ただし、納税者は適切な事実と状況に基づいて他の移転価格算定方法を選択することもできる。
  • 最も信頼性の高いデータとベストメソッドルールに基づいて比較対象企業(Tested Party)を選択する。
  • 関連会社間の融資や保証、財務機能の一元管理、保険取引など、クロスボーダーで起こるすべての金融取引が含まれる。
  • ブラジルの税制で現在適用されているロイヤルティの控除制限が撤廃され、新移転価格税制での概念が取り入れられる。
  • 利益レベルの指標を考慮した比較対象取引の範囲(四分位範囲または全範囲)の導入。
  • 自発的調整や補償調整の導入。
  • 税の確実性(tax certainty)と簡素化を高める手段(相互協議(mutual agreement procedures)と移転価格税制に関する事前協議(advance pricing agreements))の導入。

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