日本銀行の植田和男総裁は25日、産経新聞などのインタビューで過去25年間の金融緩和策の多角的なレビュー(検証)について「特定の政策変更や政策運営の見直しを念頭に実施するものではない」と強調した。これまでの金融緩和策の効果と副作用を点検し、あくまで将来の政策運営に生かすのが狙いだ。ただ、1年から1年半の検証期間に政策変更がなければ、今後の運営でレビューの重みが増すとの見方もくすぶる。
植田氏はインタビューでレビューの人選について「公平、客観性に配慮するように努めたい」と述べた。日銀は、内部の専門家を中心に分析し、外部有識者からも意見を聞く。各地で実施する金融経済懇談会などで地方の意見も吸い上げ、レビューを作成する考えだ。
植田氏が過去の金融緩和策を検証する背景には、持続的・安定的な2%の物価上昇目標が十分な成功を収めてこなかったという思いがある。日本はデフレに陥った1990年代後半以降、ゼロ金利や量的、異次元緩和など非伝統的な政策を打ち出してきたが、目標を達成できていない。学者出身の植田氏はレビューを中長期的に役立てたいとの思いが強くある。
当面は2%の物価目標に向けて、粘り強く大規模緩和を続ける方針で、緩和策を解除する出口戦略とは切り離してレビューを実施する。植田氏はレビュー期間中でも「必要に応じて、政策を変更し、実施することはあり得る」との考えを改めて強調した。
レビューについて、金融政策を専門にする中央大の原田喜美枝教授は「どこで、どのような政策判断の見誤りがあったのか検証する意義は非常に大きい」と話す。「これまでの政策の影響で、さらに副作用が出てくる可能性もある。現体制の失敗ではないことを明確にする上でも重要な意味を持つ」と指摘する。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「政策の見直しはすぐに実施されないというメッセージを金融市場に送る狙いもあるのではないか」と分析する。市場でも早期に金融緩和を修正するという見方は後退している。
植田氏はレビューについて近い将来の政策変更に結びつけないとしているものの、検証の期限が近づくにつれ、重みが増してくるという展開も予想される。(黄金崎元)
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