もっと美味しいおでんを作りたい
材料を買ってきて煮込めば簡単に作れる……というイメージの美味しいおでん。
自宅でおでんを作るという人も多いのではないでしょうか。
筆者自身も年に一度はおでんを作ります。
しかし、「おでんを美味しく作るコツ」ってあまり知らないかも。
そんなことを考えていたら、知り合いのおでん屋さんが教えてくれるということで、美味しい作り方のコツを聞いてきました。
お話を伺ったのは、茅場町で美味しいおでんとおばんざいを提供する「煮炊きや おわん」さん。
ここの店主の柴田雄平さんは、なだ万出身の師匠から京料理を習い、東京の門前仲町におばんざいと日本酒のお店を2014年にオープンさせた方です。
▲門前仲町のお店と茅場町のお店で共通の評判メニューがおばんざい盛り合わせ
煮炊きや おわんは、柴田さんが東京で運営するお店としては2店舗目です。現在は東京で2店舗、京都に3店舗の飲食店を経営しています。
▲茅場町 煮炊きや おわん
最近の柴田さんはほぼ経営側に回っており、お店に立つ機会も少なくなっているそうですが、今日は特別にカウンターに入ってもらいました。
また、「飲食店なのに土日祝日を休みにするお店」として働き方改革関連の話題などで各種メディアにインタビューされることの多い話題の人でもあります。
今回はそんな柴田さんにおでんについて根掘り葉掘り聞いてみようと思います。
美味しいおでんの秘訣は「練りもの」と「塩」
▲居心地のいい店内。カウンターには色とりどりの取皿が並んでいます
──今日はありがとうございます。
柴田:大丈夫だよ! とはいえ、最近経営の話ばかりしているから料理人としてインタビューされるの嬉しいな。せっかくだから料理食べてもらいながらやろうか!
──おぉ! ありがとうございます。
▲お店はおでんの他におばんざいがカウンターの上に並んでいます
──さっそくですが、おでんはやはり「出汁」がポイントだと思うのですが、お店ではどんな出汁を使っているのでしょうか?
柴田:うちの出汁はカツオ節と昆布を使っているよ。
──出汁はやっぱりカツオ節が良いんですか?
柴田:うちのおでんは酒と塩だけで味つけしているから。出汁をとるのはカツオ節が一番良かったんだよね。
──醤油は使わないで、塩だけなんですね。
柴田:塩出汁の方がなんでも具材を合わせられるからね。練りものからも出汁が出るから、塩出汁だけで十分なんだ。そのほうがおでんのタネの味を引き出してくれるし、「出汁の旨味+タネの出汁」が合わさって美味しくなるんだね。
だから、おでんの出汁の役目って「食材に旨味を染み込ませる」のと、「食材から旨味を引き出す」の両方の意味合いがあるんだ。そのバランスを見た時に、塩の出汁が一番いいなと思ったんだ。
──練りものからも旨味が出てくるわけですね。
柴田:そうだね。だからうちは練りものをすごく多めに入れているんだ。
▲お店のおでん盛り合わせにも練りものがたくさん入っています
──ということは、家庭でおでんを作る時も練りものをしっかり入れると美味しくなるんですかね?
柴田:そう! 絶対に練りものはたくさん入れたほうが良いよ。
──それに加えて、出汁は多少こだわった方がいいと?
柴田:多少というか、だいぶこだわった方が良いと思う。出汁が勝負!
▲この日のお通しに出汁の効いた美味しい椀を出してくれました(日によりお通しは変わります)
──出汁は沸騰させない方が良いと聞いたことがあるんですが、それはなぜなんですか?
柴田:出汁って、沸かしすぎると濁ってしまい、えぐ味が出てきちゃうからね。
──家でやる時は出汁パックとかを使っても良いんでしょうか?
柴田:出汁パックでもちろんいいと思うよ。最近はアクとえぐ味と臭みが出づらいように工夫されているものもあるから、それを選ぶと良いよ。
──ポイントは出汁と塩と練りものなんですね。まさか醤油を使わないという選択肢があったとは。
柴田:そうだね。おでんって、繊細で奥が深いんだよね。お店を開業するときに何十パターンも出汁や醤油を変えていろいろ試してみたんだけど、醤油よりも塩の方が僕の求めている味だなって。
おでんに向いてるタネはどれ?
▲おばんざいは季節感を楽しむことが出来ます
──お店では、おでんに入れるタネを選ぶ基準とかあるんですか?
柴田:「味が出るやつ」と「味を吸い込みやすいやつ」を選んでいるかな。あとは練りもの屋さんと相談して決めてる。
──味が出るやつって具体的にどんなものですか?
柴田:練りものの面積が大きいやつがいいね。あとは練りものに使われている材料。例えばタラとかエソとか。基本的に白身魚が使われているものを選ぶようにしている。
──白身魚がいいんですね。
柴田:旨味を閉じ込めやすい。赤身とか、練りもので見たことないでしょ。
──練りものの面積が大きい、なんてところまでは気にしたことなかったですね。
▲表面積の大きい練りものは旨味がたくさん出るようです
柴田:面積が大きい方が、旨味が染み出しやすいからね。
──なるほどです。逆にあまり入れない方がいいタネってあるんですか?
柴田:その辺は好みだけど、香辛料とかが入っているものを選ぶと味が少し変わっちゃうよね。
──たしかに、香りがついちゃうと塩出汁のバランスが崩れそうですね。それと出汁を吸い込みやすいタネにはどんなものがありますか?
柴田:味を吸い込みやすいやつならがんもとかこんにゃく、豆腐系はいいよね。あと乾き物の昆布とかしいたけとか。吸い込みやすいね。
▲おでんの定番のがんもはやはり重要なようです
──生野菜とかはどうでしょう?
柴田:生野菜は水気が多くて、旨味を吸い込みづらいんだよね。
──これは絶対入れておけってタネはありますか?
柴田:それはもう、間違いなく昆布だね。昆布は戻さずにぶち込む!
──「ぶち込む」んですね(笑)。
▲柴田さんは表現は豪快ですが繊細な料理を作る人です
──タネを入れる順番とかありますか?
柴田:全部いっしょに入れてもいいけど、はんぺんとかちくわぶは後から入れたほうが良いよね。練りものなんかは基本的に先に入れたほうが良い。あとは、ゆっくり炊くことかな。
──おでんはゆっくり煮たほうがいいんでしょうか?
柴田:難しいんだけど、沸かして、ちょっと弱火で煮て、練りものから脂が出てきたくらいで一回火を止める。そして冷ましてからまた沸かすのがベストかな。
なぜかと言うと、温まるとタネから出汁と脂が出くるでしょ。それが冷めるタイミングでタネが旨味を吸ってくれるんだ。だから、一度冷まして味を入れてから、また温める……ってのが大事。
──一回冷ますのが大事なんですね。
柴田:家でおでんを作ったとき、2日目の方が美味しいのはこれが理由なんだよね。
おでんに味を染み込ませるコツは「生上げ」
──大根に味を染み込ませるためのコツとかはあるんですか?
柴田:大根を炊く時に米ぬかとか米を入れてあげると大根の表面が傷つくから、それをちゃんとやることかな。うちは出汁が濁ってぬか臭くなるからやってないんだけど、家庭で染み込んだ大根を作るなら大切だよ。ぬか臭いのが嫌いな人にはおすすめできないけど。
──よく米の研ぎ汁とかいいますもんね。あとはベタですが、「隠し包丁(※)」を入れるとかですかね。
(※)食材に味の染み込みや火が通りをよくするために、目立たないところに包丁で切り込みを入れること
柴田:そうだね。あと「生上げ」だね。
──生上げ?
柴田:大根を茹でて、熱い状態でザルの上とかに置いとくの。
▲生上げを見せてもらった
──干すんですか?
柴田:和食の専門用語で、茹でたり煮たりしたものを水に漬けずにザルで汁を切り、自然に冷ますことを「生上げ」って言うんだ。表現しづらいんだけど、自然に冷まして置いておくと、表面が乾燥してカピカピになるんよ。そうすると、大根の繊維が出てきてくれる。
──繊維が出てくる……?
柴田:わかりづらいかもなんだけど、この表面のカピカピ感なのよ。
──たしかに、なんとなく繊維が浮き出ている気もしますね。
柴田:それがめちゃくちゃ重要で、この状態で再度出汁に入れると、表面が乾燥しているから出汁が染み込むんだよね。和食の世界では生上げってかなり大事な工程なんだよ。
──なるほど! いちど表面を乾かすことで、出汁が染み込みやすくなるんですね。
▲出汁が染みた大根はやはりおでんの王様だと思う
柴田:そうそう。自分も修行していた頃、お浸しとかの食材を茹でた後に「生上げしておいて」とよく言われてた。
──「生上げ」ですね。家庭だとなかなかやらないかもしれませんが、こだわる方なら時間がかかってもやるかもしれませんね。
牛すじの煮込み方は? 変わり種の美味しい具材は?
▲お店の調理場にあった立派なタコ
──おでんにタコは入れないんですか?
柴田:タコは出汁が赤くなっちゃうから入れないね。これはお刺身用。あと最近、甲殻アレルギーの人とかもいるから。入れちゃうと、そういう人が食べられなくなるからね。
▲炙ったブリを塩とわさびで出していただきました
──牛すじは入れないんですか?
柴田:牛すじとかお肉系も入れないね。おでんの出汁が濁るから。
▲そのかわりにお店では鶏の照り焼きや豚の角煮などのお肉料理も提供している
──仮に牛すじを入れるなら、コツとかありますか?
柴田:牛すじを入れるならおでん出汁だけで煮て、ポン酢をかけて食べると超美味しいよ(笑)。
──たしかにあれは美味しいですよね。
柴田:牛すじって、どこの部位の牛すじのことを言っているのかな?
──牛すじって種類があるんですか?
柴田:肉々しい牛すじもあれば、白っぽい牛すじもあるんだよ。
──それは部位が違うってことなんですか?
柴田:土手煮とかに入ってる肉々しい牛すじは肉付きの部分を使うけど、白っぽい牛すじは筋だけ使うんだよ。肉付きの牛すじは長い時間煮れば角煮みたいに柔らかくなって美味しいし、筋だけを使った牛すじは串にちゃんと刺してあげないとボロボロになっちゃう。
──なるほど。
柴田:そしてどちらもしっかりと生姜とネギと酒で下茹でをしてあげないと美味しくならないね。いきなりおでんに入れると臭くなっちゃうし。あとはとにかく長く煮ないといけない。
▲仕入れ状況によっては鴨肉を出してくれることもあるそうです
──牛すじはどれくらい煮てあげるといいんでしょうか?
柴田:美味しいと思う硬さって人によって違うんだろうけど、しっかり煮込んであげないと美味しくはならないよね。
──どれくらいの時間、煮るのがいいんですか?
柴田:大きさにもよるだろうけど1時間くらいかな。でもそんなことしたら出汁がなくなっちゃうから、下茹でしてしっかり煮込んであげるのが良いと思う。
──なるほどです。いろいろ考えていくと、おでんの完成のタイミングって難しいですね……。
柴田:そうだね。出汁から取るとなると少し大変だけど、家庭だと30分〜1時間くらい煮れば良いんじゃないかな。お店だとおでん器があるから沸騰せずに保温状態でおいておけるので、朝の仕込みから具材を入れ、放っとけば自然と味が染み込んでいくんだよね。だからお店だと6時間くらい保温で置いてあるよ。
──要するに低温調理されているってことですよね。
柴田:そう! だから出汁を沸かさなくても済むんだ。おでん屋さんで出汁を沸騰させちゃったら終わりだね。絶対ダメ。
──濁っちゃうからですか?
柴田:そうそう。出汁が濁って美味しくなくなっちゃう。澄んだ出汁にしておくためにも、おでんは沸かさない方がいいんだ。
──でも家庭だと、どうしても濁らせがちですよね。
柴田:そうだね。実家で作るおでんって、出汁が濁っているイメージ(笑)。
──たしかに僕の実家のおでんの出汁も、透き通ってなかったかも。
柴田:やっぱり、どうしても沸騰させたくなっちゃうんだよね(笑)。
▲店内はカウンターとテーブル席があるこじんまりとした温かみのあるお店です
──ちなみに、お店では何か変わり種のタネを入れてたりしますか?
柴田:うちのお店ではやってないなぁ。
──今まで食べたおでんでうまかったものってありますか?
柴田:牡蠣とか白子のおでんは美味しかった! 魚単体のおでんもうまいよ。ブリとか。あとはベーコンとかじゃがいも。これにバターをつけるとうまい。
──それは酒飲みからするとたまらないですね。
▲お店では美味しい日本酒をいただくこともできます
食事のメインにもサブにもなるおでんは、突き詰めていくと、出汁と塩だけの味付けも良さそうと言うことがわかりました。
塩で出汁をとるおでんをやったことはありませんでしたが、この機会に「塩で出汁をとるおでん」を試してみるのも良いかもしれませんね。
お店情報
煮炊きや おわん
住所:東京都中央区日本橋茅場町2-5-11
電話:03-3669-2888
営業時間:月曜日〜金曜日ランチ11:30~14:00、ディナー17:00~23:00
定休日:土曜日、日曜日、祝日
書いた人:パーソナル栄養士いっしー
パーソナル栄養士、エキスパートファスティングマイスター。大学卒業と同時に栄養士を取得。「タニタ食堂」で勤務し、健康な方へより健康的な食事を提供する経験をする。 退職後、かねてより夢であった世界一周の旅に出発。世界中の有名料理から地元人しかいないようなローカル屋台飯まで食べ歩き、各国の市場やファーマーズマーケットに足を運んで食文化に触れる旅をする。 帰国後、フリーランス栄養士として「食の力で楽しく健康に」をテーマに「食べる楽しみ」を伝える活動をしている。
"そうだね" - Google ニュース
March 31, 2020 at 07:00AM
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おでんを美味しく作るコツを専門店に聞いてみた【調味料は塩のみでお店のような味に】 - メシ通
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