中央銀行が特定の国債の利回りをコントロールする、YCC(Yield Curve Control:イールドカーブ・コントロール)。日本銀行は黒田東彦前総裁のもとでYCCを継続してきたが、新総裁への交代に伴い、その流れが変わろうとしている。今回は日銀の動向を中心に、YCCに関する過去記事を紹介していく。
中央銀行が国債の利回りをコントロールする「YCC」
YCC(Yield Curve Control:イールドカーブコントロール)は、中央銀行が特定の国債の利回りをターゲットとし、買い入れ操作を通じてその利回りをコントロールする金融政策手法のこと。通常の量的緩和政策では資産の買い入れ額を決定するが、YCCでは特定期間の利回りをターゲットに設定する。
YCCのメリットとしては、金利水準を安定させることと、低金利環境を維持して経済活動を刺激することが挙げられる。また一定の金利水準を維持することで、経済に対する政策効果が持続する可能性もあるとされる。
一方で、人工的な金利コントロールは金融市場にゆがみを生じさせかねないのがデメリットだ。中央銀行の大量の国債買い入れによってバランスシートリスクが増大し、また、金利水準を低く抑えることによってインフレリスクが高まる可能性もある。
この記事では日銀が打ち出しているYCCの経緯と現状について、過去記事から時系列で振り返ってみる。
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アベノミクスが掲げた「2年で2%の物価上昇」という目標を達成できない政府に代わり、YCCによって景気を刺激しようとした日銀。これにより、債券市場関係者の間では「長期金利は市場の自由な取引ではなく、日銀によってコントロールされる」という見方が一般的になったという。
日銀「必然のサプライズ」、政策修正で円高・株安・金利上昇どこまで
日銀は2022年12月、これまでYCCによって抑え込んできた長期金利の変動幅を拡大すると発表した。関係者の間では、このサプライズ修正が「過度な円安への歯止めになる」と期待する声が上がる一方、今後は日銀と市場の探り合いが本格化し、市場の変動が大きくなる可能性もあると見られている。
日銀が繰り出した「奇策」、銀行などに国債購入促す資金供給
12月の⻑期⾦利変動容認幅の拡⼤発表後、市場では「いつまた日銀が変動容認幅を拡大するかわからない」と疑心暗鬼が広がり、それに合わせて債券市場では売りが優勢になっていた。しかし年が明けた1月18日の金融政策決定会合で、日銀はYCCの維持をあらためて表明。市場では0.5%を超えていた長期金利が一気に0.360%まで下がるなど、大きな混乱を呼ぶこととなった。
長期金利の上限引き上げ、日銀はなぜ12月に「パンドラの箱」を開けたのか
YCCをめぐる日銀の動きに振り回された金融市場。特に2022年12月のサプライズ修正について、識者は①YCCをめぐる海外投資家との攻防が長期化したこと、②債券市場の機能低下による弊害が地方債や社債などの発行市場にも飛び火していたこと、③急速な円安・ドル高を受けて首相官邸から度重なる要請を受けたこと、という3つの理由を挙げる。
日銀、投機筋「兵糧攻め」で空売りけん制 金利上昇抑制に布石か
2023年2月、日銀が金融機関に実施している国債の「貸出料」を引き上げることを決めた。この引き上げにより、証券会社などが負担するコストは従来の4倍になるという。突然にも思える方針に、市場関係者からは「将来的にYCC修正を進めるための地ならしのようにも見える」との声が上がっている。
日銀新体制が政策修正に動くと、長期金利はどこまで上昇するか?
その日銀の総裁が、黒田氏から植田和男氏に交代する(2023年4月9日より)。植田氏は現時点で「金融緩和の継続が適当」「当面はYCC政策を続ける」と述べているが、この先いずれかのタイミングで修正する可能性もにおわせているという。
最後に
2016年から一貫してYCC政策を維持する日銀。しかしウクライナ危機に端を発する世界的なエネルギーや食料価格の高騰によって日本でもインフレが進行し、国民を苦しめている。日銀の総裁となった植田氏がYCCについてどのような決断を下すのか、今後の行方に注目していきたい。
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