弊害の大きい政策を見直しながら、景気の下支え役を引き続き果たせるか。日銀の新総裁には柔軟な対応が求められる。
4月で任期が切れる黒田東彦総裁の後任候補に指名された経済学者の植田和男氏が国会で所信を表明した。
2%の物価上昇目標について「持続的、安定的に達成するまでには、なお時間を要する」との見通しを示した。そのうえで「金融緩和を継続し、経済を支えることで、企業が賃上げできる環境を整える」と説明した。
緩和を当面維持する姿勢を示したのは、金融市場に与える影響を考慮したためだろう。就任後は異次元緩和の功罪を検証すべきだ。
黒田氏が2013年、国債を大量購入する政策として打ち出した。グローバル企業の収益を押し上げ、株高を演出したのは確かだ。しかし、約10年が経過しても経済の好循環は実現していない。
最近は、硬直的な政策運営の弊害が目立っている。昨年春以降、欧米の中央銀行が利上げを急ぐ中、日銀の緩和維持が過度な円安を招き、物価上昇に拍車をかけた。
金利抑制のため日銀が国債の過半を買い占め、債券市場をゆがめている。これに対処するため、昨年12月に長期金利の上限を引き上げたが、問題は解消していない。今年1月の国債購入額は過去最大に膨らんだ。
長期金利を抑える政策について植田氏は「時間をかけて議論を重ね、望ましい姿を決めたい」と語り、修正に含みを残した。
政策を修正する際には、経済への影響に配慮する必要がある。
日本経済はプラス成長に転じているものの、回復の動きは鈍い。世界経済の減速懸念が広がる中、金利が急激に上昇すれば、景気や賃上げの動きに冷や水を浴びせる恐れがある。
経済の現状と先行きを見極めながら、機動的な政策運営を行うことが不可欠だ。
金融政策を正常化させる「出口戦略」の詳細について、植田氏は言及を避けた。国の財政運営のあり方にも関わるだけに、いずれ明確化することが必要になる。
日銀は難しいかじ取りを迫られる。だからこそ、国民に対して丁寧な説明を心掛けてほしい。
からの記事と詳細 ( 社説:日銀総裁候補の所信 政策検証し柔軟に修正を - 毎日新聞 )
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