日銀総裁候補の植田和男氏(71)は、衆院議院運営委員会が24日に開いた所信聴取で、2%の物価上昇を目標とする政府・日銀の共同声明を維持し、「金融緩和を継続し、賃上げできる環境を整える」と表明した。一方、2%物価目標を実現すれば今の緩和を徐々に縮小する「正常化」に踏み出せるとも述べ今後修正する可能性も示唆した。(大島宏一郎、寺本康弘)
◆現状は「いろいろなリスクを抱えている」と植田氏
植田氏は物価の見通しについて「2%物価目標の持続的・安定的な達成にはまだ時間を要する」と見通しを示しつつ、総裁任期の5年で「積年の課題だった物価安定の達成というミッション(使命)を総仕上げする」と力をこめた。ただ、植田氏は「基調的なインフレ率の2%達成」という条件を付けた上で「現在採用している強い緩和を平時の姿に戻す」と言及。方法についても「大量の国債購入をやめる判断になってくる」と述べた。
一方、黒田
◆政治からの圧力とどう向き合うか
植田氏は2000年8月にゼロ金利政策の解除を決定した時に反対した一方で、国債の購入で市場にお金を流す「量的緩和」については01年3月の決定会合で「積極的な意味をあまり見いだしがたい」と述べ、慎重な姿勢を見せていた。
植田氏は聴取でも緩和を継続すると説明するが、日本経済研究センターがエコノミスト35人に金融政策の方向性を尋ねた2月調査によると「23年内に引き締め」と答えた人が全体の4割を占め、「24年以降に引き締め」との回答と合わせると7割に上るなど、市場では徐々に緩和をやめるとの見方が強い。
ただ、政策転換は容易ではない。政界からはアベノミクスの継続を求める声が根強く、日銀が現行の緩和策を縮小しようとすれば「政治からの緩和圧力がかかる」(市場関係者)可能性があるためだ。実際、白川方明前総裁も政界からの理解が得られず、任期中に「緩和の規模が不十分だ」との批判を受けた。第一生命経済研究所の熊野英生氏は「金融政策の正常化は黒田緩和との決別を意味する」と話し、政治との対話が重要になるとみる。
24日午後には副総裁候補の聴取も行われ、日銀理事の内田真一氏と前金融庁長官の氷見野良三氏は緩和継続を訴えた。衆参両院の同意が得られれば、総裁は4月9日、副総裁は3月20日に就任する予定。
◆木内・元日銀審議委員が「修正時期が近い」と受け止めた政策
野村総研の木内
具体的な金融政策の修正に言及しなかったのは、将来、政策を修正する際に国会での発言が問題になる他、金融市場の過剰な反応を起こさないように配慮したと分析する。
ただ緩和は継続すると説明する一方で、マネーを増やせば物価が上昇するというリフレ派の考え方について「植田氏は否定していた」と受け止める。
さらに植田氏は黒田東彦総裁が導入した長期金利をコントロールする政策については、どう対応するか問われると、「発言を控える」と繰り返していたため、他の緩和策と比べ「修正時期が近い」と分析した。
木内氏は「植田氏は金融政策の限界にも言及し、その中でできることはやると説明していた。(異次元緩和が始まった)10年前は金融政策の能力を超えたところが期待されたところがあったが、その点も正常化してきている」と指摘した。
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