[ロンドン 6日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は9日の理事会で、ほぼ確実に債券購入プログラムの終了を発表する見通しだ。インフレ率が上昇しているため、利上げも近いとみられる。
市場はECBが今後どう動くかについて従来よりも明確な説明を求めており、インフレに対して後手に回らないよう金融引き締めを加速させるかどうかに注目している。
LBBWの首席エコノミスト、モリッツ・クレーマー氏は、「ECBが本当に積極利上げを行えるかどうか疑問が残っている」と指摘。ラガルドECB総裁は、かつてドラギ元ECB総裁がユーロ圏債務危機に際して「やれる事は何でもやる」と明言した時のような正念場を迎える可能性がある、との見方を示した。
以下に市場の主な注目点5つをまとめた。
(1)9日の決定内容
ECBはほぼ確実に、年央に債券購入プログラムを終了すると宣言し、7月の利上げに道を開くだろう。実現すれば2011年以来初めての利上げとなる。
ラガルド総裁はこれまでに、現在マイナス0.50%の中銀預金金利を9月末までに「ゼロ」もしくは「ゼロをわずかに上回る」水準に引き上げるべきだと発言している。つまり現水準から少なくとも計50ベーシスポイント(bp)の利上げを行う可能性がある。
ECB理事会はまた、満期を迎えた債券の償還金を再投資し続けることを、あらためて約束する公算が大きい。これは景気の下支えにつながる。
(2)7月に大幅利上げの可能性はあるか
エコノミストと市場は7月に25bpの利上げを予想しているが、より大幅な利上げの思惑も高まってきた。特に5月のユーロ圏のインフレ率が過去最高を記録してからは、そうした観測が強まった。
オランダ、オーストリア、ラトビア、スロバキアの各中銀総裁は50bpの利上げを検討すべきだと述べている。
5月のインフレ率が発表される前、ラガルド総裁は25bpの利上げを示唆したが、数カ月中により大幅な利上げを実施することにも含みを残した。
5月のインフレ率が8.1%に加速し、ECBの目標値である2%の4倍に達したため、ラガルド氏は大幅利上げを検討するよう迫られるだろう。
(3)中立金利はなぜ重要か
ラガルド総裁は中立金利や、場合によってはそれを上回る水準まで利上げを進める可能性を示した。このため、ECBの考える中立金利水準が分かれば、ECBがどこまで利上げする方針かが見えてくるだろう。
中立金利とは、景気を刺激も抑制もせず、潜在成長率並みの経済成長を達成できる金利水準を指す。この水準を客観的に測定することはできない。
中立金利は1%ないし2%と推計されている。つまりECBは2023年に入っても利上げを続ける可能性が高い。ただパネッタECB専務理事は、金融政策を正常化する際に中立金利を目指すべきではない、との考えを示した。
(4)経済成長率の低下による利上げへの影響
ECBは、景気が減速する前に金利を正常化するという難行に直面している。結局はインフレ退治と景気浮揚の二者択一を迫られるかもしれない。もっともECBの究極の使命は物価の安定だ。
消費を圧迫するインフレや、ウクライナでの戦争、中国の厳しい新型コロナウイルス対策などが現在、世界経済に打撃を及ぼしている。ECBは9日に公表する最新の経済見通しで、成長率予想を大幅に下方修正する一方、インフレ率予想を上方修正する可能性がある。
ECBのチーフエコノミストのレーン理事は、9月以降の利上げはインフレ動向とウクライナの戦争による影響にかかってくる、との見解を示した。
(5)ECBはユーロ安を懸念しているか
最近の幹部発言からは、ユーロ相場が再びECBの懸案事項の1つになったことがうかがえる。ECB理事会メンバーである仏中銀のビルロワドガロー総裁は5月、過度のユーロ安は物価目標の達成を脅かしかねないと発言した。
もっともECBは、「為替相場を監視するが、目標にはしない」という公式見解を維持する可能性が高い。
ユーロは今年、ドルに対して6%下落したが、これは米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めによるドル高の影響が大きい。実効レートで見ると、ユーロは1.6%の下落にとどまっている。
(Dhara Ranasinghe記者、 Tommy Wilkes記者、 Saikat Chatterjee記者)
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