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Tuesday, May 17, 2022

イギリス、対EU通商協定を変更する国内法案を発表 貿易戦争の可能性も - BBCニュース

Liz Truss

画像提供, Getty Images

イギリスのリズ・トラス外相は17日、欧州連合(EU)離脱協定で定められた通商合意に変更を加える法案を発表した。国境を接している英・北アイルランドとEU加盟国アイルランド間の通商について、「不要な官僚主義」や規制を排除するとしている。

イギリスは2021年1月にEUを離脱した際、北アイルランドとアイルランド間の貿易に関する合意「北アイルランド議定書」をEUと交わした。この議定書では、北アイルランドとEU間の通商に支障が出ないよう、税関など国境管理措置を設けないと定められている。

しかしこれにより、北アイルランドと残りのイギリスとの間にEU法にのっとった税関が必要になっていた。イギリス政府はこれを不服として、議定書の改定を模索していた。

EUはかねて、離脱協定の内容に変更は加えられないとしている。また、議定書の内容を無効にする国内法を定めるのは国際法違反だという声もある。

EUはトラス外相の発表を受け、イギリスが法案可決に進むなら「あらゆる手段を使って対応する」と述べた。

アイルランドのサイモン・コヴェニー外相も、議定書をめぐるイギリスの一方的な動きは「信頼を損なう」ものだと話しており、イギリスとEUが貿易戦争に突入する可能性もある。

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トラス外相は議会で、法案は北アイルランド議定書を破棄するものではなく、イギリス製品の移動を「不要な官僚主義」と規制障壁から解放するなど、限定的な変更を加えるものだと説明。「北アイルランドの深刻な状況」に対し、「早急に秩序を取り戻すために動く必要がある」と述べた。

また、法案は国際法にのっとっており、「法的な位置づけについても、追って説明する」と話した。

法案の内容は以下の通り。

  • グレートブリテン島から北アイルランド運ばれる貨物について、国内向けで検査のみの「グリーン」と、EU向け検査の「レッド」の2つのレーンを用意する
  • イギリス国内のみを移動し、EUに出て行かない製品が「不要な官僚主義から解放」されるよう定める
  • イギリスの基準で製造され、北アイルランドで販売される製品について「規制障壁」を撤廃する
  • 新たな二重の規制体制を策定し、企業がイギリスとEUの基準、どちらかを選べるようにする
  • イギリス全土の増税・公的支出計画について、イギリス政府に決定権を与える。これは、北アイルランドでの付加価値税(VAT)の設定をめぐるもの
  • ガバナンスに関する問題を是正し、「北アイルランド議定書を国際慣習の枠内に収める」。特に、欧州司法裁判所(ECJ)の介入の排除を目指す

トラス氏は、イギリス政府はなおEUとの交渉による解決を希望していると述べた。

しかし解決しなかった場合には、議定書の中で機能している「条項を固める」一方、「機能していない要素を修正する」ための措置を取ることになると話した。

ボリス・ジョンソン首相も、EUとの交渉が決裂した場合には議定書に変更を加えるという政府計画の正当性を主張した。

ジョンソン氏は、「北アイルランドの政治状況の問題を解決する」ための「必要な」変更であると述べ、これが同時に「貿易に対する比較的小さな障壁を取り除く」ことにもなると話した。

一方、イギリスはEUと貿易戦争をする余裕があるのかという質問には、「そのようなことはあり得ないと思う」と答えた。

Prime Minister Boris Johnson during a Cabinet meeting at 10 Downing Street, London

画像提供, PA Media

貿易戦争への懸念

EUは、イギリスが北アイルランド議定書を独自に変更した場合、あらゆる手段を講じると警告。欧州委員会は、「国際協定に反する一方的な行動」には反対すると述べた。

EU側の交渉官を務めるマロス・セフコビッチ副委員長は、欧州委について、「議定書の枠組みの中で共同の解決策を見出すためにイギリス政府と協議を続ける用意がある」と強調した。

イギリスが今回の法案を可決した場合、EUとの貿易戦争の引き金になるとの懸念が出ている。製品の輸入に互いに関税などの障壁を設けることになるが、家計が圧迫されている今、消費者の負担が増すことになりかねない。

しかし、イギリスは先週、事態をさらに悪化させるとして、この計画を拒否した。

北アイルランドの状況、政権交代も影響

イギリスとEUはブレグジット(イギリスのEU離脱)協定の交渉の中で、北アイルランドとアイルランドの陸上国境に検問所を再現しないことを決定している。

これは、北アイルランドにおける数十年にわたる紛争に終止符を打った1998年のベルファスト合意(イギリスとアイルランドの和平合意)を踏襲するもの。北アイルランド議定書には、歴史的に敏感な問題であるアイルランドとの国境をめぐって問題を起こさず、自由貿易の継続を保証する側面もある。

しかしそれにより、北アイルランドと残りのイギリスの間に事実上の国境ができてしまった。そのため、ブレグジット決定時に北アイルランド議会の第1党だったユニオニスト(親英派)の民主統一党(DUP)は、イギリス政府と共に議定書の変更を模索していた。

northen ireland protocol

こうした中、北アイルランドでは5月初めの議会総選挙で、第1党がDUPからナショナリスト(親アイルランド派)のシン・フェイン党に変わった。また、シン・フェイン党を含め、北アイルランド議定書に賛成する多くの政党が議席を増やした。

北アイルランドでは、ユニオニスト政党とナショナリスト政党が権力を共有する形で自治政府を運営する。しかしDUPは、北アイルランド議定書をめぐる合意が形成されるまでは、新政権には参加しないとしている。

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