安倍元総理大臣が選挙演説中に銃撃された事件から7月8日で1年です。
事件をきっかけに要人警護の運用が抜本的に見直されましたが、岸田総理大臣が襲われた事件を受けて、警察庁は屋内の演説会場を優先してもらうなど、各政党に対し、安全対策を要請する働きかけを強めています。
去年7月に安倍元総理大臣が銃撃されて死亡した事件を受けて、警察庁は都道府県警察任せにしてきた要人警護の運用を抜本的に見直し、地元警察が作成する警護計画について、事前にすべての報告を受けることにしました。
ことし6月までの10か月でおよそ3100件の報告を受け、現場の危険度を分析したうえで警察官の配置を修正するなどの指示を出したということです。
体制は大幅に強化され、警視庁と大阪府警にしかなかった要人警護専門の部署が17の警察本部にも設置されたほか、地元警察と警察庁で詳細な情報を共有できるよう、撮影した会場の画像を3次元で再現できる装置をことし中に一部の警察に導入する予定だということです。
一方、ことし4月に選挙の応援に訪れた岸田総理大臣の近くに爆発物が投げ込まれる事件が起きたことを受けて、警察庁は、▼演説会場は手荷物検査を行いやすいよう屋内を優先することや、▼屋外の場合は聴衆との距離をとるといった安全対策を各政党に要請する働きかけを始めています。
さらに今後、▼サイバーパトロールにAI=人工知能を導入し、ネット上の銃や爆発物の製造に関する情報への対策を強化するほか、▼「ローン・オフェンダー」と呼ばれる一匹狼型の犯罪の防止に向け、情報収集体制の構築を急ぐなど、再発防止の取り組みを強化する方針です。
【専門家“想定と準備欠かせない”】
テロ対策に詳しい公共政策調査会の板橋功 研究センター長は「元総理大臣が銃撃されて亡くなるというセンセーショナルな事件で、警護の検証と見直しが迫られたが、1年で成果が出るほど簡単なものではない。警護にあたる警察官の能力を底上げするとともに、インターネットの情報をもとに銃や爆発物がつくられてしまう現状を踏まえた想定と準備が欠かせない」と述べました。
選挙の現場が相次いで狙われたことについては、「主催者となる政治の側がもっと問題意識を持ち、警察とも議論をしてガイドラインを作る必要がある」としたうえで「選挙の警護をはじめ、警察が過剰な警備を行うと、個人の自由を侵害する可能性もあるので『自由と安全のバランス』を保ちながら、どのように安全な環境をつくっていくか銃撃事件をきっかけに考えていくべきではないか」と話していました。
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