性的少数者(LGBTQ)の理解増進法案を巡り、自民党は超党派合意案をほごにする修正に踏み切ろうとしている。反発する野党の賛同が得られなくても、19日開幕の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)前に国会提出し、多様性の尊重に後ろ向きだという国際社会の懸念を
◆識者「背景にある価値観が問われている」
自民党は10日の党会合で、理解増進法案の議論を再開。出席者からは「しっかり成立させるべきだ」と早期の意見集約を促す声が上がる一方、「これでは不十分だ」とさらなる修正を求める意見もあった。
修正の柱は、超党派合意案の条文「差別は許されない」の変更。第1条の「目的」から削除し、同じ表現を盛り込んでいた第3条の「基本理念」では「不当な差別はあってはならない」に改めた。さらに、法案名や条文から「性自認」を削除し「性同一性」に置き換えた。
いずれも超党派議員連盟が法案をまとめた2年前、自民党内の保守派の反発を招き、国会提出見送りの要因になった部分だ。執行部側はこの日の了承を見送ったが、保守派は「大きな懸念事項は消えた」(西田昌司参院議員)と矛を収めつつあり、週内の意見集約も視野に入る。
党政調会幹部は修正の理由を公式に説明していないが「不当な」の追加はLGBTQへの異なる対応や取り扱いでも認められる場合があると明確化する狙いがあるとみられる。「許されない」という表現を避けたのは、事実上の禁止規定と解釈され、当事者が訴訟を乱発しかねないという意見を踏まえたためだ。保守派への配慮がにじみ、立憲民主党は「差別の意味を狭めるなら大きな問題だ」(岡田克也幹事長)と批判を強めている。
自民党の修正内容に関し、追手門学院大の三成美保教授(ジェンダー法)は「差別に正当も不当もなく『許されない』という文言のままでも訴訟の根拠にはなりにくい」と指摘。「単なる文言の問題ではなく、背景にある価値観が問われている」として、こう語った。
「LGBTQへの差別は許さないと前面に打ち出すことへの抑制が働いている。日本が目指すべき方向と比べると、かなり後退している印象だ」
◆<Q&A>「性自認」と「性同一性」違いは
LGBTQの理解増進法案で、超党派議員連盟が「性自認」とした言葉を「性同一性」にすべきだという意見が自民党内で出た。二つの表現はどう違うのか。(奥野斐)
Q 「性自認」を言い換える意図は。
A 自民党内で「自らの認識で性を決定できると解釈されれば、社会の混乱を招く懸念がある」という主張があるからだ。男性が「今日から女性になる」と言って女性用トイレに入るなど悪用の懸念がある、と例を挙げる人もいる。
Q 「性自認」はそういう意味ではないはず。
A 超党派議連会長の岩屋毅元防衛相(自民)は8日の党内の会合後、記者団に「性自認という言葉がちょっと曲解されている」と評していた。性自認は、その時だけの性別の自称ではなく、ある程度の一貫性や継続性のある、自分の性に対する認識のことという。
Q では「性同一性」との違いは。
A 実は「性自認」も「性同一性」も、英語の「Gender(ジェンダー) Identity(アイデンティティー)」の訳語だ。だからGID(性同一性障害)学会理事の
Q ならば、どちらを使っても良さそうだが。
A 元首相秘書官の差別発言について、岸田文雄首相は2月、「性的指向、性自認を理由とする不当な差別、偏見はあってはならない」と述べていた。一方、昨夏の参院選の自民の総合政策集では前年の衆院選時にあった「性自認」の文言が消えた。また、理解増進法案を議論した自民の委員会は昨年2月には「性的指向・性自認に関する特命委員会」から「性的マイノリティに関する特命委員会」に名称変更するなど、自民党内では「性自認」を避ける傾向があるようだ。
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