絶滅危惧種の2ストロークモデルの中でも、熱心なユーザーに支えられ続けているレーサーレプリカ。はじけるサウンドが個性的なチャンバーを愛用しているオーナーも少なくありませんが、転倒などで大きく潰れてガッカリ……ということもあります。汎用サイレンサーに交換する手もありますが、状態によってはかなり見栄え良く修正することも可能です。
破れて穴が明いていなければ鈑金修正の望みあり
表面が傷だらけというわけではないが、大きく凹みのある社外チャンバーのサイレンサー。ブラインドリベットをドリルで揉むと簡単にキャップ部分が外れて、グラスウール製の吸音材を引き抜くことができた。純正サイレンサーの場合、内側にパンチングメッシュのパイプが挿入されていることもあるが、この社外サイレンサーはシンプルなアルミの筒だった。それゆえ当て金を挿入するのも簡単。
ちょうど良い外径としてチョイスしたのが、工事現場の足場などで使用する単管だった。サイレンサーのサイズによっては点サビが発生して交換したインナーチューブでも良いだろう。いずれにしても、円筒形のサイレンサーを修正する際は当て金も円筒形の材料を用いることが重要。
マフラーやサイレンサーはハンドルやステップと並び、転倒で傷つきやすいパーツです。純正マフラーで転倒したのをきっかけに社外品に交換するライダーも少なくありませんが、社外マフラーの多くは素材の種類や厚みを調整することで純正品に比べて軽量化しているのが一般的で、それだけに転倒時のダメージも大きくなりがちです。
特にレーサーレプリカ時代の2ストモデルの社外チャンバーは軽量化のために膨張室、サイレンサーとも素材の肉厚を薄くしていることが多く、転倒時の衝撃で大きく凹むことも少なくありません。純正部品でもチャンバー形状にデザインされていますが、素材はスチール製で内部に仕切り板や吸音材が貼り付けてある機種もあり。社外チャンバーと重さを比較すればその差は歴然です。
ここで掲載しているサイレンサーも社外チャンバー用の部品で、転倒時に地面に擦りつけたような大きな傷はないものの後部が凹んでいます。充分な厚みを確保した純正サイレンサーに比べて素材自体が柔らかく、なおかつ板厚も薄く感じるため、加わった力はもしかしたら立ちゴケ程度だったかもしれません。しかしまさに当たり所が悪ければ、簡単に凹んでしまうことも現実問題としてあります。
純正マフラーとの圧倒的な重量差を考慮すれば、多少華奢でも文句はないととらえるか、立ちゴケ程度でベッコリ凹むのは納得できないと考えるかは人それぞれでしょうが、ダメージの種類によってはある程度のDIY修理が可能な場合もあります。
溶接機を自由に使える環境で手練れの鈑金職人のような腕があれば、相当劣悪な状態からでも復旧は可能かも知れません。自動車鈑金のプロフェショナルが公開しているYouTubeを見ると、どんな凹みや曲がりでもどうにかできることも分かります。
しかし、鈑金の心得がなければ何もできないということはありません。充実した道具や環境がなくても、アイデア次第で想像以上の成果を上げられることもあります。
プロの鈑金職人の手を借りるのではなく、あくまで身近にある道具や材料でできる限りの補修を行うとしたら、穴が明いたり破れたりしていないダメージ、シンプルな凹みであることが大前提となります。同様に、補修のために穴を開けたり切開しなくて済む凹みを見きわめることも重要です。
経験値ゼロにもかかわらず、いきなり美しい修正を夢想してハンマーを振り下ろしてもうまくいかないのは明らかです。都合良く初心者向けのダメージに遭遇できるとは限りませんが、ここではちょうど良い凹み具合のサイレンサーを題材に簡易的な鈑金補修の方法を紹介します。
POINT
- ポイント1・純正部品より軽量で材質も薄い社外マフラーやチャンバーが転倒などで凹んだ場合、ダメージの種類を見きわめて補修が可能か否かを判断する
サイレンサー内にガイド棒を挿入してハンマーで叩くのが基本
サイレンサー内側の出っ張り部分を当て金に押しつけ、表側の凹みの周囲をハンマーで叩きながら全体をならしていく。柔らかいアルミサイレンサーを鉄ハンマーで叩くと素材が伸びてしまうので、打撃力は弱めだが樹脂ハンマーでコツコツと修正する。
ハンマーで打つ位置は変えず、単管に沿ってサイレンサーを回転させながら広範囲をムラなく修正していくと歪みやヨレを少なくできる。
凹みのエッジ部分のシワは取りきれないものの、おおむね円筒形に仕上げることができた。鈑金未経験者であっても、適切な当て金を用意すればこの程度までは仕上げることができる。
そもそも立ちゴケで押された程度だったが、大きな凹みを戻しただけでグッと見栄えが良くなった。非分解タイプの純正部品だと補修も難しいが、分解可能な社外サイレンサーであればDIY鈑金で復活できる可能性はある。
ハンマーが入らないような細いサイレンサーの凹みを修正する際は、内部に棒やパイプを挿入して外側からハンマーで叩きます。ハンマーで叩く部品の裏側に当て金を置くのは、パイプだけでなくパネルの鈑金を行う際も同様です。
ドーリーとも呼ばれる当て金とハンマーの間に修正する部品を挟んで、ピンポイントでプレス作業を繰り返すことで曲がった金属を徐々に延ばしていくのが鈑金作業の基本で、対象物が筒状のサイレンサーの場合は棒やパイプを当て金として利用するわけです。
ここでは足場用の単管パイプを当て金として、ベンチバイスに固定した単管に凹み部分を押しつけて、鋭く折れ曲がった部分に亀裂が入らないようにハンマーで叩いていきます。当たり所が良かったおかげで凹みは簡単に直り、大きなシワや亀裂が入ることなく修正ができたのは幸いでした。
サイレンサーの表側からハンマーで叩くというより、内側に出っ張った凸部分を単管で押し戻すようなイメージで作業を行いますが、これはガソリンタンクや自動車のドアパネルやフェンダーの凹みを裏側から押し出すデントリペアと同じです。デントリペアは塗装面に傷を付けないため、裏から押すだけで表面をハンマーで叩かず補修することを大きな特徴としています。
これに対して画像のように大きく凹んだサイレンサーを裏から押し出すだけで修復するのは、鈑金補修経験の少ない素人にとって簡単ではありません。そのため単管を当て金代わりに表面をハンマーで叩いていますが、サイレンサーも単管も円筒形のため想像以上にうまく修理ができました。もし都合良く単管がなく角パイプなどを当て金に使ったら、ハンマーと当たった部分にエッジができてしまい、かえって丸く仕上がらなくなる恐れがあります。もちろん、当て金なしで円筒形を修正するのも不可能でしょう。
自動車鈑金用の当て金も表面の形状は一種類だけではなく、さまざまなアイテムが用意されていることを見ても、修正したい形状に応じた当て金を用意するのが鈑金補修成功への近道と言えるでしょう。
POINT
- ポイント1・円筒形のサイレンサーの凹みを補修する際は、形状に適した当て金を使用することが補修の善し悪しを決める重要なポイントになる
からの記事と詳細 ( 年代モノの社外チャンバーのサイレンサーがベッコリ!!完全修復は難しくても足場管と樹脂ハンマーで修正してみよう - Webikeニュース )
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