米調査会社のGartner(ガートナー)は2020年の世界半導体市場の売上高を4599億米ドル(前年比9.9%増)と予測し、2019年12月の前回予測4707億米ドル(同12.5%増)から108億米ドル下方修正したことを明らかにした。
新型コロナウイルスの影響を加味した形だが、この予測は2020年2月にAppleが収益予測の下方修正を発表する前の時点のもので、中国湖北省での新型コロナウイルス感染拡大の封じ込めが2020年3月末までに終わるというベストケースでの想定だった。Gartnerのシニアプリンシパルアナリスト、山地正恒氏は、新型コロナウイルスがいつ終息するか分からないため予測は困難としつつも、「その後の状況を加味すれば、より大きく下方修正することになるだろう」としている。
生産できても、オーダーが止まる状況
山地氏は、新型コロナウイルスは現在のところ半導体メーカーの生産体制に直接的な影響を及ぼしてはおらず、「オーダーさえあれば生産は可能な状況だ」と説明。今回の予測は中国内にある電子機器メーカーの工場の稼働停止や生産能力低下に伴って、半導体メーカーの受注が減少、在庫積み増しが続く、という状況を想定している。山地氏は「工場が止まれば半導体メーカーへのオーダーが止まる。2020年第1四半期は相当な影響を受けると考えられる」と述べた。
また、Samsung ElectronicsとSK hynixという大手メモリメーカー2社を有する韓国において感染者が急増しているが、山地氏は、仮に韓国内の工場が稼働停止となった場合も「依然として在庫があるので、すぐに足りなくなるということにはならないだろう」と説明。そのうえで、「もともと2020年中に需給バランスが戻ることで価格が上昇に転じ、市場も大きく伸びると予測をしているが、その価格上昇が大きく加速する可能性はある」としている。
自動車メーカーの工場停止に関する影響に関しては、「現在のところ、特に影響は聞いていない」という。また、車載市場において日系半導体メーカーの中国、韓国依存度は低いため、「影響が大きくなると懸念されるのは欧州系の半導体メーカーだろう」とも説明していた。
売り上げ増見込みの5割が車載、産業機器市場
ただ、中長期的には世界半導体市場が成長へ向かうという予測は変わらない。山地氏は、「工場の稼働が再開すれば、需要に応えるため当初の予定よりも生産を拡大してリカバーする流れになるだろう」と見通しを述べる。
今後の成長について市場別で見ると、特に車載、産業機器市場はそれぞれ半導体市場全体の1割前後という比較的小規模な市場ながら、向こう5年間で見込まれる売り上げ増の約5割を占めているという。山地氏は、「ストレージ市場も大きく伸びが期待されるが、その恩恵が得られるのはごく限られたメーカーだけだろう。一方で車載、産業市場は、非常に幅広い半導体メーカーに恩恵がもたらされる」と、その可能性に言及している。
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