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Tuesday, March 1, 2022

パンデミックから2年:私たちの取り組み - Natureasia.com

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​信頼性のある最新の知見を迅速に伝え、パンデミックに対する人々の理解をサポートすること。ネイチャー・ポートフォリオはその責務を果たすために、この2年間、SARS-CoV2およびCOVID-19関連の研究論文の出版に総力を挙げて取り組んでまいりました。しかしこれは、査読者の方々のご協力なしには実現し得ないことでした。

Magdalena Skipper

Magdalena Skipper(マグダレーナ・スキッパー)
Nature 編集長

新型コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2;SARS-CoV-2)に関する論文がNature に初めて掲載されたのは、2020年2月3日のことでした。この論文は、ある患者から分離されたウイルスのゲノム配列が、中国における呼吸器疾患のアウトブレイク(集団発生)に関連していることを示した、極めて重要なものでした。さらに、この極めて重要な成果を同誌に投稿した著者らは、基礎的なデータを研究コミュニティーに公開して共有しました。それがきっかけとなり、世界保健機関(WHO)は路線を変更し、論文出版からわずか1ヵ月後にパンデミック(世界的大流行)を宣言しました。このゲノム配列は、この新たなウイルスの生態の解明に至る道程の第一歩であり、ウイルス粒子の構造の解明に不可欠な要素となりました。ウイルス粒子の構造は、ワクチンや治療法の開発のカギとなる情報です。

それから2年が経ちました。私たちがこの間に出版した論文は、SARS-CoV-2の構造の解明をはじめ、モノクローナル抗体治療(SARS-CoV-2の特定部位に結合する1種類の中和抗体を投与する治療)のための候補抗体の特定や、ワクチン開発のための前臨床研究や臨床研究、ロックダウン政策の違いが人間行動やウイルス伝播にどのような影響を与えたかなど、多岐にわたります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに関連するこれらの最先端の研究を出版するに当たり、全世界の何千人もの研究者が私たちに信頼を寄せてくださり、評価や査読を行い、修正の指針を示してくださったことに感謝申し上げます。これらの論文の出版は、査読者のお力添えなしには実現できませんでした。査読にご協力くださった研究者の皆さまが時間と専門知識を提供くださったことに深謝申し上げます。

Nature およびNature 関連誌のチームでは、今日までにSARS-CoV2、COVID-19および関連する問題に関する研究論文を4000件近く出版してきました。しかし、私たちが出版してきた論文は、このテーマに関して投稿いただいた何万件もの論文の一部に過ぎません。COVID-19がもたらした世界的な緊急事態に対処するため、全世界のさまざまな研究コミュニティーがこの感染症に重点を置いた研究を行ってきたからです。私たちが投稿論文の全てを評価するに当たり、社内編集者には献身的な取り組みと、彼らの研究領域に関する専門知識、そしてプロとしての覚悟が求められました。

編集の初期段階では、編集者が投稿論文を全て熟読し、報告されている知見を評価し、その信頼性を確認する必要があります。この段階を通過した論文は、査読者による評価が行われます。査読者は、編集者が自身の関連研究コミュニティーに関する深い知識を活用して慎重に選び出した、その分野の専門家です。また編集者は、論文著者と緊密に協力し、論文原稿を修正する上での指針を提供します。そして、パンデミック時にはデータを迅速に共有することが重要ですから、論文著者に研究データに関するサポートを提供し、著者が各自のデータを効率的に管理するための支援も行ってきました。

多くの研究者が、その活動の中心をCOVID-19の研究に向けました。それと同じように、通常であればこの種の論文の評価には関わっていなかったであろう社内編集者の多くも、COVID-19に関連する投稿論文の支援に回り、他分野にも応用可能なモデリングやビッグデータ分析、トランスレーショナルメディシン、社会科学などの専門知識を活かして、COVID-19関連論文の編集作業を行いました。

パンデミックの最中では、知識を迅速に共有する必要があります。私たちは論文著者に対し、各自の研究成果をプレプリントサーバーに預託することを積極的に勧めてきました。これは私たちが数十年にわたりサポートしてきた取り組みでもあります。COVID-19関連の研究論文は、私たちの学術誌に投稿された時点でプレプリントサーバー上で公開・共有され、新たな知見が直ちにオープンになり、多くの人々の手で精査されるようにすることが特に重要であると、私たちは考えています。また、私たちが受け付けた全ての投稿論文をWHOと共有し、WHOによる新たな研究の追跡を支援することについてもWHOと合意しています。

当社では、研究が投稿されてから、査読された研究が全ての人に公開されるまでの時間をできるだけ短縮するべく、全力で取り組んでまいりました。学術出版界には、論文を可能な限り幅広い読者層に届け、研究者が利用している数多くのプラットフォームやサービスからの検索を可能にすることに取り組んでいる仲間たちがおり、彼らもそのアクセルを踏み込んできました。そして私たちは、2021年12月にある決断をしました。懸念されている最新の変異株であるオミクロン株に関する研究論文が投稿され始めた時期であり、それに対応するためでした。多くの人々が冬季休暇に入ろうとしている2021年12月23日、新たなSARS-CoV-2変異株に関する5件の研究論文をNature が受理(アクセプト)し、その日のうちにオンラインで公開しました。

私たちは、当初より全てのCOVID-19関連の研究論文を無料でオンライン公開してきました。また、150件を超える論文のプレスリリースも発表してまいりました。これらの論文は、注目度の高いメディアに取り上げられ、数万件ものニュース記事となったことで、全世界の読者に届けられました。また、本稿で述べたように、当社では特にオミクロン株関連研究を引き続き重視しており、受理からわずか24~48時間以内にプレスリリースを発表し、論文を掲載しています。

もちろん、ジャーナリズムに携わる者として、パンデミックに関する報道を届けることもおろそかにはしません。科学に対する公衆の理解を後押しすることは、Nature を創刊した際の柱の1つであり、当社にはその責任があると理解しています。NatureNature Medicine などのネイチャー・ポートフォリオの学術誌におけるジャーナリズムは、私たちがパンデミックに対応し、SARS-CoV-2とパンデミックに対する科学者、政府、および公衆の理解を助ける上で重要な役割を果たしてきました。Nature はパンデミックに関して、700件以上のニュース記事と専門家による解説記事を掲載してきました。その読者は数百万人に及んでおり、ソーシャルメディア上で活発な議論が続いています。

当社には、パンデミックに対する人々の理解を助ける責務があります。そのため、当社のアート編集者や、データ駆動型報道に取り組むジャーナリストたちのスキルも活用し、グラフィックを利用した最新情報を提供しています。そうした取り組みにより、当社はインフォグラッフィックによるワクチン設計の説明に対する賞と、パンデミック後の科学に関するシリーズに対するエディトリアルイラストレーション賞という、権威ある2件の賞を受賞しました。また、Nature のポッドキャストチームは最新の知見を幅広い聴取者に届けるCOVID-19専用のポッドキャスト「Coronapod」を開始し、Publisher Podcast Awardsより賞を贈られました。私たちは、詳細で質の高いジャーナリズムが重要であることを常に理解し、その実現に取り組んでまいりました。パンデミックを通じ、当社の報道記事を求める声の高まりを目にしたことは、私たちにとって励みとなっています。

私たちは皆、異例の2年間を過ごしてきました。研究者、査読者、編集者、そしてもちろん医療従事者、介護従事者を含む全ての人々が緊張の中で働き、暮らしてきました。私たちは、今後も引き続き研究者を支援し、その最も重要な研究を、学術出版や報道記事を通じて可能な限りの幅広い人々に伝えてまいります。また、引き続き政府や政策立案者に対し、今回のパンデミックのような世界規模の危機を脱する方法は1つしかないこと、すなわち、科学に基づいて意志決定を行う以外に方法はないということを、繰り返し伝えてまいります。

原文:2022-02-03 | Two Years In


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