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Sunday, January 30, 2022

社説(1/31):衆院定数「10増10減」/数合わせでは解決できない - 河北新報オンライン

 投票価値の平等は憲法が求める大原則だが、人口の増減に基づく衆院議席の再配分を何度も重ねた結果、定数減となった東北などでは、広大で生活圏と懸け離れた継ぎはぎの選挙区が数多く生まれた。一方、東京都など首都圏は定数増のたびにエリアが地方議員並みに細分化されている。

 問題の本質は、過疎化が進む地方と人口集中が加速する都市部の対立ではない。1票によって選ばれる地域代表の土台や、選挙制度そのもののゆがみを修正することが今こそ、各政党と各国会議員に求められているのではないか。

 衆院小選挙区の定数は、2020年国勢調査を基に「10増10減」の方針が示された。16年の公選法改正で導入された都道府県ごとの定数を人口に応じて増減させる「アダムズ方式」が初めて適用され、衆院選挙区画定審議会(区割り審)が6月までに新たな区割り案を首相に勧告する。

 宮城、福島のほか、新潟、滋賀、和歌山、岡山、広島、山口、愛媛、長崎の10県を各1減らし、東京5増、神奈川県2増、埼玉、千葉、愛知各県で1増となる。10増10減案で削減の影響を受ける県のほか、多くの現職を抱え、難しい調整を迫られる自民党内からも異論が出ている。

 細田博之衆院議長は東京3増、新潟、愛媛、長崎を各1減とする「3増3減」案を独自に提唱し、「地方を減らして都会を増やすだけが能じゃない」と発言。二階俊博元幹事長は「腹立たしい。地方にとっては迷惑な話だ」と批判し、世耕弘成参院幹事長は、衆院の定数増を選択肢にすべきだとの考えを表明した。

 アダムズ方式は当時の衆院議長の諮問機関の答申を受け、自民、公明両党が関連法を提出し、導入に至った経過がある。自分たちで決めたルールをその場しのぎでひっくり返すような動きは理屈が通らず、他党から「党利党略」「私利私欲」と指摘されても仕方がない状況とも言える。

 ただ、異論の背景にある区割り見直しが限界に達している現実は直視しなければならない。単なる議席配分の調整は数合わせの弥縫(びほう)策にすぎず、人材の流出によって疲弊した地方と、受け皿として膨張する都市部のアンバランスな関係を事実上、是認するシステムになっている。

 導入から25年が経過した衆院の小選挙区比例代表並立制だけでなく、衆参の役割分担を視野に入れた二院制の根本的な改革などが求められる。「ふるさと納税」を例に考えれば、住所地のみに基づく選挙権の付与を見直す余地がないかどうか、新たな議論があってもいいだろう。

 参院では16年に「鳥取・島根」「徳島・高知」を一つにした合区が初めて導入され、格差是正と引き換えに県単位の選挙区が消滅している。今夏に控える参院選では、衆院も含めた地域代表の在り方を再考する機会にしたい。

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