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Friday, October 1, 2021

アフガン撤退の混乱が東アジアにどう影響するか | | 渡部恒雄 - 毎日新聞

同盟国の不安と懸念

 バイデン政権のアフガニスタンからの拙速な撤退とその混乱は、世界に大いなる不安を与えている。少なくとも、アフタニスタンでの戦闘に軍を派遣し、これまでのアフガン復興に米国とともに血を流し汗をかいてきた欧州とカナダの北大西洋条約機構(NATO)の同盟国は、今回のバイデン政権の撤退に失望し、今後の米国の同盟国への関与に不安を抱いている。

 今回、バイデン大統領はアフガンからの撤退の理由を、中国という地政学上のライバルに備えるためとしてはいるが、アジアの同盟国や準同盟的な存在の台湾には、バイデン版「アメリカ・ファースト」政策ともいうべき姿勢に懸念が生じている。

中国は台湾への介入をけん制

 中国政府は、アフガンからの撤退を、米国が大国に介入してもうまくいかない例だとして、台湾への介入をけん制し、中国の環球時報は、台湾の最良の選択肢は、米国に頼って中国大陸に対抗する路線を大幅に軌道修正することという論説を掲載した。

 台湾では最大野党の国民党が中国寄りだ。中国との統一を主張する国民党の次期総統候補の一人は、フェイスブックに「台湾はアフガンを教訓にすべきだ。米国に頼れば何も起きないという考えを捨てなければならない」と投稿し、国民党に近い新聞は「バイデン米大統領は軽々と盟友を見捨てる」とする社説を掲載した。

 このような中国のメッセージは「心理戦」の一環でもあり、額面通りに受け取れば相手の術中にはまるため、差し引いて考えるべきだ。ただし、その論理自体はあながち的外れともいいきれない。

米国が抱える「内向き」と「二極化」

 実際、英エコノミスト誌の「米国のパワーの未来」特集に寄稿した英国出身の歴史家、ニーアル・ファーガソンは、アメリカ帝国の衰退を大英帝国の衰退に重ね合わせて考え、米国の内向き姿勢を懸念している。

 かつてのナチスドイツの台頭に対して、衰退期の英国のチェンバレン首相が融和政策をとったように、もし中国が台湾に侵攻した場合、アメリカ帝国の衰退下にある内向き志向の米国人は「遠くの国の我々の知らない人々の争い」と見なすのではないかと考え、今の中国は米国をそのように見ているだろうとも指摘している。

 一方で、同じエコノミスト誌の特集に寄稿した米国人の戦略家、ロバート・カプランは、アフガンからの撤退の混乱の姿はあくまでもイメージであり、パワーの実質の衰退とは異なると指摘する。彼が重視するのは地政学的要因であり、アフガンから撤退した後も、米国の海軍力と空軍力は世界に展開しており、太平洋と大西洋に隔てられて近隣諸国に脅威のない米国は、いまだに中国やロシアと比べて地理的に有利なポジションにあると見る。

 むしろカプランは、米国の力を脅かすものは、二極分化した国内政治だと考えている。…

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