不動産の所有者であれば固定資産税を毎年納めていますが、その固定資産税の評価額からおおよその売却相場を知ることが可能です。
土地については、固定資産税評価額から簡易的に売却相場を推計することが可能です。ただし、建物については築年数や構造などから別途推計する方法があるため、他の評価方法も組み合わせて相場価格を修正することになります。
この記事では、不動産の売却相場を固定資産税評価額から知る手順・方法について解説していきます。
目次
- 固定資産税評価額の決まり方
- 固定資産税評価額から売却相場を知る手順と方法
2-1.固定資産税評価額を調べる
2-2.固定資産税評価額から土地の売却相場を推計する
2-3.建物の売却相場を別途推計する
2-4.土地・建物の推計価格を取引事例情報から検証・修正する
2-5.収益不動産の場合、収益価格も参考にする - まとめ
1.固定資産税評価額の決まり方
固定資産税評価額は、税額を算定する前に3年ごと、あるいは新築建物については適宜、国が定めた固定資産評価基準に基づいて市区町村や都が評価をおこない決定されます。
土地の評価は、市街地宅地であれば、路線価を基礎として土地の形状に応じた補正をおこなって評価額を求めていきます。
路線価を決定する際は、標準宅地の適正な時価と比較して補正しますが、標準宅地の価額は、地価公示価格、都道府県地価調査価格、不動産鑑定士等による鑑定評価価格等を活用して、その7割を目安に評定します。
建物の評価は、同様の建物を新築した場合の建築費を評点化し、その合計数に評点一点当たりの価格を乗じる方法によって求めます。再評価の際は、築年数に応じた減価率を乗じて算出されます。
2.固定資産税評価額から売却相場を知る手順と方法
固定資産税評価額から売却相場を知るには、以下のような手順と方法で進めてみましょう。
- 固定資産税評価額を調べる
- 固定資産税評価額から土地の売却相場を推計する
- 建物の売却相場を別途推計する
- 土地・建物の推計価額を取引事例情報から検証・修正する
- 収益不動産の場合、収益価格も参考にする
2-1.固定資産税評価額を調べる
固定資産税評価額を調べるには、主に、固定資産税課税明細書の確認、固定資産税評価証明書の取得、固定資産課税台帳の縦覧・閲覧、の3つの方法があります。
固定資産税の課税明細書を確認する
固定資産税課税の明細書を確認することで、固定資産税評価額を調べることができます。
市区町村や都は、毎年4月以降、評定した固定資産税評価額を下に固定資産税額を決定し、納税者に通知します。その固定資産税納税通知書とともに、固定資産税課税明細書が送付され、そこに、土地・家屋の所在、地番別に、課税評価額が記載されています。
固定資産税評価証明書を取得する
固定資産の所有者またはその代理人であれば、固定資産の所在する市区町村や都に申請することで、固定資産課税台帳に登録されている固定資産の評価証明書を取得することができます。固定資産税評価証明書には、固定資産の所在、評価額などが記載されています。
固定資産課税台帳を縦覧・閲覧する
市区町村や都は、毎年4月1日から4月20日またはその年度の最初の納期限の日まで、固定資産課税台帳を公開します。固定資産の所有者またはその代理人は、自己の資産の評価額が適正かどうかを他の資産の価格等と比較して縦覧することができます。
なお、自己の資産の評価額のみを閲覧する場合であれば年間を通じて可能です。
2-2.固定資産税評価額から土地の売却相場を推計する
土地の固定資産税評価額は、時価の約7割を目安に評定されています。したがって、土地の売却相場を固定資産税評価額から推計するのであれば、下記算式のように、土地の固定資産税評価額を0.7で割り戻すことによって、おおよその相場価格の算出が可能になります。
土地の売却相場価格=土地の固定資産税評価額÷0.7
2-3.建物の売却相場を別途推計する
建物の固定資産税評価額は建築費を評点化し、評点単価を乗じて求めます。独特の算定方法であり、必ずしも建物の市場価格を反映するものとはいえません。
そこで、建物売却相場を推計する際は、固定資産税評価額によらず、国税庁の「建物の標準的な建築価額」を下に、再調達原価を求めてみましょう。その再調達原価を下に、以下の算式のように残存耐用年数分の割合を乗じて、建物の残存価額を推計します。
建物価額=再調達原価×(耐用年数―経過年数)÷耐用年数
2-4.土地・建物の推計価格を取引事例情報から検証・修正する
土地と建物の相場価格を推計したら、不動産売出情報のポータルサイトから売却不動産と似たような条件の売出事例を収集し、その推計価格を検証していきます。
不動産情報ポータルサイトの売出情報の価格は、成約価格よりも高めの価格となっているため、国土交通省の「土地総合情報システム」による成約事例情報などと併せて検証していきましょう。
また、他の取引事例と比較する場合は、地域要因や個別的要因による補正を考慮してみましょう。近隣のエリアであっても、地域によっては、治安や嫌悪施設があるなどの問題がある可能性もあります。
その他、リフォームの有無や、日照・眺望の違い、敷地の形状の違いなどの個別的要因にも価額は影響を受けるといえます。成約事例の価格と比較する場合は、取引時との時点要因も考慮するようにしましょう。
このようにして推測された取引事例との比較・補正から価格と、これまでの推計によって算出した価格とを比較して売却相場価格を修正していきます。
特に、マンション1室の売却相場価格は、全体の価格のうちに占める建物価格の割合が高く、再調達原価を下に推計する方法では、相場価格をつかみにくいことがあります。類似の取引事例との比較による価格を重視して修正するようにしましょう。
2-5.収益不動産の場合、収益価格も参考にする
売却不動産が収益不動産である場合、その不動産が将来生み出す収益予測から、不動産の収益価格を推計し、参考にしてみましょう。この収益不動産の査定方法を、「収益還元法」と言います。
収益価格は、その不動産から得られる一年間の純収益を還元利回りで割り戻すことによって求めます。純収益は、家賃などの収入から維持管理費などの費用を控除して算出します。
還元利回りは、その不動産と類似の収益不動産の取引事例や不動産情報ポータルサイトの売出物件と比較して求めてみましょう。
収益価格=一年間の純収益÷還元利回り
まとめ
固定資産税評価額から不動産の売却相場を把握する際は、土地については固定資産税評価額を0.7で割り戻すことによって、大まかな価格を推計することができます。
建物については、固定資産税評価額ではなく、国税庁の公表する再調達原価を下に推計するとよいでしょう。マンションの場合は、取引事例比較法を重視して売却相場を把握してみましょう。
なお、収益不動産の場合は、収益還元法による収益価格も参考すると、より相場に沿った価格を算出することが可能です。それぞれの方法で価格を調べて比較し、おおよその売却相場を算出してみましょう。
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佐藤 永一郎
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