ありきたりの表現を使うなら、ほろ苦いメジャーの実戦デビューだったかもしれない。今季からレンジャーズに移籍した有原航平投手は2日(日本時間3日)、アリゾナ州グレンデールで行われたホワイトソックスとのオープン戦に先発。3ランを浴びるなどし、特別ルールで2回ともイニング途中で打ち切られた。降板時にはブーイングの洗礼も浴びた。
アリゾナには、私もレンジャーズ時代に苦い思い出がある。空気が乾燥していて、ボールは滑って握りにくい上に、打球はよく飛ぶ。打たれた記憶しかない。有原投手を励ます意味だろう。当時、レンジャーズでチームメートでもあった野球日本代表「侍ジャパン」の建山義紀投手コーチがツイッターに「全く問題無いでしょう。・・・歴代日本人投手も初年度は皆苦しんできました。上原浩治に至ってはアリゾナでの防御率が8~9点台だったと記憶があります」などと投稿していたが、正確には私の防御率10点を超えていた(笑)。
何とか修正しようと、自分なりに考えたが、何をやってもうまくいかなかった。このまま開幕すれば、中継ぎの中でも敗戦処理に回るかもしれないし、最悪のケースとして戦力外になるかもしれない相当な危機感があった。
チームメイトからは「ここはアリゾナだから気にするな」と励ましてもらったが、「そういうものなのか」と思ってマウンドに上がったら、またホームランを献上(泣)。だけど、シーズンを迎えると、途中でけがによる離脱があったものの、37試合で防御率1・75。今になって振り返れば、「アリゾナの気候が合わなかった」ということで片づけることができる。
「ここはアリゾナ・・・」。同じ言葉を有原投手にも送りたい。もちろん、抑えるにこしたことはないが、メジャー1年目のこの時期は自分でマウンドで何かを感じて、何かをつかみ、修正するためにどうすべきかを考える時間でもある。メジャーのストライクゾーン、マウンド、同じリーグで対戦する打者の癖。何もわからないのが当たり前なのだから、試行錯誤を繰り返して開幕へ準備を進めればいいと思う。
どうすれば、ボールは滑らないのか。一つ一つが同じようで同じではないメジャーのボールをどうやってコントロールできるのか。考えることはたくさんあると思うけど、考えることはとても大事。この習慣は引退してからも大事になる。考えて、悩んで、学んで、メジャーにアジャストしていってほしい。「アリゾナの気候が合わなかっただけ」。こう言って、笑える日が来ると信じて。
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