――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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中国が名の知れた国内ハイテク大手を新たに締め付ける動きに出たことは、業界他社にとっても危険な規制強化の前兆かもしれない。
中国人民銀行(中央銀行)は27日、電子商取引大手アリババグループ傘下の金融会社アント・グループについて複数の規制違反を公に批判し、オンライン融資など急成長事業の問題を修正するよう同社に強く求めた。中国で支配的な2つのデジタル決済システムのうち1つを有するアントは、規制逃れへの関与や規制順守の軽視に加え、消費者の権利を損ねたとして非難された。中国の市場規制当局は24日、アリババに対する反トラスト法(独占禁止法)調査に着手したと発表していた。アリババはアントの3分の1を保有する。
合計340億ドル(約3兆5300億円)規模の新規株式公開(IPO)を通じた香港と上海への重複上場計画を規制当局が先月中止に追い込んで以降、アントの前途には暗雲が垂れ込めていた。同社は、オンライン融資など利益率が高く急成長中の事業の一部を縮小しなければならない公算が大きい。これまで、大したリスクを負うことなくこうした融資のオンラインプラットフォームとして機能していた。こうしたアセットライト(資産の軽量化)モデルによって、IPOが頓挫するまで企業価値は3000億ドル超と評価されていたが、それも規制当局の神経を逆なでする要因となった可能性が高い。アントはこの先、自己資本を積み増し、銀行のように規制されなければならないかもしれない。
アリババの共同創業者である富豪の馬雲(ジャック・マー)氏が築き上げたビジネス帝国に対する中国政府の「ワンツーパンチ」は、馬氏の政治的な命運の暗転を明らかに反映している。だがそれは同時に、ハイテク他社を巡る規制環境の変化も暗示しているかもしれない。規制当局が強調した問題の多くは周知の事実だった。一例として、アリババの競合企業は以前から、自社プラットフォームのみで販売するよう小売業者に強いるアリババの慣行について苦情を申し立てていた。中国政府はこれまで大して具体的な措置を講じてこなかったが、先月になってデジタルプラットフォームの独占的慣行を取り締まる規制案を発表した。
中国のハイテク大手がこれほど大きくなったのは、成長の足かせとなる政府規制が比較的少なかったことも一因だ。規制強化によって中国政府が明確な境界線とルールを描くのであれば、公平な競争環境の創出が促され、それは朗報となり得る。だが、市場の失敗に関するものではなく政治的な理由で一段と恣意(しい)的な規制措置が増えるのであれば、中国ハイテク大手とその投資家にとって、それは悪夢となりかねない。
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