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Monday, September 28, 2020

どちらがAI切り抜きか分かる?ボタン一発!Photoshopの“AI範囲指定”を体験したか!? - デジカメ Watch

面倒な“切り抜き”をAIが代行してくれる時代がやってきた

冒頭の画像は、中央の写真から人物を切り抜いて左右に配置したもの。ただし、片方はプロカメラマンがパスを使って手作業で行ったもの(5分の作業時間制限をかけさせていただいた)、もう片方はPhotoshopのAIが作業したものだ。どちらがAIによるものか、すぐに判別できるだろうか?

答え合わせの前に、少しお付き合いいただきたい。フォトレタッチソフトを使って行なう写真加工作業において、多くの方が負担に感じているものの1つに「範囲指定」が挙げられる。写真の中の一部分を指定して(あるいは指定範囲以外の領域に)、なんらかの加工を行なえるようにする機能だ。人物だけを指定して明るさや色を整えたり、切り抜いてほかの素材と組み合わせたりするときには欠かせないものだが、昔から手間がかかる作業の代表格でもある。たとえば、被写体が人物の場合、髪の毛や衣服のひだなどを含む複雑な輪郭線からなるため、正確に指定しようとするとかなりの時間と集中力が必要になるのである。

最近、この範囲指定を、先にふれたAI(Artificial Intelligence:人工知能)が自動処理してくれるようになった。フォトレタッチソフトの定番「Adobe Photoshop」の最新版(v 21.2.3)には「被写体を選択」という機能が用意されており、AIの力を活用して写真に写っている人や動物などの被写体を自動で認識し、その被写体を自動的に範囲指定してくれる。従来そうした被写体の指定は(ソフトによるアシスト機能はあるものの)ユーザーが手作業で行なう必要があったため、時間がかかる上に慣れが必要だったのだが、ごく短時間で誰にでもできるようになった。

気になるのは、その精度だろう。「AIがどんな範囲指定をしてくれるのか?」と思うはず。そこで冒頭の問題の答え合わせといこう。カメラマンによる手作業が左側、PhotoshopによるAI処理が右側となる。

答えがすぐに分かった方も、最後まで分からなかった方もいると思う。しかし、いずれにしても、この精度の範囲指定がボタン一発、しかもわずか数秒でできてしまうと聞けば、大きなメリットを感じるのではないだろうか。

下のスクリーンショットを見ていただきたい。人物が範囲指定されているのだが、この範囲指定がボタン一発のAI機能で実現したものである。ユーザーによる事前のおおまかな指示(人の回りを丸く囲むなど)すらも必要ない。それでいて範囲指定の精度もなかなかなもので、求められる作業の内容によってはそのまま使えてしまうレベル。これがAIによる範囲指定の実力だ。

ポートレイトに対して、最新版PhotoshopのAIを活用した機能「被写体を選択」を使ってみたところ、“何も指示していないにも関わらず”人物が範囲指定された。輪郭をおおむね正確に指定できているところにも注目

ちなみに、この機能の実現にはCPUメーカーのIntelが貢献しており、同社のCoreプロセッサーを搭載したPCを利用することにより、AIで実現される機能をより効率よく、高性能で利用することが可能になっている。

この企画では、PhotoshopとPhotoshop ElementsにおけるAI機能について、プロカメラマンの体験記を交えつつ解説してゆく。

日々賢くなるAIエンジンが、すでにPCやスマホのソフトに実装されている

さて、AIと聞くと、自ら考えて動くロボットだったり、悪役コンピュータだったりと、SF的なイメージを持たれている方も多いかもしれない。しかし、ここ近年IT業界が実現を目指しているAIは、特定の作業で人間に寄り添って、人間がめんどうだと思うことを助けしてくれる、専業の便利屋さんのようなものだ。

フォトグラファーには定番のAdobe PhotoshopもそうしたAIの恩恵を受けているソフトウェアの1つ。Adobeは自社のソフトウェアにAIを実装することに熱心で、Photoshopを含むクリエイティブツール群のCreative Cloud向けに「Adobe Sensei」というブランドでAI機能を多数搭載している。

最初に注目したいのは、Photoshop(v 21.0以降)に用意されている「被写体を選択」という新機能。冒頭で切り抜きに使用しているのもこれだ。この機能は、従来、人物を切り抜く際などに行なう“領域を指定する”作業の自動化を実現してくれる。従来、人物を切り抜くときは、投げなわツールなどを利用してフリーハンドで被写体を指定する必要があった。液晶タブレットや、2-in-1タイプのPCのようにペンが使えるデバイスがあればいくぶん容易に指定できるが、地味に時間がかかる作業で、プロ、アマ問わず「めんどうだな」と感じている方が多いのではないだろうか。

ところが「被写体を選択」は、すべてを自動で行なってくれる。ユーザーが“写真の中のどこを切り抜きたいのか”を自動で判別して、切り抜く領域を精細に指定してくれる。髪の毛のようなこれまで指定するのに時間がかかったところも、かなり正確に判別してくれる。

この機能を実現するために、AdobeはPhotoshopのAIエンジンに、プロが行なった被写体を切り抜く作業のデータを学習させている。いってみればプロの「フォトショ職人」がどの被写体を、どうやって切り抜いたのかというデータから学習して、その「フォトショ職人」が持っているノウハウをあなたのPC上で使ってくれる、ということだ。

また、Photoshopのライト版として販売されているPhotoshop Elementsには「写真を自動的にカラー化」、「自動的に肌をなめらかに」という機能が用意されている。前者はモノクロの写真に色彩を持たせる機能で、AIが自動で写真を判別して色を付ける。後者はスマートホンなどでおなじみの肌をなめらかにするエフェクトで、そばかすやしみといった気になる部分をAIが自動で修正してくれる。いずれもプロのノウハウを、AIを経由して提供する仕組と言える。

AdobeはPhotoshopやPremiereを含む自社製品へのAI機能の実装に積極的だ。世界最大級の電子機器の見本市CESの記者会見の場でも、AI関連事業で協力関係にあるIntelとともに自社のAI機能Adobe Senseiをアピールした

若林直樹カメラマンも驚いたAIパワー…「被写体を選択」は10分かかっていた作業が瞬時に終わる

実際の使い勝手はどうだろうか。今回はDOS/V POWER REPORTやPC Watch、AKIBA PC Hotline!などでカメラマンとして活躍する若林直樹カメラマンに使っていただき、その感想をうかがった。

若林直樹(スタジオ海童)

カメラマン。DOS/V POWER REPORT、PC Watchなどを中心に、製品撮影、人物撮影、風景、建物とさまざまな商業写真を手がける。デジタル写真への取り組みは2000年以前から進めており、当時はあまり行なわれていなかったカメラマンの手によるデジタル補正の可能性にもいち早く着目。長年にわたってノウハウを身に付けている。

普段から撮影した写真のレタッチにPhotoshopを活用しているという若林カメラマンだが、これまでは多くのPhotoshopユーザーがそうであるように、投げなわツールや多角形選択ツールなどを利用して指定を行なっていたと言う。「範囲指定をともなう画像処理の場合、1つの画像を処理するのに5分から10分はかかっています」と若林カメラマン。1日に数十点を超える写真を処理することもよくあるそうなので、慣れていてもそれくらいの時間を使う作業ということだろう。従来、こうした範囲指定は単調でありながら完全自動化が難しく、典型的な時間消費型の作業だった。

Photoshopに慣れ親しんだプロカメラマン若林直樹氏にご協力いただき、PhotoshopシリーズのAI機能を試していただいた。ちなみに、若林氏はPhotoshopを常に最新版にアップグレードしているが、「被写体を選択」はこの時が初体験。新機能が気になっても時間的に余裕がないとなかなか試せないという。はたして、忙しい合間を縫って試す価値はあったのか?

今回若林氏に体験していただいた「被写体を選択」は、被写体のおおまかな指定すら必要がないことは先に書いたとおり。ユーザーがやるべきことは、CPUが処理するのを待っているだけ。ある程度の性能を持つPCがあれば、待つと言うほどの時間も必要ない。

具体的な手順はスクリーンショットと共に下で解説するのでそちらを見ていただきたいが、Photoshopを使ったことがあればすぐにできてしまう。若林カメラマンに筆者が「メニューをこうたどっていけばできます」と伝えただけですぐに使えるようになった。そして、それまで5分〜10分ほどかかっていた範囲選択作業が目の前で、わずか数秒で終わってしまった。その簡単さに若林カメラマンは「今までの作業時間はなんだったんだと思うぐらいあっという間に終わりますね!」と少し驚いた様子だった。

髪の毛や衣服のひだの範囲指定まで細かくチェックする若林氏

髪の毛のように複雑な指定が必要なところも上手に処理してくれる点も、若林カメラマンは評価していた。現実的には、写真によってはAIが指定し切れない部分が数カ所存在することもある。しかしそこを手作業でちょっと修正するだけですむ。同氏によれば、今回の作例で行なったような修正であれば、従来の範囲指定になれていれば1分もあれば終わるのではないか、とのことだった。「細かい範囲指定をともなう作業は時間がかかるだけでなく、集中力を使うので、AIがサポートしてくれるとストレスが大幅に減りますね。この手の作業を長時間の撮影の直後にやろうとすると体力的にも精神力的にも大変なのですが、これからは楽できるかもしれません」と、若林カメラマン。

作業時間が1/5〜1/10になるので、多くの枚数をレタッチする場合には生産性が大きく向上する。また、範囲指定に慣れていない方でもできてしまうので、業務用の資料などのために写真を切り抜いて使ってみたいという方にもオススメだ。

なお、この機能はPhotoshopのバージョン 21.0以降であれば、Windows版でも、macOS版でも使うことが可能だ。

macOS版のPhotoshopでもAIによる「被写体を選択」を利用可能。プラットフォームを問わずAIの恩恵を受けられる

モノクロ写真にAIが自動着色すると……

Photoshop Elementsに搭載されたAI機能、「写真を自動的にカラー化」、「自動的に肌をなめらかに」も若林カメラマン試してもらった。

「写真を自動的にカラー化」はメニューから「画質調整-写真をカラーにする」を選ぶだけで実行できる。右側のパネルに4つのカラーオプションが表示されるので、その中から好みのカラーを選べばよい。

Photoshop Elementsの「写真を自動的にカラー化」で、右のモノクロ写真をカラー化した。色調がレトロな仕上がりになっている分、かえって違和感がない。元の色すら分からない写真に手作業で着色するのは、慣れていない人にはとうてい無理であることは容易に想像できる
「写真を自動的にカラー化」では、カラー化の方向性が画面右に数パターン示されるので、ユーザーはその中から好みのものを選ぶ

さらに詳細を調節することも可能だ。サンプルとして用意した写真は、50年以上前に撮影されたプリント写真からのスキャンデータだ。ひょっとすると、被写体の女性ですら当時の水着の色や天候を正確に記憶していないかもしれない。そんなモノクロ写真に、AIはどのように色を付けてゆくのだろうか。

結果について言えば、50年以上前の写真が昨日撮影したようにフレッシュになることはない。しかし、不自然さのないレトロなカラー写真風に仕上がった。こういった加工は、技術、センスとも求められるだけに、わずか数秒で仕上がってしまうのは驚きだ。

もう一つのAI機能、「自動的に肌をなめらかに」も「画質調整-肌をなめらかにする」の順で選んでいくだけ。あとはAIが顔の範囲を自動で指定して処理してくれる。なめらかさスライダで効き具合を調整することができる。若林カメラマンは「スマートホンみたいな手軽さで、より自然に仕上げてくれる印象ですね」と納得の様子だった。プロも納得の調整機能がワンタッチで利用できる、これがAIの特徴と言える。

「自動的に肌をなめらかに」は、以下にも“今風”の機能。スマホなどでも同様のいわゆる美肌加工ができる機能はあるが、“いかにも修正しました”という感じの仕上がりになることも多い。一方、本機能はAIの活用で自然な肌の質感に仕上がっている

AdobeのAI機能は、Intelの最新Coreプロセッサーを使うとよりよく使うことが可能に

AdobeのAI機能を、PC側で支えているのがIntelのCPUだ。今回紹介した機能はすべて、IntelのCoreプロセッサーを利用すると、より効率よく処理することができるようになっている。さらに、新しい世代のCoreプロセッサーほど高速に処理できる。AdobeはIntelが提供するソフトウェア開発ツールを利用しており、両社が協力体制にあることと関係しているのだが、とくに最新のCoreプロセッサーへの最適化が行なわれていることは気に留めておきたい。昔のCPUを搭載したPCでも利用できないわけではないが、「瞬間」と言えるほどのパフォーマンスを手に入れたいのであれば、第10世代Coreプロセッサーや、先日Intelが発表した第11世代Coreプロセッサーを搭載したPCの利用がベターだ。今回Windows環境で使ったのはMicrosoftのSurface Laptop 3で、第10世代Coreプロセッサーを搭載している。可搬性の高いノートPCながら、ご覧のとおりその処理は数秒程度とわずかな時間しかかかっていない。

これからPhotoshop環境を揃えたい、見直したいという方は、最新のPhotoshopとともに、それを実行するPCの環境も意識することをおすすめしたい。AIと最新CPUのサポートによってあなたの時間とクリエイティビティが開放されることがもっとも重要だ。休息や遊びの時間を増やすのもよし、写真加工を効率化して業務をさらにこなすもよし、そして、次なる作品を撮りに出かけるのも、また、よしだ。

提供:インテル株式会社

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September 29, 2020 at 06:00AM
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