LGBTの人たちへの理解増進に向けて、自民・公明両党は、超党派の議員連盟がまとめていた法案の文言を修正した法案を国会に提出しました。これに対し、立憲民主党や共産党は、修正は認められないとして、もとの法案を提出しました。
超党派の議員連盟がおととし、まとめていたLGBTの人たちへの理解を増進するための法案をめぐり、自民党は、党内の一部の反発を踏まえ「性自認を理由とする差別は許されない」という文言を「性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」などと修正する案をまとめ、公明党も了承しました。
自民・公明両党は18日午後、修正した法案を衆議院に提出しました。
自民党は、提出に先立って、野党各党に対し「修正によって、法的な意味合いは変わっていない」などと説明し理解を求めましたが、法案の共同提出に応じる党はありませんでした。
法案の提出後、自民党の新藤政務調査会長代行は、記者団に対し「今の国会での成立を目指す。私たちがどのように共生し、穏やかな暮らしをつくるためにはどうしたらいいのかを、国会審議を通じて明らかにしていきたい」と述べました。
これに対し、立憲民主党や共産党などは「修正によって、法案の対象が狭まるおそれがあり、認められない」として、超党派の議員連盟がまとめたもとの法案を提出しました。
立憲民主党の大河原雅子衆議院議員は記者団に対し「法案の内容は2年前に超党派で合意しておりこれ以上待たせるわけにはいかない。LGBTの差別解消という思想や考え方を国民全員で共有したい」と述べました。
超党派の議員連盟には、自民党や公明党の議員も名を連ねており、国会で2つの法案がどのように審議され、各党の賛否がどうなるかが焦点となります。
共産党の志位委員長は、記者会見で「与党案は『性自認』を『性同一性』に置き換えていて、当事者が『性の認識を医師などの第三者によって決められてしまうのではないか』と強く批判している。超党派でまとめた法案から重大な後退がある以上、与党案に反対という立場で臨む」と述べました。
当事者団体代表 松岡宗嗣さんは
当事者の団体の代表で、差別を禁止する法律の制定などを求めてきた松岡宗嗣さんは「理解増進法という法的な根拠ができることは、さらに理解を広げていくための契機にはなり得る。ただ先月、G7の外務大臣の共同声明の中でも、性的マイノリティーの権利保護に関して世界をリードするとうたっており、修正案では肩を並べることはできない」と指摘しています。
今後については「法案にある『性自認』と『性同一性』はもとは同じ意味だが、『性同一性』という言葉で性同一性障害が前提にされ対象が狭められないようにしないといけない。理解増進法だけでは差別の被害への対処や救済ができるわけでないので、今後も具体的な議論を深めていく必要がある」と話していました。
家族法が専門 早稲田大学 棚村政行教授は
家族法が専門で、性的マイノリティーをめぐる法律に詳しい早稲田大学の棚村政行教授は「基本法・理念法なので、本当はより力強いことばではっきりメッセージを伝える必要があるが、G7サミットに合わせて提出にこぎつけられた点は第1歩で一定の評価はできる」と話しています。
今後について「この法律の基本的な精神がどこにあり何のために作るのかはっきりさせることが重要だ。性的マイノリティーの人たちを誰ひとり取り残さない多様性のある社会の実現に向け具体的に取り組んでいくことが大切であり、今後、国会での議論など成立に至るプロセスも大事に注視していく必要がある」と話しています。
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