【ワシントン=高見浩輔】国際通貨基金(IMF)は30日改定した世界経済見通しで、2023年の実質成長率の予測を2.9%と22年10月の前回見通しから0.2ポイント引き上げた。ゼロコロナ政策を解除した中国を中心に幅広い国・地域の成長率を上方修正した。報告書には「世界的な景気後退の際にしばしば起こる世界の国内総生産(GDP)のマイナスなどは想定していない」と明記した。
「複数のポジティブ・サプライズがあり、多くの国・地域で経済の回復力が予想以上だった」と総括した。インフレもピーク越えを見通した。23年の消費者物価上昇率は約84%の国で前年を下回る予想とした。
23年の成長率の上方修正は1年ぶり。22年1月時点で3.8%としていたが、昨年2月のウクライナ危機に続く歴史的な高インフレと金融引き締めを受けて見通しの引き下げが続いた。10月時点では2.7%と3四半期連続で下方修正だった。
23年の2.9%は前年の3.4%から減速するものの、24年には3.1%と伸びが拡大する。
23年の上方修正は、名目ベースで約18兆ドルと世界2位の中国の23年の成長率が、0.8ポイント上方に見直されて5.2%になったことが大きい。新興・途上国の全体でみても成長率は0.3ポイント引き上げられて4.0%となり「22年中に底を打った」という。
米国は0.4ポイント上げて1.4%とした。22年後半の需要が強かったため23年の成長率の発射台が高くなる、いわゆる「げた」の影響が大きい。回復軌道に戻るのは24年後半からで、同年は利上げの効果を反映して従来予想より0.2ポイント低い1.0%とした。
ユーロ圏は0.2ポイント上げて0.7%とした。各国政府によるエネルギー価格の抑制策や現金給付を反映した。マイナス成長を見込んでいたドイツを0.4ポイント引き上げて0.1%のプラスにした。
英国は成長率を下方修正した数少ない例外となった。大規模な財政出動を掲げたトラス前首相が22年10月に辞任に追い込まれた。金融引き締めとエネルギー価格の高騰を反映し、0.9ポイント下げてマイナス0.6%になった。
日本は22年12月に成立した22年度第2次補正予算など財政出動の拡大によって23年の成長率が0.2ポイント高い1.8%になった。「円安による企業利益の増加や当初の事業計画が後にずれることが、企業投資を後押しする」とも指摘した。24年には効果がなくなっていくため、成長率は0.9%と前の見通しからは0.4ポイント低くなった。
先行きのリスクとして、米欧の新型コロナウイルス禍対応で発生した過剰な家計貯蓄が想定以上に消費を押し上げる可能性に言及した。短期的には成長率を上方修正する要因になるが、インフレが押し上げられてより厳しい金融引き締めが必要になれば景気が減速する懸念があるという。
中国でのコロナ感染拡大による健康被害が広がった場合や、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー・食品価格の高騰、途上国が抱える債務問題も経済を下押しするリスクとして例示した。
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