宇宙で中国の存在感が高まっている。2022年秋には独自の宇宙ステーションを完成させる予定である。
予定通りに完成すれば、中国は独自に宇宙ステーションを保有する国として、旧ソ連(サリュート1971年)、米国(スカイラブ1973年)に次いで史上3番目となる。
中国の宇宙ステーション(CSS:Chinese Space Station)は、質量がわずか80~100トンで、既に退役したロシアの宇宙ステーション「ミール」のサイズと質量に近い。
一方、国際宇宙ステーション(ISS)はフットボール競技場サイズで、重量約420トンの巨大宇宙ステーションである。
中国の開発関係者は「規模でISSと競争するつもりはない」と言う。
ロシアの独自の宇宙ステーションの建設状況にもよるが、ISSが退役した後は中国が世界で唯一の宇宙ステーション保有国となる可能性がある。
さて、現在、日米欧ロなどの15カ国がISSを運用している。ISSは2024年まで運用することは決まっているものの、2025年以降どうするかは定まっていない。
欧米は2030年頃まで延長することを検討しているが、ロシアは2024年以降でISSから撤退し独自の宇宙ステーションを建設する方針を打ち出し、米国に揺さぶりをかけている。
ロシア国営宇宙開発企業ロスコスモスのドミトリー・ロゴジン総裁(2022年7月15日に解任)は、2022年2月25日に自身のツイッターで、次のように発言している。
「ISSの軌道変更はロシアのプログレスMS補給船のみで行われている。米ロ協力が損なわれたら一体、誰が軌道維持や宇宙ごみ回避の噴射を行って、米欧に落ちるのを防ぐのだろうか」
「インドと中国に500トンの物体が落ちるかもしれないという脅威にさらすのか。ISSはロシア上空を飛行しないので、すべてのリスクはアメリカ次第だ」
この発言を受け、米国は6月27日に、ノースロップ・グラマンの改良した「シグナス」無人宇宙補給船によりISSの軌道を上昇させることに成功した。
これで、ロシアのISSからの撤退による大きな影響がないことが証明された(注1)。
(注1)ISSが周回する高度400キロにはごく薄い大気があり、空気抵抗によって徐々にスピードが落ち、ゆるやかに軌道が下がって行く。高度を上げてISSの軌道を修正するため、適度なタイミングで無人宇宙補給船のエンジンを噴射して「リブースト(軌道修正)」が行われている。これまでその役割をロシアの「プログレス」が担ってきたが、今後は米国の改良した「シグナス」での「リブースト」が可能となった。
さて、ISSは1998年に軌道上で組み立てが始まって以来、地球と宇宙の観測に加えて、宇宙環境を利用した様々な研究や実験が行われてきた。
しかし建設から24年経ったいま、壁の穴やハードウエアの不具合などといった老朽化が進んでおり、各国の宇宙機関は年間膨大なコストをかけて運用している状態である。
いま、これらの膨大なコストを穴埋めするためにISSを民間に解放して商用化する動きが強まっている。
一つはISSへの滞在を含む宇宙旅行ビジネスであり、もう一つはISSへの人員輸送と物資輸送の民間委託である。
また、NASAは2021年3月、新しい宇宙ステーションを建設・運用する民間企業を募集する商用地球低軌道開発(CLD:Commercial Low Earth Orbit Destinations)プログラムを発表した。
このプログラムで経費を削減し、NASAは月や火星の探査を目的とする「アルテミス」計画に注力できるようにすることを目指している。
本稿では、地球の約400キロ上空に建設された人類史上最大の実験ラボとして、様々な活動を通して地球での暮らしや人類の発展に貢献してきたISSの退役を惜しみつつ、ISSのこれまでの道のりを概観してみたい。
以下、初めにISS計画の経緯と変遷について述べ、次に民間人の宇宙旅行ビジネスについて述べ、次にISSへの人員輸送と物資輸送の民間委託について述べ、最後にISSの後継宇宙ステーションの開発について述べる。
からの記事と詳細 ( ロシアが撤退する国際宇宙ステーションの過去・現在・未来 国家から民間へ、大きく変わるISSの運用と将来像を徹底解説(1/10) - JBpress )
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