長く続く不調は加齢が原因?
ショットの調子というのは、いつもいい状態に保つことが難しい。同じゴルファーが同じクラブを使ってプレーしているのに、ビシビシと当たる日もあれば、ダフってばかりの日もあるというのが、ゴルファー共通の悩みだろう。
ショットの調子が悪い日の原因は、体調がよくない、視力の調子がよくない、疲労がたまっている、感情が不安定でイライラしがち、などがあり、自分ではなかなか修正できないものだ。
だから、こういう日は一日中思うようなゴルフにならず、悶々としながらスコアを落としてしまうのだが、「こういう日もある」とあきらめるしかない。
体調がよくなったり、疲労が回復したりすれば、また調子のいいショットが打てたりもするのだから、一過性の不調はあまり気にしないほうがいい。気にしてスウィングをいじり出すと、ろくなことにはならないからだ。
しかし、一過性の不調ではなく長い期間にわたって調子が回復しないときもあり、こちらの不調は少し深刻になる。加齢により、知らず知らずのうちに体力や筋力が落ちていたり、疲労が残りやすくなっていたり、関節の動きが悪くなっていたりでスウィングに影響が出ていることが原因だからだ。
老化には逆らえないので、体力や気力が年々衰えていくのは仕方ないことだが、年齢なりの身体に合わせて、なんとか調整していくしかない。筋力の低下や柔軟性の低下など、加齢による影響であれば、飛距離も落ちてきているはずだ。その飛距離に合ったマネジメントに変えていく必要もある。
一方、素振りなどのトレーニングをしていて、ちゃんと当たれば飛距離も落ちていないし、日頃からウォーキングなどして18ホールを歩いてもそれほど疲労を感じない程度の体力は維持していると自分では感じているのに、なぜか不調が続くということもある。
加齢により身体の衰えを感じている場合も、それほどの衰えを感じていない場合も、どちらにせよ原因不明だが、なんらかの影響がスウィングに出ているから不調なのだ。これは、高齢ゴルファーなら誰しもが直面する難敵といってもいいだろう。
スウィングの不調に効く5つのチェックポイント
日本アマで6度の優勝を果たしたレジェンド、中部銀次郎さんでもそういう不調に陥ることはあるのだそうだ。ただ、銀次郎さんほどの名手となると、不調の原因を突き止め、修正するポイントも確立していた。
チェックポイントはそれほど多くはなく、いずれも基本に沿ったものだ。だから銀次郎さんだけでなく、ゴルファーなら誰でも守ったほうがうまくいくものといってよいだろう。
- スタンスはスクエアになっているか
- アドレスで頭がおじぎせず、背筋がしゃんと伸びているか
- 腰骨もしゃんと伸びているか
- スウィング中に頭が上下左右に動いていないか
- テークバックからトップにかけて右腰が右側にスウェイしていないか
この5つだけである。チェックポイントのひとつが守られていないと、その歪みは連鎖的にスウィング全体におよぶとのことだ。不調の原因は1つ目であることもあれば、4つ目なり5つ目であることもある。
このチェックポイントのうち、最初の3つはアドレスに関するものだ。アドレスをしてみて、まずこの3つが守られているかをチェックすることが始まりとなるだろう。
スウィング中にはひとつのことしか考えられないものだから、4つ目と5つ目は順番にひとつずつチェックすることになる。
銀次郎さんは、このチェックポイントが5つとも守られているなら、スウィングはうまくいくと確信していたそうだ。ところが、それでもまともに当たらないようになり、初心者のようにダフるような状態になったことがあるという。
そこで、「ダフってばかりいるのはクラブが重いからではないか?」と疑った。体力の衰えもあるから、クラブの重さが合わなくなってきているということもあり得る。そこでアイアンを買い替えてみようと考えたのだが、その前に昔使っていたアイアンを打ってみたら、いまのアイアンよりさらに重いにもかかわらず、なぜかちゃんと当たった。
どうやら、アイアンの重量が問題ではなかったようだ。では、なぜ古いアイアンならちゃんと当たるのか。銀次郎さんは、そこで忘れていたもうひとつのチェックポイントを思い出したのだ。
いま使っているクラブより重いクラブで打ってみたらちゃんと当たったのは、重いゆえにテークバックの最初がゆっくりとしたスタートになったのではないか――。「ゆっくり上げてゆっくり下ろせ」も昔からいわれている基本のチェックポイントだ。
そこで、いま使っているクラブでも、最初の20~30センチを意識してゆっくりにしてみたら、原因不明だったダフリはなくなり、ちゃんと当たるようになったのだ。
テークバックのスピードに注意
銀次郎さんの場合、テークバックをゆっくりとした自分のテンポで上げることは無意識のうちにうまくできていたので、そのチェックポイントは省いていたのだそうだ。しかし、加齢にともなう身体の変化によって、知らず知らずのうちに、いつの間にかテークバックが速くなっていたらしい。
テークバックが速くなると、トップからいきなり叩きにいくような体の動きや腕の振りが出てしまいやすい。そうすると、スウィングの軸が微妙にずれ、動いてしまうのではないかと銀次郎さんは気づいたのだ。
ゴルファーにはそれぞれに合った、一番よいスピードというのがある。その速さで振ると体の回転もスムーズになるし、悪い動きもしない。少し速めのテンポが合うゴルファーは速めのテークバックでもうまくいくが、銀次郎さんの場合は遅いテンポが合っていたのだ。
こうして、ある年齢から銀次郎さんのチェックポイントに、「テークバックは性急に振り上げず、ゆっくりスタートさせる」という項目が加わった。それ自体は昔から指摘されていた基本で、スコットランドの古言にも”Slow back, slow down.”というものがある。
不調になったときのチェックポイントは、ゴルファーによって人それぞれで違うかもしれないが、正しいポイントを早い時期に取り入れたほうが上達は早い。自分では正しいポイントだと思っていても、それが基本から外れたものだと進歩も遅くなるのだ。
「正しい基本というのはそれほど多くはない」とは、もっともスウィングを研究したプロといわれるベン・ホーガンも言っている。技術レベルが未熟なアベレージゴルファーなら、まずは銀次郎さんの当初の5つのチェックポイントに「テークバックは性急に振り上げず、ゆっくりスタートさせる」を加えた6項目を取り入れてみて、悪いことはひとつもないだろう。
銀次郎さんほどのゴルファーでも、クラブを振り始めてから45年も経って、新しい基本のチェックポイントに気づくとは、ゴルフはよくできた奥深いゲームだとつくづく思う。
加齢による体の変化や衰えは、今日と明日では気がつかないほど小さなものだが、少しずついつの間にか積み重なって、スウィングに影響が出る大きさにまでなってしまう。
そうなったときに原因不明の不調に陥るが、基本に沿ってチェックしていけば原因がわかったり、新たな点検材料が浮かび上がってきたりする。しかし、それもゴルフの歴史が集約してきた基本のなかのひとつであるに違いないのだ。
スウィングの基本からはずれたポイントをいじくり回して、不調をさらに悪化させてしまうような「迷手」には決してならないよう、お気をつけあれ。
参考資料:杉山通敬『中部銀次郎 ゴルフの心』ベネッセ、1996年
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