6年に1度のフィリピン大統領選が5月9日に投開票を迎え、元上院議員のフェルディナンド・マルコス氏(通称ボンボン・マルコス氏)の当選が確実となった。投開票前の世論調査でもマルコス氏は現職副大統領のレニー・ロブレド氏や元プロボクサーで上院議員のマニー・パッキャオ氏など有力候補を上回る支持を集めており、そのまま独走状態を維持して大統領選を制した。
フィリピン大統領選で当選を確実にしたフェルディナンド・マルコス元上院議員(写真:AFP/アフロ)
マルコス氏の大統領就任について「彼こそ大統領にふさわしい。国をまとめ導いてくれるはずだ」(マニラ近郊に住む23歳教員)と歓迎する声がある一方で、フィリピン研究の専門家や同国政治の研究者は、今回の結果を衝撃と当惑をもって受け止めている。
マルコス氏の父親はフィリピンに独裁体制を敷いた指導者として知られる。1972年には戒厳令を布告し、反体制派を厳しく弾圧した。反発する国民が革命によって父マルコス氏を亡命へと追いやり、民主主義を取り戻したのが86年のことだ。民主化してまだ40年もたっていない。
「なぜ『マルコスの帰還』が実現したのか。多くの疑問が残されている」。デ・ラ・サール大学政治学科のクレオ・カリンバヒン准教授はこう話し、「今回の選挙では、多くのディスインフォメーション(偽情報)がソーシャルメディアで拡散し、マルコス陣営に有利に働いた」と指摘する。
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