[東京 20日 ロイター] - ロシアによるウクライナ侵攻で資源価格が高騰し、4月以降の物価上昇率が政策目標の2%に近づく蓋然性が高まる中、日銀の金融政策の方向性を示すフォワードガイダンスのあり方について、市場で注目が高まっている。日銀では当面は金融緩和の継続で景気回復を下支えすべきだとの声が根強い。その半面で、物価が2%付近で高止まりする中で人々の物価観が変わり、中長期のインフレ予想が持ち上がってくれば、現在の金融緩和バイアスを中立スタンスに修正する1つの要因になるとの見方が浮上している。
<円安は金融政策の転換促さず>
日銀の金融政策は2%の物価目標実現のために行われており、為替を誘導するために行われているものではない――。岸田文雄首相は15日にこう述べたが、これは日銀のスタンスを明確に示すものだ。
ドル/円の具体的な水準が金融政策の修正に直接つながる可能性は低い。ただ、為替の急速な変動に対して、日銀は警戒感を高めている。黒田東彦総裁は18日、「最近1カ月ほどで10円と急速な円安は、企業の事業計画策定に困難を来す可能性がある」と指摘。「大きな円安や急速な円安ではマイナスが大きくなる」と述べた。
1ドル130円台など一段と円安が進んだ場合の実体経済への影響について、林新一郎・名古屋支店長は11日の会見で「為替の円安そのものがダイレクトに響くということはないと思うが、原材料価格やエネルギー価格の上昇に上乗せする形になっていく可能性がある」と指摘。「企業の収益や家計の消費マインドに影響していく可能性があるので、そこはしっかり見ていく必要がある」と話した。
<中長期予想インフレ率が焦点、FG変更には経済回復が必要>
一方で今後、中長期の予想インフレ率の動向次第ではこれまでの緩和バイアスを修正する必要があるとの声も聞かれるようになった。
今回の物価高がコストプッシュによるものだとしても、2%という伸びが続く中で人々の物価観が変わり、物価や賃金の広範で持続的な伸びにつながる可能性が高まれば、物価の伸びがゼロ%台でたどたどしい状況とは異なり、政策スタンスをニュートラルに修正する必要があるからだ。
4月以降は携帯通信料の下押し要因の剥落で消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の前年度比伸び率が2%付近に一気に高まる可能性が高い。ウクライナ危機によるエネルギー価格の高騰により、ガソリンや電気代などにタイムラグを伴って波及、少なくとも年末にかけて、コアCPIの伸び率が高水準で推移するとの見方が出ている。
もっとも、日本の期待インフレ率(ブレーク・イーブン・インフレ率、BEI)を10年物で見たインフレ率はプラス0.9%程度。上昇してきているとは言え、まだ2%の目標には遠い。賃金の伸びは鈍く、人々の物価観が本当に変わるのか懐疑的な声も根強い。
予想インフレ率が上昇してきても、政策金利を「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準」としているフォワードガイダンスを中立的に変更するには経済の着実な回復が必要になるとみられる。
日銀は、2%の物価安定目標の達成には予想インフレ率の上昇のみならず、賃金の持続的な上昇が必要だとしてきた。
このため、需給ギャップがマイナスで推移している間に金融引き締めを実施することには懐疑的な見方がある。4月末からの大型連休や夏休みに観光需要が回復し、地方のサービス産業まで賃上げが広がるのか、まずは見極める必要があるとの指摘もある。
日銀では、原材料高騰で景気に下押し圧力が掛かる中、当面は緩和を粘り強く続けるのが望ましいとの声が目立つ。
(和田崇彦、木原麗花 編集:石田仁志)
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