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Thursday, August 19, 2021

フォレスターアカデミーって どんな役割を担うの:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

 はなくいどり 「奈良県フォレスターアカデミー」という学校が今春、吉野町に開校したね。「森の番人」「森林の総合プロデューサー」を育てるそうだけれど、どんな役割が期待されているの。

 A 紀伊半島大水害が2011年にあったね。県内約1800カ所で土砂崩壊が起き、24人の死者・行方不明者が出た。林業の低迷で担い手が減り、手入れされない施業放置林が山に増えたのが一因とされた。それで県は、持続可能な森林環境の新しい管理制度をつくり、それを担う人材を養成することにしたんだ。

 は モデルはスイスの制度だね。

 A スイスでは大規模な皆伐で森林が荒廃し災害が起きたのを教訓に、林業経営と環境保全(防災や生物多様性維持)が両立するように「恒続林(こうぞくりん)施業」という手法をいち早く取り入れたんだ。皆伐という経済性重視の方法で一定区域の樹木を全部切り倒さず、「択伐」という部分的な木材収穫で森林の手入れにつなげ、安定した森林状態を維持する経営手法なんだ。フォレスターという国家資格を持つ専門家が同じ森林で長期間、管理を担っているそうだ。

 は 奈良県はどんな森林管理を導入するの。

 A いまあるスギやヒノキの人工林を「目指すべき森林の姿」として三つに区分して転換を誘導する先駆的な取り組みだ。「恒続林」もその一つで、都道府県レベルで転換に挑むのは初めてだそうだ。川上村の県有林ではスギ林に広葉樹のミズナラの区画を設け、10~20年先を見据えた混交林誘導のモニタリングをすでに始めた。奈良の環境に適した森林づくりへデータを蓄積し、探るんだ。このほか、吉野林業のような持続的な経営が可能な「適正人工林」は維持するが、林業経営が難しそうな山は、在来樹種で構成される自然状態に近い「自然林」に変えていこうとしている。フォレスターには山林所有者に理解を得る役割も期待されているよ。

 は どんな人たちがフォレスターをめざしているの。

 A 公募した第1期生は18~70歳の20人で、うち9人は県外出身者。女性はいなかったけれど、30~40代は異業種からの転職組が多い。フォレスター学科(17人)と森林作業員学科(3人)があって、ともに1年間は森林作業員の基礎能力として林業機械技術を習得したり、経営や流通、法令を学んだりする。フォレスター学科はさらにもう1年修業し、マーケティングやリーダーシップの実践、スイス林業教育センターなどでの海外研修も受けるんだ。

 学舎は、500年の造林の歴史があり、原木市場や製材工場も数多く立地する吉野林業の集積地。県立吉野高校の3階の空き教室を活用する。サテライト実習場は町内にある県林業機械化推進センターだ。

 は 卒業後はどうするの。

 A フォレスター学科のうちの6人は県職員として採用されて入学し、卒業後には「奈良県フォレスター」に任命される予定だ。市町村に配置され、恒続林や自然林への誘導、林業事業体への技術支援など同一地域の森林行政に長期間携わるんだ。

 は 県内の森林の現状は。

 A 県土の森林率は77%。民有林が95%を占め、人口林率は6割余り。ただ林業就業者は959人(15年度)で、1970年代に比べ5分の1以下に減った。新規就業者は22人(19年度)にとどまり、アカデミー卒業生の活躍で就業増の呼び水になればと期待されている。

 は 息の長い取り組みになりそうだね。

 A 校長の藤平拓志さん(55)は「フォレスターが新しい森林管理の未知の分野に挑み、地道に成果を上げれば、持続可能な社会の担い手として希望や誇りを持てるあこがれの存在になるはず」と期待しているよ。

     ◇

 入学希望者らを対象に、オンラインによるオープンキャンパスが28日午後1~4時に開かれる。無料。問い合わせは同校(0746・42・8100)。(福田純也)

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