菅義偉首相は首都圏4都県に発令中の新型コロナウイルス緊急事態宣言を2週間程度再延長する意向を表明した。期限の7日で解除したい考えだったが、慎重意見が強い知事、医療界、専門家に外堀を埋められる前に機先を制そうとした形だ。
首相は当初1カ月に限って宣言を発令したが、2度の延長で2カ月半に長期化することになった事実をまず直視しなければならない。問題は再延長して何をやるかであり、真に目指すべきは宣言解除の先の感染収束だ。政府は飲食中心に絞った対策の不備を早急に点検し修正する必要がある。
1月の宣言発令時、首相は「1カ月後に必ず事態を改善させる」としたものの2月に1カ月延長を決定。その際も「1カ月で全ての都府県で解除できるようにする」と述べたが果たせなかった。2度も延長させた政府や知事らの責任は重い。
首相は専門家の抵抗を抑え中京、関西など6府県を先行解除した時には「基準を決めている。基準はクリアしている」と気色ばんで正当性を強調した。ところが今回の4都県については「(解除基準を)クリアしている」としつつも、さらに「ベクトルが下へ行くことが大事」と、同じ基準でも厳格な解釈に転じた。解釈で結論が変わるような基準は混乱を招く。
4都県は全て新規感染者数が1週間前と比べて増加傾向で減少ペースの鈍化が顕著になっている。感染状況指標も緊急事態宣言に相当するステージ4(爆発的感染拡大)を軒並み脱したが、「全入院者に対する確保想定病床の使用率」は4都県全てステージ3(感染急増)の「20%以上」のままだ。中でも千葉はステージ4になる50%のぎりぎり手前だ。
厚生労働省の専門家組織も新規感染者の減少速度が鈍化し、病床使用率の高い地域がなおあると分析しており、その意味では首相の判断は妥当と言える。ただ専門家は感染源やクラスター(感染者集団)発生場所が分からないケースが増え、夜間の人出も上昇していると危機感を表明。その上で、飲食中心の対策では感染者減少が困難になっていると指摘した。首相は重く受け止めるべきだ。
多くの国民の関心は、首都圏で感染を十分抑えられない原因にある。先行解除の6府県を含め国内の多くの地域は新規感染者数、医療体制の負荷ともに着実に減ってきたが、なぜ首都圏は危機を脱せないのか。理由は依然明確でない。だからこそ対策の効果検証が必要ではないか。
政府は、若い世代が飲食の場で感染し家庭などにウイルスを持ち込むのが主な要因とみて対策の的を絞ったが、各地で止まらない高齢者施設でのクラスター対策などをもっと徹底する必要性がある。専門家が求めるPCR検査による早期探知や、積極的疫学調査の強化も待ったなしだろう。
街の人出が増えるのは、生活維持の必要から人々がやむなく通常の社会経済活動を再開しているためではないか。「緩み」を引き締めるには、終了した持続化給付金などに代わる中小企業の支援策の検討も必要だ。
2週間後の3月下旬は、卒業、転勤、花見など人の移動が活発になる時期だ。自粛生活からの反動が心配な一方、感染力が強い変異ウイルスも確実に広がっている。首相はさらに困難な決断を迫られると認識すべきだ。(共同通信・古口健二)
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