有識者会議で異論が出ていた事実を座長が隠蔽?
JR東海が計画するリニア中央新幹線は、静岡県だけが本線未着工。南アルプスをトンネル掘削すると県の水源である大井川が毎秒2トン減るかもしれないのに、JR東海がその対応策を提示しないために県が着工を許可しないからだ。 その方法を話し合うために、国土交通省が開催する「有識者会議」が昨年から、「JR東海寄りなのでは」との疑念をもたれ始めている。もっと正確に書けば、責任者である福岡捷二座長が発するコメントに、取材を重ねる記者たちは違和感を覚えている。 2020年4月から、県の了解のもと国交省が設置した「有識者会議」では、7人の有識者とJR東海とが話し合いを続けている。現在、会議の主たる議題は二つ。トンネル湧水を「全量、大井川水系に戻す」方法と、上流部の減水が中下流域の地下水に影響するかについてだ。 これまで7回の会議が開催されたが、筆者は第4回目会議から徐々にその方向性に違和感を覚えている。 7月16日の第4回会議では、トンネル掘削する上流で大井川が減水した場合の中下流域の地下水への影響を話し合っていた。JR東海はかねてから「上流で減水しても100Kmも離れている中下流域の地下水への影響はないと考えている」と表明している。 それに同意する委員もいる一方で、複数の委員が「上流の減水と中下流の地下水との関連性をもっと検討すべきだ」との意見を述べていた。ところが、会議終了後の記者ブリーフィングで福岡座長はこう発言した。 「(上流で減水しても)下流の水利用への影響は大きくないという点については、委員は皆『そうだね』との合意に近い方向性が見えてきた」 どうしてこんなまとめができるのか。この発言に、静岡県は「実質的な議論が始まった段階で、中下流域の水利用への影響が軽微であるとの意見には驚いた」とコメントし、新聞各社もそれを報じた。
国交省・JR東海の意図に従った? 「座長コメント」を静岡県副知事も批判
すると、8月25日の第5回会議の記者ブリーフィングでは、福岡座長は「座長コメント」なるA4サイズ2枚の紙を配布しただけで姿を見せなかった。福岡座長の代弁を江口秀二・国交省大臣官房技術審議官が務めた。 周囲の記者たちは「前回批判されたので逃げたのでは」とささやいたが、その真偽はわからない。ともあれ、その座長コメントでも福岡座長は「トンネル掘削による中下流域の地下水への影響は概括的には問題ないと言えるとの複数の意見があった」と、JR東海の主張に同意するような一部の委員の意見だけを強調しているのだ。 これをオンライン傍聴していた難波喬司静岡県副知事も、座長コメントを批判した。 「座長コメントは無理がある。誤解を招く。おそらく、前回のコメントでいろいろな意見があったから、今回こうした形にしたと思うが、後日、きちんとした議事録を作るのが普通のやり方。たとえば、『主にトンネル施設の規模等を決める目的で作成された水収支解析モデルにおいて……』と書かれているが、こんな議論はされていない。委員の皆さんはこんなこと一言も言っていない。国交省の意図を感じる」
からの記事と詳細 ( リニアの静岡県への影響を議論する有識者会議「座長コメント」のテキトーぶりが酷い(HARBOR BUSINESS Online) - Yahoo!ニュース )
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