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Sunday, August 23, 2020

ラズパイとAI-OCRで生産日報を電子化する(前編) - @IT MONOist

小型ボードコンピュータ「Raspberry Pi(ラズパイ)」を使って、低コストかつ現場レベルでIoT(モノのインターネット)を活用する手法について解説する本連載。第4回と第5回では、AI技術の活用事例として注目を集めるAI-OCRとラズパイの組み合わせによる生産日報の電子化について前後編に分けて解説します。

 今回からは、小型ボードコンピュータの「Raspberry Pi(ラズベリーパイ、略してラズパイ)」と、機械学習などのAI(人工知能)技術を活用したOCR(光学的文字認識)である「AI-OCR」を組み合わせた事例となる「生産日報の電子化」をどのように実現するかについて、前後編に分けて解説します。

⇒連載「ラズパイで製造業のお手軽IoT活用」バックナンバー

生産日報電子化の課題

 生産日報は、全ての生産現場で、必ずといっていいほど記録されています。生産日報を記録することにより、生産現場の状況が把握できるだけでなく、不良や設備停止などのムダを明確にし、改善につなげられるのです。

 これまで生産日報は手書きで記録することが一般的でした。これを電子化することで、生産状況を「工程」→「工場」→「全社」という流れで共有して可視化レベルを上げ、定量的な状況把握とムダの排除による改善活動を促進しようという取り組みが始まっています。

 しかしながら、生産日報の電子化については大きく分けて2つの課題があります。

  1. 手書き日報のフォーマットをタブレット端末などで入力する方式に変更しても工数が掛かって作業に支障がでる
  2. 手書きで日報を記録することで数字が常に頭に入り、そのことが改善意識向上につながっていた。そういった手書きの良さがなくなってしまう

 1.は、手書きしていた日報の記録をタブレット端末による入力で置き換えようという単純な発想ですが、「項目をプルダウンから選択」して、「数量を入力」して「保存ボタンを押す」といった行為になると、手書きによる記録と比べて2倍以上の時間がかかってしまい、作業に支障が出るというケースです。現場ではコンマ何秒でも短くといった改善を求められますので、たとえ1秒2秒でも作業時間が増えるだけでも深刻です。すぐに現場の人から「現場でタブレット端末の入力はやりたくないので、入力作業はこちらの手書きの日報を基に他の人にやってほしい」となることが多いです。

 2.については、昭和の時代から定着してきた文化が背景にあります。毎日、「生産数」「不良数」「設備停止」を記録していると、いつの間にか生産している状況が頭に入ってくるのです。そのうちに「今日はいつもより生産性が上がった/逆に下がった」「今日は何の不良がいくつ出ていた」といったことに気付きます。そのうちに「不良や設備停止を具体的に減らすにはどうしたらよいか?」という考えにつながり、「そうだ、毎日設備の清掃をしておこう」といった改善をする意識が芽生えてくるのです。そのため、多くの現場の管理監督者が、手書き文化を続けたいと考えています。

課題解決の進め方

 生産日報の電子化に向けたこれらの課題は、ラズパイを活用した次のような仕組みによって解決することが可能です。

  1. 手書きで日報を記入する
  2. 手書き日報をラズパイで読取り、テキストデータに変換する
  3. テキストデータに変換した日報データを現場画面に表示して内容を確認する。誤認識している部分は手で修正する
  4. 修正した箇所についての機械学習を行って認識率を向上させる
図1 図1 ラズパイ+AI-OCRによる生産日報電子化の概要(クリックで拡大)

 この仕組みでは、ラズパイにつなげたカメラで手書きの生産日報を撮影し、日報に記入した数字の情報をOCR機能でテキストデータに変換し記録します。変換結果を画面に表示して誤認識があれば修正しますが、この修正作業を通して機械学習を行って手書き文字をより正しく認識できるようにしていきます。

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