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Friday, December 23, 2022

日銀が金融緩和修正。住宅ローン金利への影響は? - トウシル

▼著者はこの人

フィナンシャルクリエイト社長
 高塚 大弘 (たかつか・ともひろ)

■略歴
早稲田大学卒業後、東証一部(現・東証プライム)上場企業にて金融コンサルタントとして活躍。
これまで培った経験と疑問から「金融業界を変える」という信念で、2011年にフィナンシャルクリエイトを設立。

■その他・出演など
・東海大学政治経済学部非常勤講師(2022年度)
・bayfmにて毎週木曜日AM8:25~AWAKE ウィークリー・フィナンシャ・ライフを担当。
・2023年1月から、FMヨコハマにて毎週金曜日AM7:30~BrandNew!FinancialBeatを担当。
・金融財政研究会(きんざい)が開催するFPフォーラムにて講演。
・R&I格付投資情報センターの発行する『ファンド情報』において注目IFAとして特集記事を掲載。
・YouTubeにて『お金の教育チャンネル』を配信中。

日銀、金融緩和修正。住宅ローン金利はどうなる?

 日本銀行が金融緩和を修正したことで、「住宅ローン金利が上がるのか」に注目が集まっています。

 日銀の決定とは、具体的には長期金利の上限を0.25%程度から0.5%程度に拡大するという発表です。「事実上の利上げ」との受け止めが広がりましたが、全ての住宅ローン金利が上昇危機を迎えるわけではありません。

 住宅ローンには固定金利と変動金利の二つがあります。今回の日銀の決定で、長期金利に連動する固定金利には上昇圧力が懸念されています。一方、短期金利に連動する変動金利に関しては、低金利水準が続きそうな見通しです。

 固定金利と変動金利の金利差が広がることにより、変動金利はますます利用者が増えると予想されます。今回は、変動金利を中心に住宅ローンの基本から考え方まで分かりやすくレクチャーします。

住宅ローン変動金利のメリット・デメリット

 変動金利とは、一定期間ごとに適用金利が見直される金利タイプのことです。金利が上昇すれば利息支払額は上がり、金利が下降すれば利息支払額は下がります。

 当初金融機関から提示される毎月の返済額が低い点が魅力のため人気を集めています。一方で、将来的な金利上昇によって支払額が増加し、家計を圧迫する恐れがあることも頭に入れておいた方が無難でしょう。

  • メリットは、他の金利タイプに比べて当初の金利が低い点
  • デメリットは、金利変動により、返済額、総返済額ともに大きく影響を受ける点
  • 一般的に年2回(4月、10月)金利が見直しされる

金利はこの先上がる? 

 変動金利の適用金利は、銀行が提示する「短期プライムレート」に連動しています。

 この短期プライムレートは、日銀が決める短期金利(政策金利)を基に決められます。つまり、日銀が短期金利を引き上げれば短期プライムレートの金利が上昇し、連動して住宅ローンの変動金利も上がる仕組みです。

 今回の日銀の決定では短期金利が変わっていないため、連動する変動金利に影響が出ることは少ないとの見方が大勢です。

 ただし、日銀が今後短期金利を引き上げることがあれば、状況は変わります。近い将来だけでなく、10~20年後に金利引き上げが起こった時にどのような返済額になるのか、家計管理上での対策はどうするのか、あらかじめ想定しておくと良いでしょう。

もし金利が上がったら、返済額はどうなる?

 適用金利が変動した場合、返済額はどうなるのでしょう。急激に金利が上がっても家計への負担を緩和するべく二つのルールが適用されます。

知らなきゃ損する二つのルール!(※適用されない変動金利もあり)
「5年ルール」…適用金利が変わっても、5年間は毎月の返済額は変わらないというルール
「125%ルール」…適用金利が変わっても、毎月の返済額は従来の1.25倍までしか増えないというルール

 このルールのおかげで、すぐに大きな家計不安を抱える方は少ないかと思いますが、実は返済額が変わらなくても中身は変動後の適用金利で計算され、元利割合は見直されています。

「5年ルール」「125%ルール」ともに金利上昇分の支払いそのものを免除してくれる制度ではなく、支払いを先送りにする制度と考えると分かりやすいでしょう。

 つまり、適用金利が上がったら実質の返済額、総返済額ともに増えるため、各個人が自分自身の責任で対応することになります。

金利変動による家計への影響をシミュレーション

【モデルケースA】借入金額3,000万円 借入金利0.5% 借入期間35年
毎月の返済額:7万7,876円 返済総額3,270万7,920円
⇒5年後に適用金利が1.0%に上昇した場合
毎月の返済額:8万3,913円(+6,037円) 返済総額3,495万3,684円(+224万5,764円)
⇒5年後に適用金利が1.0%、10年後に1.5%に上昇した場合
毎月の返済額:8万9,247円(+1万1,371円) 返済総額3,661万7,892円(+390万9,972円)
⇒5年後に適用金利が1.0%、10年後に2.0%に上昇した場合
毎月の返済額:9万4,786円(+1万6,910円) 返済総額3,834万6,060円(+563万8,140円)

※VS固定金利1.5%

毎月の返済額:9万1,855円(+1万3,979円) 返済総額3,857万9,100円(+587万1,180円)
【モデルケースB】借入金額5,000万円 借入金利0.5% 借入期間35年
毎月の返済額:12万9,793円 返済総額5,451万3,060円
⇒5年後に適用金利が1.0%に上昇した場合
毎月の返済額:13万9,854円(+1万61円) 返済総額5,825万5,752円(+374万2,692円)
⇒5年後に適用金利が1.0%、10年後に1.5%に上昇した場合
毎月の返済額:14万8,745円(+1万8,952円) 返済総額6,102万9,744円(+651万6,684円)
⇒5年後に適用金利が1.0%、10年後に2.0%に上昇した場合
毎月の返済額:15万7,976円(+2万8,183円) 返済総額6,390万9,816円(+939万6,756円)

※VS固定金利1.5%

毎月の返済額:15万3,092円(+2万3,299円) 返済総額6,429万8,640円(+978万5,580円)

 日銀の金融緩和に加えて、金融機関同士の低金利競争も激しいため、2022年12月現在の変動金利は史上最低水準を推移しています。一方で、日銀の発表を受けて、各行が12月末に公表する2023年1月の固定金利は上昇圧力が強くなっています。

 ファイナンシャルプランナー(FP)的には「家計に不確定要素を入れるべきではない」という視点から固定金利を推奨することもできますが、現状ほど変動金利と固定金利に差があると、例えば上記5,000万円の借入れのケースでは目先でも毎月の当初返済予定金額において月2万4,000円ほど差があり、金利上昇シミュレーションを見ても変動金利に魅力を感じる方が多いのではないでしょうか。

 一方でこのシミュレーションは2.0%までの想定となっており、それ以上の金利水準になる可能性もゼロではありません。

 大切なのは、いざという時にきちんと返済が継続できるか、家計設計が崩れないかどうかです。

 例えば、「金利上昇局面には繰上げ返済可能な資産を準備できる」「共働き世帯なので万が一の時にも生活が崩れない十分な収入がある」というように、家計状況が安定していれば極端に変動金利を怖がる必要はありません。

 リスクを知り、きちんと調べてシミュレーションするから怖くなくなるのです。

浮いたお金の活用アドバイス

 日頃からきちんとシミュレーションを行って計画的に資産形成できる倹約家の方には不要な考えかもしれませんが、気付いたらお金を使ってしまう浪費家の方におすすめのアイデアをご紹介します。

 変動金利、固定金利で悩んで、もったいないからと変動金利を選んだ時に、仮に月2万円浮いたとしましょう。

 はたしてその2万円は資産として残っていくのでしょうか。(※この2万円がなければ生活が成り立たない状況では住宅ローンは組まないという前提です。)2万円と聞くと大きく感じると思いますが、1日あたりにするとおよそ700円です。

 人間、欲には弱いもので1カ月もあれば簡単に使ってしまうことができます。もし変動金利を選んだ上で、漠然とした将来の金利上昇への不安を感じているとしたら、この2万円を将来にむけて強制貯蓄することをおすすめします。

 NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やつみたてNISAなど非課税枠で投資信託を積立設定することを第一に推奨しますが、難しければ定期預金でも構いません。

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