岡山市の県立高校で10年前、野球部の生徒が自殺した問題で、県教育委員会が文部科学省の調査に対して誤った報告をしていたことが分かりました。
県教委は文科省に対して訂正を申し入れました。
岡山市の県立操山高校で10年前の平成24年7月、野球部のマネージャーをしていた当時2年生の男子生徒が自殺した問題で、県教育委員会は去年「自殺の原因は野球部の監督だった教諭からの叱責と体罰にあった」とする第三者委員会の報告を全面的に認め、生徒の両親に謝罪しました。
しかし県教委は、生徒が亡くなったよくとし、文部科学省が毎年行っている生徒の自殺などに関する調査に対し、誤った報告をしていたことが関係者への取材で分かりました。
第三者委員会は、家庭や生徒の性格には自殺の要因となる事実は見当たらなかったとしていますが、生徒が置かれていた状況について「教職員との関係での悩み」のほか「父母等の叱責」や「学業等の不振」それに世の中や人生が嫌になったという「えん世」があったと回答していたということです。
県教委は遺族からの指摘を受けてことし9月、文科省に対し、当時の報告は誤りだったとして訂正を申し入れました。
「父母等の叱責」や「学業等の不振」それに「えん世」の回答を削除し「その他」の備考欄に「教員からの叱責や体罰、教員という立場を利用したハラスメントがあった」と記す回答に訂正し、当初の回答が反映された統計を修正するよう求めています。
また遺族の意向を踏まえ、調査の選択項目に「教師からの体罰・ハラスメント」という項目を新たに設けることもあわせて要望しました。
NHKの取材に対し、県教育委員会教育政策課は、報告の内容は明らかにできないとしたうえで「ご遺族の要望をしっかりと踏まえて対応していきたい」としています。
また文部科学省は、県教委から訂正の申し入れがあったことを認め「統計の修正については、総務省とも協議する必要があり、現在、対応を検討している」としています。
文部科学省は毎年、小中学校と高校の児童や生徒のいじめや非行、それに自殺や不登校などについて全国の教育委員会を通じて調査を行い、結果を公表しています。
調査では、自殺した児童や生徒が置かれていた状況について「家庭不和」「父母等の叱責」「学業等の不振」「進路問題」「教職員との関係での悩み」「友人関係での悩み」「いじめの問題」「病弱等による悲観」「えん世」「恋愛関係での悩み」「精神障害」「不明」「その他」の13の項目から、当てはまるものをすべて選んで報告するようになっています。
県教育委員会は遺族の意向を踏まえ、この項目に「教師からの体罰・ハラスメント」を新たに加えることを文科省に要望しました。
生徒の父親はNHKの取材に応じ、県教委は当時、家族に詳しい聞き取りをしないまま調査への報告を行ったと指摘しました。
そのうえで「教育委員会は当時の回答について、可能性のあるものにすべてチェックを入れて報告することになっているため、あのような報告をしたと説明しているが、教員が不適切な指導をしていたことを隠したい、別の理由に置き換えたいという意向があったのではないか」と話しています。
そして「まともな調査も行われていないのに報告するということ自体、非常に問題がある。そのような調査や統計では、自殺の防止に役立つものになっていないのではないかと思う。文科省には統計を修正してもらいたいし、教師による体罰やハラスメントがあったことが統計にきちんと表れるように、チェック項目を追加してもらいたい」と話しています。
22年前に中学生だった息子を自殺で亡くし、教員による不適切な指導によって児童や生徒が自殺をする、いわゆる「指導死」の防止や、遺族の支援に取り組んでいる団体「ここから未来」の代表理事の大貫隆志さんは「遺族にとって誤った報告がされるということは、亡くなった子どもをさらに傷つけられるような非常に屈辱的で悲しいことだ。しかし、そういったことが教育委員会などになかなか理解されていない」と話しています。
また児童や生徒の問題行動調査の方法について「学校側が選択項目の中から近いものを選んで報告するようになっているが、学校側の認識が強く反映される仕組みになっている。生徒の自殺のような重大な事案になればなるほど、自分たちの責任を軽くしたいという恣意的な判断が入る可能性もある。また教職員からの体罰やハラスメントという選択項目がないため『指導死』の実態が見えにくく、再発防止に資する調査や統計になっていない」と指摘しています。
そのうえで「第三者委員会がスムーズに立ち上がるようにし、しっかりとした調査と結果の報告が行われる構造にすべきだ」と話しています。
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