11月3日付の労働者党(PT)公式サイトによれば、労働者党は、ブラジルの次期政権移行チームに参加するルーラ陣営側が2023年度の年間予算計画に修正を加えるよう働きかけることを発表した。
ブラジルでは10月30日の大統領選挙の決選投票で、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ元大統領(労働者党)が勝利(2022年11月1日記事参照)した。年間予算計画は選挙前にボルソナーロ現政権によって議会に提出されているが、2023年1月1日のルーラ政権発足までの間、新政権で副大統領に就任予定のジェラルド・アルキミン氏〔ブラジル社会党(PSB)〕(2022年4月18日記事参照)と現政権のシーロ・ノゲイラ官房長官を筆頭に、次期政権と現政権の双方で構成される次期政権移行チームが構成されたため、ルーラ陣営側が同政権移行チームを通じて2023年度の年間予算計画に修正を加えるようとするもの。
ルーラ陣営が新年度の年間予算計画を修正する目的は、同政権が重視する低所得者向け現金給付プログラム「ボルサ・ファミリア」の支給を保証し、1世帯当たり月額600レアル(約1万7,400円、1レアル=約29円)および6歳未満の子供1人当たり150レアルの支給を可能にすることが念頭にある(注1)。現在の新年度の年間予算計画では、支給額は1世帯当たり月額400レアルとなっている。また、次期政権では、2023年中に最低賃金をインフレ上昇率以上に引き上げることを実現することに加えて、所得税率表の変更、統一保健医療システム(SUS)の待機時間短縮、保健省が認可した一部の医薬品を市場価格より大きく割り引かれた金額で購入できる国民薬局プログラムに十分な予算を確保することなども優先事項としている。いずれも、労働者党がルーラ氏の署名とともに10月27日付で公開した「明日のブラジルに向けた手紙」で既に触れられている内容だ。労働者党の11月3日付発表では、燃料価格に対する連邦税の免税(注2)を2023年も維持することについても、優先事項に含めている。
政府予算は歳出の伸び率を前年のインフレ率以下に抑制する歳出上限法の制約を受けるため、次期政権が掲げる優先事項の実現には憲法改正法案(PEC)を承認する必要がある。11月1日付の上院議会公式サイトによれば、2023年度の連邦予算案は12月16日に投票が行われる予定となっている。これにより、アルキミン氏は、ボルサ・ファミリアを2023年1月から600レアルで支給開始するためには、2022年12月15日までにPECが承認される必要がある、と述べている(11月3日付上院公式サイト)。
(注1)11月3日付現地紙「エスタード」によれば、630億~700億レアルの予算が必要になるという。
(注2)2022年3月11日付憲法補完法192号により、2022年12月31日まで社会統合基金(PIS)、社会保険融資負担金(COFINS)が免税となっている。
(古木勇生)
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