【ニューヨーク=斉藤雄太】米証券取引委員会(SEC)は26日、不正会計などで企業が財務諸表を修正する場合に支払い済みの業績連動型の役員報酬を返還させる「クローバック制度」について、証券取引所の上場基準に盛り込む新たな規則を決めた。企業経営者の説明責任を高め、投資家保護につなげる。
新規則では、上場企業が法律に基づく財務報告要件に違反して財務諸表の修正を求められた場合、その時点から過去3年分に遡って現在や当時の役員が受け取った業績連動型の報酬を会社に返還させる。会社側が回収できるのは修正後の業績に照らして過度に支払っていた金額分になる。
上場企業に役員報酬返還に関する方針と、実際にこうした措置が取られた際の具体的な情報開示も求める。同方針を明記した書類を年次報告書に添付したり、年次報告書にチェックボックスを設けて過去の財務諸表の間違いや修正が反映されているかを一目で分かるようにしたりする。
取引所は新規則を踏まえて上場基準を設定し、1年以内に発効となる見通しだ。ルールを順守しない企業は上場廃止の対象になる。
SECのゲンスラー委員長は同日の声明で「これらの規則は企業の財務諸表の透明性と質、財務諸表に対する投資家の信頼、企業経営者の説明責任を強化するものだ」と述べた。
SECは同様の規則を2015年に提案したが、企業経営者や共和党の反対などで導入が遅れていた。21年10月に提案に対する意見公募を再開し、22年6月にも意見を募ったうえでこの日の採択にこぎつけた。
クローバック自体は米欧企業を中心に個別に導入する動きが広がっている。顧客に無断で預金口座を開くなどの不正行為が発覚した米銀大手ウェルズ・ファーゴでは元最高経営責任者(CEO)らが株式報酬の返上を迫られた。
今回のSECの措置ではすべての上場企業が対象になるため、米上場の海外企業も含めてより広範囲に影響が及ぶことになる。
SECは同日、投資信託や上場投資信託(ETF)の運用会社に対し、運用状況や経費などの重要情報を投資家に簡潔にわかりやすく伝える報告書の提供を義務付けた。運用会社の広告における手数料や費用の説明に関して、透明性が高くバランスの取れた提示の仕方も求めた。個人投資家の保護が狙いで、原則1年半の移行期間を経て適用となる。
からの記事と詳細 ( 会計修正時の役員報酬返還、米上場基準に SECが新規則(写真=ロイター) - 日本経済新聞 )
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