古書の世界は、「著者の人気」「初版」「誤植」が価値を高めるという。そんな三つの要素を満たす一冊が、中国・上海の巨大図書館に所蔵されている。
「共
初めて中国語に全訳し、同国で書籍化された初版。よりにもよって原作者カール・マルクスの肖像が載った表紙のタイトルで、「産」と「党」の順序を逆に表記した。翌月、第2版を出し「共産党」と修正する。1920年8月。中国共産党の結成前年の逸話である。
1000部刷られた初版は、日本や国民党との戦禍、文化大革命など激動の1世紀を経て12部が現存する。その価値を国宝級に高めたのは誤植や希少性だけが理由ではない。建国の父、毛沢東は自身の思想に影響を与えた3冊の中に、この初版本を挙げたと伝わる。同図書館はHP上で「党の創立とマルクス主義の普及に積極的かつ多大な影響を及ぼした」と解説している。
世紀の誤植に至る過程で、実は日本が小さくない役割を果たす。初版を訳した言語学者の陳望道は15~19年に日本へ留学し、大逆事件で処刑された幸徳秋水らが日本語に翻訳した「共産党宣言」に出会う。帰国の翌年、この日本語版を主たる“底本”にして中国語版を完成する。陳が用いた主要な単語の多くは幸徳版と一致しているという。
2000年を超える日中交流の歴史で、日本の漢字
同様に、マルクス主義や民主主義といった思想、技術や文化も、清朝末期頃、陳のような数万人の日本への留学生を通じて中国に広がる。東北大の大村泉名誉教授(マルクス経済学)は、「明治維新後、アジアでいち早く近代化した日本は、とりわけ漢字文化を共有する中国に対し、西洋との媒介役になった」と評する。
だが、中国ではそうした歴史はあまり積極的に
日本は、マルクスのもう一つの代表作「資本論」とも縁が深い。その初版は「共産党宣言」誕生の19年後、マルクスの母国ドイツで1000部発行された。世界で現存する100部前後のうち半数は日本にある。第1次大戦後、マルクスブームに沸く日本の経済学者や思想家らは、ハイパーインフレ下の敗戦国ドイツに渡り、格安で買い集めたという。
それから1世紀、世界の古書市場で「資本論」が高騰している。初版の取引価格は、1989年の約900万円から2016年には最高で2億円前後に跳ね上がった。ソ連が崩壊し、万国の労働者たちのマルクス離れが進んだ今、中国がほぼ唯一の買い手となる。大学や研究機関、富豪らがその中心で、現在、同国で10部超が保有されている。
中国マネーの力に加え、生誕200年にあたる18年は当地でマルクスブームが起きた。「
からの記事と詳細 ( 誤植から始まった中国の「マルクス熱」…古書の世界でも「爆買い」 - 読売新聞オンライン )
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