2022年05月06日15時31分
【モスクワAFP=時事】ロシア正教会の最高指導者キリル総主教は、ウラジーミル・プーチン大統領の統治を「奇跡」とたたえるほどの熱烈な信奉者だ。ウクライナ侵攻をめぐり、欧州連合(EU)の制裁対象にも名前が挙がっている。(写真はキリル総主教)
75歳の総主教は、プーチン氏の政治機構において重要な柱となっている。保守的な宗教的価値観を推進し、反対派の抗議運動を糾弾することでクレムリン(ロシア大統領府)の権威主義的傾向を強めてきた。
最近ではウクライナでの軍事作戦を支持し、「国内外の敵」と戦うため結集するよう信者に呼び掛けている。
2月にはロシアとウクライナの歴史的な「一体性」に反対する「悪の勢力」との戦いについて語り、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇から叱責された。3月にキリル総主教とオンライン会談を行った教皇は、宗教指導者は「政治の言葉ではなく、主イエスの言葉を使わなければならない」と諭した。
教皇はその後、6月に中東エルサレムで予定していたキリル総主教との会談が白紙撤回されたことを明らかにした。
キリル総主教のプーチン氏への支持は、2009年にモスクワ総主教に就任して以来、揺るぎない。2012年には、プーチン氏の統治こそソビエト連邦崩壊後の経済的混乱に終止符を打った「神の奇跡」だと評し、「ウラジーミル・ウラジーミロビチよ。あなたは、わが国の歴史のねじれを修正するため自ら大きな役割を果たした」と称賛した。
■テレビ司会者として有名に
キリル総主教は、プーチン氏や支配エリート層の複数の有力人物と同じく、かつての帝都サンクトペテルブルクの出身だ。
司祭だった祖父は、旧ソ連の独裁者ヨシフ・スターリンの統治下で強制労働収容所に送られ、30年間を過ごした。
1946年生まれのキリル総主教は対照的に、教会でスピード出世を果たした。渉外部長を務めた後、テレビで宗教思想をテーマにした冠番組を持つに至った。1億1000万人超の信者を抱えるロシア正教会の最高指導者に就任した時は、すでに誰もが知る有名人になっていた。
テレビでは、旧ソ連が国是とした無神論によって活気を失った教会のイメージを一新し、学校や軍隊といった国家機関で教会の存在感を高めるという壮大な計画を提唱。総主教として、その構想を実現させた。
キリル総主教は、ロシア正教会の価値観を日常生活に根付かせた。2020年に成立した新憲法に神への言及が盛り込まれたのは、その極致だ。この憲法は、プーチン氏に2036年まで権力の座にとどまることを認めている。
総主教はロシアで高まる保守主義の代表的な擁護者で、同性婚を非難し、同性愛は罪だと宣言している。総主教の下、ロシア正教会は宗教的少数派に対する取り締まりを歓迎している。
■KGBとつながり?
キリル総主教が首座を務める救世主ハリストス大聖堂は、クレムリンの赤い壁に隣接し、首都モスクワの中心に教会と国家権力の枢軸を形成する。
華やかな聖画像で彩られ、黄金のドームを頂く大聖堂で、総主教は定期的にプーチン氏とロシア政界エリートが出席する豪華な国家行事を執り行っている。
キリル総主教をめぐっては長年、プーチン氏も所属していた旧ソ連の国家保安委員会(KGB)とのつながりがささやかれている。
ぜいたくな暮らしぶりも疑惑を呼んでいる。ロシアのブロガーは2012年、キリル総主教の写真から3万ドル(約390万円)以上する腕時計の存在が画像修正で消されており、テーブルに写り込んだ影でそれが確認できると指摘した。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕
からの記事と詳細 ( クレムリンに忠誠、ロシア正教会のキリル総主教:時事ドットコム - 時事通信ニュース )
https://ift.tt/XUYWtxw
No comments:
Post a Comment