印象に残っている「子どもたちの質問と先生のお答え」をもう一度お聞きいただく、「もう一度聞きたいあのやりとり」。うめだひろとくん(当時4歳・福岡県)からの質問に、「水の中の生物」の林公義先生が答えた2018年7月26日の放送を聞いて、ひろとくんと再び電話をつなぎます。(司会・石井かおるアナウンサー)
【出演者】
林先生:林公義先生(北里大学海洋生命科学部 講師)
ひろとくん:質問者
ダイオウイカを釣ってみたい!
(2018年7月26日放送 司会・藤井彩子アナウンサー)
――もしもし。
ひろとくん: | もしもし。 |
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――お名前を教えてください。
ひろとくん: | ひろとです。4歳です。 |
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――ひろとくんが聞きたいことは、どんなことかな?
ひろとくん: | ダイオウイカはなぜ目が大きくて、どうやって釣れるんですか? |
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――ダイオウイカね。どうして目が大きいのか、っていうことが1つと、それからもう1個は何?
ひろとくん: | ダイオウイカはどうやって釣れるんですか? |
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――どうやって釣るかね。
ひろとくん: | はい。 |
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――ひろとくんは、釣りはするの?
ひろとくん: | はい。 |
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――釣り、するのかぁ。そうか。今までどんな魚を釣ったか、覚えてる?
ひろとくん: | でっかい魚! |
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――でっかい魚、釣ったんだね。じゃあ先生に聞いてみよう。林公義先生です。
林先生: | はい。ひろとくん、おはようございます。 |
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ひろとくん: | おはようございます。 |
林先生: | ひろとくんは今、4歳でしょう? |
ひろとくん: | はい。 |
林先生: | 身長どのくらいあるのかな。1メートルあるかな。ちょっとないかな。あのね……釣るのは、あきらめたほうがいいと思います。ダイオウイカは、すんでいるところを調べてみるとね、深い海、深海っていってね、海の中の深さが300メートルから650メートルぐらいまで、もっとそれより深いところからとれているということがわかるんだけれども、そんな深いところまで、ひろとくんが釣り糸を垂れること自体が難しくて、できないと思うよ。
それで、目の大きさがね、大きいっていうのは、ひろとくん、知ってるんだね。 |
ひろとくん: | はい。 |
林先生: | 今言ったように、ダイオウイカというのは深海にすんでいるから、深海って光があんまり届かないところだよね。真っ暗な世界でしょう? そういうところでも、わずかな光を、深海にすんでいる生物は上手に使って、ものを見ることができるらしい。そういう能力はある。
中でもダイオウイカの目が大きいということは、目が大きければ、それだけよけい光を集めたり、ものを見ることができる。そういう力が強いわけね。だから目玉が大きい。だいたい、ひろとくんが食べるカレーライスのお皿ぐらいあるんだよ。30センチぐらい。すごい大きな目。だからそれは少ない光を集めながら、周りにある自分のえさとなるものだとか、そういうものをできるだけ見られるような努力をしているんだろうと思うんだよね、そういう大きな目で。 それでさ、ダイオウイカって、大きさどのぐらいあるか知ってるよね。 |
ひろとくん: | 18メートル。 |
林先生: | よく知ってる! 一番大きいので18メートルって言われてるんだよね。日本でとれてるやつが、だいたい胴の長さと腕の長さを全部入れると、6.5メートル。小さいやつでも6.5メートル。それ以上あると言うんだよね。
だけど今までいろいろダイオウイカというのは、死んだ状態とか、またはもう死ぬ直前、ヒクヒクしている状態なんだけども、そういう状態で、冬に海岸に打ち上げられることがすごく多いみたいなんです。えっとね、もう40年間ぐらいの記録をとると、だいたい冬に海岸に打ち上がることが多いそうです。だから釣るのはもうあきらめて、冬になったら海岸線に行って、打ち上がったダイオウイカを見つけるほうが確率が高いかもしれないな。 |
ひろとくん: | ……はい。 |
――今まで釣ったことがある人は、たぶんいないですよね。
林先生: | 調査の目的で、釣るっていうか、ハエナワみたいなものを深海に流して、それでダイオウイカがかかったという、そういう記録はあります。だけど、ダイオウイカをとろうとして、いわゆる釣りだとかね、ハエナワだとかということでやる漁みたいなものはないので、もしやるんだとしたら、相当準備が必要になるかもしれないよ。ひろとくん1人じゃ絶対無理だからね。お父さんか誰かに手伝ってもらわないと。 |
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ひろとくん: | はい。 |
――ひろとくん、どうかな。ちょっと難しいみたいなんだよね。
ひろとくん: | うん。 |
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林先生: | でさ、ひろとくん、もし釣るとしたら、ダイオウイカ、えさに何使う? |
ひろとくん: | イカ。ダイオウイカはイカ、食べる。 |
林先生: | そうだ、そうなんだよ。ダイオウイカね、けっこうイカ好きなんだよ。スルメイカみたいなイカだとか、アカイカとかね。もちろん魚も食べるんだけど、イカが大好きなんだって。だから、正解! すごいな、もうそこまで準備できてるんだ。じゃあもうちょっと、ひろとくんが大きくなったときに、チャレンジしてみてください。 |
ひろとくん: | はい。 |
――ひろとくん、いいかな。大丈夫かな。もうちょっと、何か聞きたい?
ひろとくん: | あと、トライトンに乗りたいです。 |
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――ん?
ひろとくん: | トライトンに乗りたいです。 |
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林先生: | トライトン? |
――トライトンって、何?
ひろとくん: | 潜水艦です。 |
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林先生: | ああ、そうか! |
――じゃあ、深海を調べる人になりたいのね。
ひろとくん: | はい。 |
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――そうしたら将来、もしかしたら捕獲することができるかもしれませんね。
林先生: | 自分の目で見ながら、確認しながらね。トライトンというか、潜水艇に乗って自分で見ながら捕獲するということは、夢じゃないかもしれないぞ。がんばって! |
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――ひろとくん、がんばって。深海のこととっても詳しいから大丈夫だよ、きっと。
林先生: | 海洋生物学者を目指してください。 |
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ひろとくん: | はい。ありがとうございました。 |
――ありがとうございました。さよなら~。
林先生: | さよなら~。 |
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ひろとくん: | さよなら~。 |
3年たっても、釣ってみたい!
――「ダイオウイカを釣ってみたい」と言っていた福岡県のうめだひろとくん。当時4歳でしたけれど、林先生の質問にしっかり答えていましたね。
林先生: | そうですね。4歳であれだけいろいろ知ってる、その量もそうなんですけど、もう、ダイオウイカ大好き少年っていうふうな感じでしたよね。 |
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――ひろとくん、あれから3年余りたって、今どのようにしているのか。林先生と一緒に聞いてみます。もしもし、ひろとくんですか?
ひろとくん: | はい。 |
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――こんにちはー。
ひろとくん: | こんにちはー。 |
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――3年前の放送を聞いてもらったと思うんですけれど、どんな感じでしたか、自分の声聞いて。
ひろとくん: | まだめっちゃ、ちっちゃかった。 |
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林先生: | ははは。 |
――ふふふ。今、何年生になりましたか?
ひろとくん: | 2年生です。 |
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――あのあともいろいろ調べましたか?
ひろとくん: | はい。 |
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――じゃあ、今も興味を持っているんですね。
ひろとくん: | はい。 |
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――林先生、ひろとくんの興味は続いているようですよ。尽きてないみたいです。
林先生: | そうですねえ。ひろとくん、ダイオウイカ、まだ釣ってみたいと思ってる? |
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ひろとくん: | はい! |
林先生: | そっか。ひろとくんとダイオウイカのお話をしてから、ずいぶんいろんな、日本国内でもダイオウイカがまたたくさん打ち上がったりしている記録があるんですね。でも、ひろとくんが希望しているような、釣りでもってダイオウイカを釣ったっていう人は、まだ今のところそういう報告はないから、やっぱりダイオウイカっていうのは、ひろとくんが言ったように、トライトンだとかそういう潜水艇に乗っていって、深海で実際に目で見ることのほうが、確率が高いかもしれないね。 |
ひろとくん: | はい。 |
林先生: | あのあと、実はいいニュースが1つあるんです。林のおじさんはどこに住んでるかっていうと、神奈川県の横須賀市っていうところなんですけど、そこに小さな漁港があるんですけどね、大津漁港っていう。そこでダイオウイカが上がったんです。それがね、日本でとれたダイオウイカの中では一番小さいダイオウイカだったの。 |
――それはどういう状態でとれたんですか?
林先生: | もうやっぱりヘロヘロの状態で打ち上がってきたのね。しかもわりと小型で、1メートルちょっとだったんです。全長で1メートルちょっとっていうのは、日本で打ち上がったダイオウイカとして最小なの。いわば赤ちゃんだったの。これもね、すごい記録だったの。
そのダイオウイカの標本が、横須賀のある博物館に移ったんです。それがね、僕が住んでいる家のすぐそばの博物館なの。だからもし、日本一小さい、ひょっとすると世界でもこれだけ小さいのはいまだに記録がないのかもしれない。またちょっとそれは調べてみますけれども、もしできたら、それを一度ぜひ見に来てください。 |
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ひろとくん: | はい、見に行きたいです! |
林先生: | うん、そうだね。まだイカやタコのこと、好きなのかな? |
ひろとくん: | はい。 |
林先生: | ああ。やっぱり海洋生物学者にならないとダメだな(笑)。 |
――ひろとくんはイカやタコのどういうところが好きなんですか?
ひろとくん: | おっきいとことか、なんか不気味なとことか、かわいいとことか……。 |
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林先生: | ああ、そうだよねえ。イカやタコの目って、本当に人間の目によく似ててクリクリッとしてて、視力もすごくいいんだよね。ダイオウイカの目が大きいのは特別なんだけれども、よーく見てると、タコの目っていうのはね、ひょっとすると人間の目よりも優れているんじゃないかっていう話もあるくらい、非常にいい目を持っていますよね。そういうところに確かに魅力を感じるよね。 |
ひろとくん: | はい。あとなんで、タコの目は横に伸びてるんですか? |
林先生: | タコの目が横に伸びてる? |
ひろとくん: | はい。 |
林先生: | あっ、あれね。実は調整できるんですよ、大きく広げたり小さくしたり。ふだんはちょっと目の大きさを小さくしてるから、ちょっと横開きになってますけどね。かなり目がいいんですよ。 |
ひろとくん: | はい。 |
――そういうふうにひろとくんが「なんでなんだろう?」って思うことがすごく大事だし、次のことを知るきっかけになりますね。
林先生: | そうなんですよ。それでひろとくんが解答を見つけて自分でわかったら、お友達にもぜひ紹介してあげてください。 |
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ひろとくん: | はい。 |
――いいですか。きょうはどうもありがとうございました。
ひろとくん: | ありがとうございました。 |
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林先生: | はーい。元気で! |
――さよなら~。
林先生: | さよなら~。 |
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ひろとくん: | さよなら~。 |
――うめだひろとくん、現在は小学2年生になっていました。本当に今もタコやイカに興味を持っていて。
林先生: | そうですね。ああいう生きものを、とってもかわいいっていう感じを自分でお持ちだから、そこからいろんな興味がわいてくるんでしょうね。タコの目のことを急に質問されてびっくりしたんだけど、イカからタコに移ってしまったかな、と思ってね。
タコの目って本当に立派で、私たち人間は逆立ちして世界を見ると像が逆さまになるでしょう? タコのあの細長い目っていうのは、自分の頭をどう位置を変えても、像は普通にちゃんと見えてるんですよ。逆さまになったりすることはない。そういう特殊な目なんですね。陸上では、調べてみたらヤギの目も横長なんですね。あれは草食動物だから、広い世界を見るために。逆に肉食のネコ科の動物なんかは、目が近い。獲物を、焦点を絞ってとるという。目の機能の使い方っていうのは、そういうふうにそれぞれ進化したようですね。 タコの目に興味を持ったっていうのは、ますますひろとくんの研究の方向が、少し上向きになってますね。 |
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――楽しみですね。先生のお話の中にあったダイオウイカの標本というのは?
林先生: | 横須賀市にあります観音崎自然博物館、そこに、京急油壺マリンパークというところにあった、大型のダイオウイカのはく製というか模型と、この1.2メートルの一番小さなダイオウイカの実物標本が移りました。早ければ今月(10月)終わりごろに皆さんに展示紹介できるというようなお話を、学芸員さんから聞いています。この番組を聞いていて関心のあるお子さんがいらしたら、ぜひ来てください。 |
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【放送】
2021/10/24 子ども科学電話相談 「水の中の生物」 林公義先生(北里大学海洋生命科学部 講師)
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