今年のF1第12戦ベルギーGPは、悪天候によりレーシングスピードで1周も走行しないまま終了。F1が持つ71年の歴史の中で、初めてのケースとなった。
今回のグランプリが異例の事態、そして危険なコンディションでの走行となったこともあり、トリッキーなコンディションでレースをしていた過去のドライバーたちや、危険なコンディションでレースをしてきたことの是非についても、議論の的となっている。
スターリング・モスらが活躍していた1950年代のF1をはじめとして、モータースポーツにはある程度危険な要素が含まれているべきだという主張も存在してきた。これについて聞かれたダニエル・リカルド(マクラーレン)は、「時代は変わったんだ」と答えた。
「考え方が変わってきたのは確かだね。当然僕はそんな時代は経験していないけど、当時このスポーツでは死亡事故が当たり前のように起きていた」
「受け入れるのは大変だったと思うけど、それが普通だったからこそ、ある程度予期できたのかもしれない」
「今僕たちが知っていること、少なくとも僕が知っていることを踏まえたとしたら、60年代でレースをしていただろうか。今の僕の知識があったら、それはできない」
「結局のところ、これはスポーツなんだ。リスクは好きだけど、それが生死に関わる問題なのだとしたら、それは何の価値もないと思う」
ベルギーGPの予選では、リカルドのチームメイトであるランド・ノリスが、ウエットコンディションでクラッシュしているが、リカルドはこの事故が依然としてドライバーがリスクを冒していることを示しており、大事故が起きる可能性があることを証明していると指摘した。
「ランドのクラッシュを見れば、まだ大きなクラッシュが起きうることを証明したと思う」
「あの時のコンディションはOKだった。OKとは言ってもギリギリだったけど、グリーンライトが灯るのに問題はなかった」
「僕たちは今でも危険なスポーツをしていて、ギリギリのところで戦っているんだ。危険なこともあれば、不必要にヘリコプターで搬送するという極端なこともあるけどね」
リカルドは、ベルギーGPの決勝はコンディションがあまりにも悪く、コース上に留まる上でドライバーの技量はほとんど関係なかったと語った。
「賢くみせようとしているわけではなくて、僕としてはおそらく最も簡単な方法でメッセージを伝えようと思う。それは物理なんだ」
「単純な物理学の話だけど、クルマは路面にくっついて留まることはできない。視界が5%の場合はもちろん、100%の時でもそうなんだから、もはや技術の問題じゃない。文字通りクルマが路面に食いつかないというしきい値に達してしまったんだ」
もしベルギーGPで給料が支払われなかったとしても、レーシングドライバーとしての仕事をこなしていたかと訊かれると、リカルドは次のように答えた。
「こんな日も? そうだね……僕の年齢もあるかもしれないけど、答えはイエスだ。そしてその答えが”ノー”の日は、レースをやめなければいけない日だと思っている」
「子供の頃は、テレビに出るため、お金をもらうためにレースをしていたんじゃない。レースが好きだったからだ」
「お金や名声といったものが勝ってしまった時は、間違いなく『もうこの仕事はやめよう』と判断する自覚を僕は持っている」
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