(15日 高校野球兵庫大会 葺合0-4神戸学院大付)
3点を追う六回表。1死一、二塁で葺合の主将、福良遼真君(3年)が打席に立った。「遼真、初球からー」。ベンチから声が響くと、笑顔で応じた。
思い切って振ろうと決めていた。2球目の直球。でも打球は遊撃手に捕球され、二塁から一塁に送られて併殺に。「くそー」と叫んだが、すがすがしい笑顔だった。
高校最後の夏。グラウンドに立てていることがうれしかった。
中学時代は腰をけがし、最後の夏の試合に出られなかった。高校1年の11月、練習試合で代打で出場できた時は、安打こそ出なかったが、やっと打席に立てた喜びをかみしめた。
新チームになると、リーダーシップを買われたのか主将に就いた。それなのに、自分の納得のいくプレーはやっぱり付いてこなかった。「口で言っているだけの主将になっていないか」。不安だった。
そんな時、祖母の糸井やす子さん(72)からLINE(ライン)が届いた。
《いろいろ大変そうだね。ばあちゃんは、遼真がバッターボックスに立ちバット振る守備をするその姿を見るだけで涙がでます、ここまでよく頑張ったね、ファイト~》
心に刺さった。
やす子さんは、野球を始めた小学2年の頃から必ず応援に駆けつけてくれる。「どうか焦らないで、好きな野球を頑張って欲しい」。そんな思いを込め、慣れないスマホを操作しながら時間をかけて送ってくれたメッセージだった。
心配をかけたくなくて、悩みを打ち明けたことはなかったのに。不安な気持ちはお見通しだった。結果を残せない焦り、申し訳なさがスッと消えた。
このLINEメッセージは「お守り」になった。「あかんわ」と弱気になる度に読み返すと、元気になれる。
この試合の前夜も、メッセージを見返した。15日は、やす子さんの誕生日。「ばあちゃんのためにも、頑張ろうって思えた」
この日は快音はなく、チームも敗れた。それでも「いい姿は見せられたかな」と福良君。
やす子さんにも思いは届いた。「野球をやっている姿を見られただけでうれしい」。声を震わせながらグラウンドを見つめ、誰よりも長く試合後の選手たちに拍手を送っていた。(西田有里)
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