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【日曜東京１１Ｒ・日本ダービー】
新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした３度目の緊急事態宣言の再延長が決まった。６月２０日まで。長い。飲食店の酒類提供はなしのままで、営業時間も午後８時までは変わらない。「我慢も限界」と酒を提供したり８時以降も営業を続けたりする店が増えてきても不思議はない。
だが、ひいきの居酒屋はこれまで同様、夜の営業は行わずランチのみ。さらに「居酒屋行けないブルース」が続くわけだ。はあ…。
でも大丈夫。今週も休みの日に遅いランチを食べに行き、バイトの桃ちゃんの予想を聞いてきた。それでは「居酒屋ブルース ランチ編」をどうぞ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ひいきの居酒屋のカウンター席でランチを食べ終えて一息ついていると、賄いを乗せたトレーを持った桃ちゃんがカウンター席に座った。もちろん、ソーシャルディスタンスを保つ２メートル以上の間隔をあけている。
「アカイトリノムスメが…！」
先週と話の導入が同じようだけど、「！」だったのが「…！」になったね。アカイトリノムスメは２着だったので、残念な思いを「…」で、馬券を当てた喜びを「！」で表現しているってこと？
「ご明察。そんな私に引き換え、鈴木さんは◎のユーバーレーベンが１着で○のアカイトリノムスメが２着。おめでとうございます」
ありがとう。
「サイトの『サンスポＺＢＡＴ！競馬』にアップされていた的中告知、見ましたよ。〈３連単でズバッと決めた先週のヴィクトリアマイルの的中告知で『牝馬のＧＩは鈴木学部長にお任せ！？ 次週のオークスもバッチリ決めてくださいね』と書いた通りの結果になりました。【居酒屋ブルース】は桜花賞、ヴィクトリアマイル、オークスすべてプラス収支で、春の牝馬ＧＩ完全制覇です。思いのこもった◎⑨ユーバーレーベンの《単勝》は８．９倍、○⑦アカイトリノムスメへの《馬単》は４６．９倍つきました。払い戻し総額は６万９８７０円。この勢いで日本ダービーも！ 欲張りすぎでしょうか？〉ってありました。欲張りましょう」
そうだね。
「しかも、今週の水曜日に発表された『ガチンコ収支バトル』の２０２１年第２ステージ（４～６月）の第８週（５月２２、２３日）を見てびっくり。なんと鈴木さんが７位にランクイン！ 『ランキング発表！ 牝馬ＧＩ連勝の居酒屋ブルースがベスト１０入り』と見出しにもその名前がありました！ 〈ＧＩ連勝を決めた『居酒屋ブルース』の鈴木学部長は７位にランクアップ。オークスは、思いのこもった◎ユーバーレーベンの単勝＆馬単で６万９８７０円を獲得しました。桜花賞、ヴィクトリアマイル、そしてオークスと、一時は鬼門といわれた牝馬ＧＩを完全的中です。今週末の日本ダービー、次週の安田記念も遠慮しないでやっちゃってください。〉だって。それにしても春の牝馬ＧＩ完全制覇だなんて」
だなんて？
「死期が近いのかもしれませんね」
先週に続いて不吉なことを言わないでよ。めったにないと悦に入っているのに。
しかも、馬友からもお祝い込みの長文メールが届いて気分がいいんだから。桃ちゃんも馬友のオークス観戦記を読んでよ。
「オークス観戦記って、東京競馬場で見た人がいるんですか？」
うん。
「うらやましすぎます」
本人も「奇跡的に当たった」って喜んでいたよ。はい、これ。
〈まずは牝馬ＧＩ全的中おめでとうございます。さすがに女心を読み解く天才ですね！〉
冒頭を読んだだけで笑いすぎだよ、桃ちゃん。
「だって女心なんて絶対分からないのに」
はいはい。続きを読んで。
〈昨年のジャパンカップ以来の東京競馬場。りりしい牝馬たちの祭典にふさわしく空は澄み渡り、爽やかな風が吹いていました。
指定席購入が１人２枚まで可能になったためか、子供連れやカップルなどペア行動が見受けられ、いつもの競馬場に一歩近づいた気がしました。
今日はパドックより先に、鞍を装着する前の馬の様子を見みようと決めていました。
装鞍所では裸馬たちがゆっくりと大きな木のまわりをリラックスして周回していました。木々の葉の緑と褐色の馬体が陽に映えて皆とても美しかったです。その中でもソダシだけが、真っ白な馬体でひと際神々しく輝いていました。きれいに整えられたたてがみや尻尾が風にたなびくさまは、あまりにも美しく、薬師寺東塔水煙の飛天のようでした。神馬の多くが白馬であるゆえんここに見たり。
その後パドックに入場してきた乙女たちは、皆一段と美しく輝き、世代トップクラスのりんとしたたたずまいを醸し出していました。どの馬も本当に素晴らしく、もう誰が勝ってもおかしくないと思いました。
誘導馬に導かれ、返し馬が始まり、スターターの合図でＧＩファンファーレが始まる頃には緊張はマックス、瞳の貯水量も決壊寸前。今この場所にいられる幸運に感謝しつつ、これからはじまる２４００メートルの過酷な戦いを全頭無事に終えることができるようただただ祈っていました。
結果、白毛馬２冠はかなわず、ユーバーレーベンの勝利となりました。
ミルコの魂のこもった騎乗に応えて、過酷なレースを走り切ったユーバーレーベンの頑張り、根性に感謝です。
レース後ホースプレビューで、鞍を外したユーバーレーベンのおなか全体が激しく動いているのを見て驚きました。激しい心臓の鼓動が遠目でも鮮明に確認できるような状態まで頑張って走ったことに、胸が締めつけられる思いでした。
ユーバーレーベンとはドイツ語で「生き残る」という意味。
この勝利は、さまざまな人々、馬たち、思いが「生き残る」ことを可能にした貴重な１勝です。ウイニングランでミルコが空を見上げ、指をたて腕を天高くのばしたのは、天国の岡田さんとハイタッチをしているのだろうと思い涙がとまりませんでした。
岡田さんの笑顔と「ありがとね」という声が聞こえてきたように感じました。岡田さんがきっと見守ってくれていたのでしょう。
バラが咲き誇るこの東京競馬場で５月に岡田さんゆかりの血統の結晶であるユーバーレーベンが勝利したことで、岡田さんの馬や人に対する熱い情熱は「生き残り」、馬やそこに携わる人々に受け継がれていくことでしょう。ありがとう、ユーバーレーベン、岡田さん！〉
「いい話ですね」
ミチヤもそう思うだろ。
「はい。岡田さんとユーバーレーベンの話に興味を抱き、この馬の単勝と複勝を買ってもらった私としては感動以外のなにものでもありません」
そうだった。払戻金を渡すのを忘れてたよ。はい５７００円。おめでとう。
「ありがとうございます。これで日本ダービーの資金ができました」
買うんだ。
「ダービーは競馬の祭典と聞いているので、ここは少しでも買うつもりでいました。これから鈴木さんと桃の予想次第では１０００円より多く買うかもしれません」
「あっ！」
桃ちゃん、なに？
「ＬＩＮＥの人はどうだったんです？ 鈴木さんが◎○で当てたけど、３着は印ヌケの１６番人気ハギノピリナが来たから余計に気になります」
馬券を当てたって。
「３連単を？」
うん。
「すごすぎです。だって、オークスの３連単って５３万円超えでしたよ」
僕も驚いた。
「やりました！」
「師匠のおかげ！」
「次回ごちそうします！」
というのが立て続けに届いた。「ハギノピリナが入っているのがすごすぎです。理由を教えてください」って返事したら
「理由はなくて、マジに勘とか言いようがないんです。オカルト」
「師匠の◎○を軸にオカルトふりかけただけなんです、全て師匠のおかげなんす！ありがたや！」
「今年はもちろん黒字になりました！」
最後に来たＬＩＮＥが一番うれしかったよ。「黒字！ その言葉を待ってました」と送ったら「師匠とゴルシ愛の賜物です」だって。
「ゴルシ愛が加わった（笑）」
そうなんだ。ＹｏｕＴｕｂｅでゴールドシップのレースなどの動画を見まくっているらしいよ。強いのに気分屋で型にはまらないゴルシの魅力にはまったみたい。スマホゲームの「ウマ娘 プリティーダービー」でゴルシが人気なのもわかるよ。
「そういえば、ゴールドシップの娘が、ゴールドシップのいた須貝厩舎のソダシを負かしてオークス馬になったというのもドラマですね」
確かに。
「あっ！」
どうしたの？
「ダービーの予想に入っていないのに、４００字詰め原稿用紙で１１枚目に突入しちゃいました」
ダービー特別版ということで我慢してもらうにもほどがあるね。早速、ダービーの予想に入ろう。桃ちゃんの本命は？
「サトノレイナスです」
女性だけに牝馬か。ウオッカのときも予想している女性のほとんどがウオッカを本命にして当てていたよ。
「それだけが理由じゃありません。強いからです。オークスに出ていたら勝っていたと思います。ソダシより２４００メートルの距離適性もあるし、脚質も直線の長い東京コース向き。桜花賞２着からの参戦というのもウオッカと同じなので、歴史は繰り返されるかな、と。ルメールさんはオークスは勝てませんでしたが、それでも２着。ＮＨＫマイルＣ１着、ヴィクトリアマイル１着、オークス２着と“確変中”に変わりはありません。牡馬より負担重量が２キロ軽いのもプラス。なんといっても、今の競馬の世界は牝馬優勢ですから。レイナスちゃんが、同じ国枝厩舎にいたアーモンドアイさまにかわるスーパー牝馬の代表になってくれるはずです」
ありがとう。
「鈴木さんの本命は？」
エフフォーリア。
「ですよね。以前披露した『一人２０２１年春クラシック大予想』でダービー馬に指名してましたもん」
うん。皐月賞はクラシック大予想で皐月賞馬に指名したランドオブリバティが出走しなかったので本命にしたら、しっかり勝ってくれたしね。印も◎△で的中。
「でも馬券は外れ。鈴木さんらしい」
笑いすぎだよ（苦笑）。
「本命の理由を聞くまでもないですが、一応…」
一応って（苦笑）。無敗の皐月賞馬が順調にダービーを迎えられるだけでも本命に値するのに、さらに過去１０年で２勝を挙げて、２着２回、３着１回の１枠１番を引いたのだから、もはや鉄板級だ。前めに行ける馬だから最内枠は問題ないだろう。
間違いなく１番人気になるね。皐月賞馬がダービーで１番人気になったのは過去１０年で６頭いて【３・１・１・１】（左から１着・２着・３着・４着以下）。
４着以下に敗れたのはサートゥルナーリアのみ。あのときは「乗り替わりは勝てない」というジンクス通りになった。２着か３着に来てほしかったけど…。
３着だったディーマジェスティは中間に発熱するというアクシデントがあった。
２着だったイスラボニータは、フジキセキの産駒で古馬になってから活躍した距離を見ると２４００メートルは長かったようだ。
エフフォーリアは横山武史がデビューからずっと手綱を取っているから大丈夫。中間に発熱したという話も聞かない。エフフォーリアの父は菊花賞とジャパンＣを制したエピファネイア。父はダービーでキズナの鬼脚に屈して２着に敗れたけど、２４００メートルはどんと来いという血統だ。
それだけに無敗の２冠馬になってもなんら不思議のない馬といえる。
◎①エフフォーリア
○⑯サトノレイナス
△②ヴィクティファルス
△④レッドジェネシス
△⑥バジオウ
△⑧ヨーホーレイク
△⑩シャフリヤール
△⑫ワンダフルタウン
△⑬グレートマジシャン
△⑭タイトルホルダー
《３連単》
①⑯→①②④⑩⑫⑭⑯→①②④⑥⑧⑩⑫⑬⑭⑯（９６点） 各１００円
①→⑯→②④⑥⑭（４点） 各１００円
ミチヤはどんな馬券を買うの？
「では、エフフォーリアの単勝１０００円とサトノレイナスの単勝５００円を。はい１５００円」
了解。
「今週も鈴木さんの予想と馬券が当たることを願っています」
ありがとう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
主な登場人物
ミチヤ…ひいきの居酒屋の店主。ずぶの素人から、どこまで競馬に興味を持ってくれるか
桃ちゃん…ひいきの居酒屋のアルバイト。馬券のセンスが抜群の競馬女子（ＵＭＡＪＯ）。ちなみに、居酒屋ブルースのＵＭＡＪＯは、酒場のあすピー→バイトのマヤ姉（ねえ）→桃ちゃんと変遷
ＬＩＮＥの人…謎の人物
カズマサ…夢の中の（？）ひいきの居酒屋の店主。馬券はデータ派。この居酒屋ブルースの世界から去っていった
琢磨…夢の中の（？）ひいきの居酒屋のスタッフ。好不調の波はあるが、馬券が当たると好調が続く。カズマサ同様、この居酒屋ブルースの世界から去っていった
もりやさん…夢の中の（？）ひいきの居酒屋の常連客。競馬とお酒が大好き。カズマサ、琢磨と一緒にこの居酒屋ブルースの世界から去っていった
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