夫婦が希望すればそれぞれが結婚前の名字を名乗ることができる「選択的夫婦別姓」についての議論が国や地方で活発化しています。
夫婦の名字は同じであるべきなのでしょうか。「事実婚」を選んだ岡山市の家族を取材しました。
岡山市在住で大学教員として働く中谷文美さん(58)。夫(59)と息子(23)は、中谷さんとは違う名字を名乗っています。
(中谷文美さん)
「夫婦のどちらかが相手の姓を選ばなければいけないことに漠然とした抵抗感があった」
中谷さんは元々、別姓での法律婚が可能なイギリスで婚姻届を提出していました。
日本でも別姓での法律婚が可能になったタイミングで婚姻届を提出したいと考えていたそうですが、日本に帰国後、日本の法律に合わせて夫婦で同じ名字にしました。初めは中谷さんの名字に、次に夫の名字に。2度名字を変えましたがお互いが名字を変えることの不便さを実感したそうです。
(中谷文美さん)
「自分の研究業績というものが自分の名前ではなく、夫の名前で発表することになることに対しても抵抗があった。夫も大学の教員をしているが、授業の名前も法律の名前でやってくださいって言われたりした。今ほど通称使用はそれほど認められていなかったし、男性が改姓を選んだことで、ものすごく周囲の抵抗も大きかった。話し合いの結果、少しずつ通称使用が認められた結果になるが、夫も姓を変えることの不自由さを実感した」
中谷さんは、2回ともペーパー離婚し夫婦が違う名字で暮らす「事実婚」の道を選びました。
(中谷文美さん)
「海外の友人からは『大変そうだね』とよく言われます。他の国でも夫婦同姓自体が不思議なわけではないが、同時に必ず選択肢が与えられていたり、名字に対する考え方が違ったりする社会もたくさんあるので。(日本は)どういう名字を名乗るかということと、どういう結婚をするのか、どんな家族を作っていくのかということが全部セットになっている」
中谷さんと夫の間には大学生の息子(23)がいます。息子は夫と同じ戸籍に入り夫の姓を名乗っています。
事実婚の場合、夫婦のどちらかしか子どもの親権を持てないため親権は中谷さんが持っています。
息子(23)は幼いころ夫婦別姓だった自分の家族が当たり前だと思っていたそうです。
中谷さん「(小さい頃あなたが)『お父さんとお母さんの名字って一緒でもいいの?』って言ったこと覚えてる?」
息子「聞かれたんだと思う、周りに。『でも普通だけどな』、みたいな。自分の中では最初からすごくポジティブなものだったから」
中谷さん「あなたはどうするの?結婚したとして」
息子「(名字を)一緒にする意味はないと思っている。まだ分からないけど」
一方で、親子の名字が違うことで苦労した経験もあるそうです。
中谷さんの息子「パスポート取得しに行った時が大変だったね、カウンターでバトルしていたよね」
中谷さん「あれが一番大変だったね。名字が違う人が親権を持っているという状態を理解してもらえなかった」
事実婚という道を選んだ中谷さん。夫婦同姓ではない家族の在り方もあることを示してみたい、と話します。
(中谷文美さん)
「一緒にいる理由は家族としていたいから。選択の自由がそもそも与えられていない中で、私たちなりの家族を実現しようとした。自分たちの選択に対して疑問は持っていない。夫婦同姓の形で法律婚を続けている方たちの中にも不自由さを感じている人はたくさんいると思う。どういう形であれ夫婦なり家族が考えた選択の結果が反映されるような制度であってほしい」
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