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Tuesday, February 23, 2021

みんなでお金から自由になる。「廃材エコヴィレッジゆるゆる」傍嶋飛龍さんとの対話(前編) - greenz.jp

NPOグリーンズの合言葉でもある「いかしあうつながり」とは、関わっている存在すべてが幸せになり、幸せであり続ける関係性のこと。それをみんながデザインできるような考え方、やり方をつくり、実践し、広めるのが、NPOグリーンズの新しいミッションだ。

とはいえ、それってどんなこと? 発案者の鈴木菜央も「まだわからない(笑)」という。「わからないなら、聞きに行こう」というわけで、鈴木菜央が「いかしあうつながり」「関係性のデザイン」に近い分野で実践・研究しているさまざまな方々と対話する連載。第3回目は「廃材エコヴィレッジゆるゆる」の傍嶋飛龍さんです。

傍島飛龍さん

お金のかからないライフスタイルを探して
廃材エコヴィレッジゆるゆるのはじまり

鈴木菜央(以下、菜央) 飛龍くんのことは2014年に取材させてもらったけど、そこからきっと進化してるよね。まずは自己紹介から始めようか。何やってるの、って聞かれたらなんて答えるのかな?

傍嶋飛龍(以下、飛龍)さん そうだね、「廃材エコヴィレッジゆるゆる」という場をしているんだけど、最初から話そうかな。

きっかけは、2011年3月11日の東日本大震災で。エネルギーのことや、暮らしのことを考えたり、人生がいつ終わるかわからないなと感じたりしたことを機に、当時の仕事をやめたんだよね。それで、お金のかからないライフスタイルをしなきゃいけないと思って、自宅にロケットストーブや自作の温水器、太陽光パネルの独立発電をつけることを2011年ごろにやっていたんだ。

その間にお金のかからないライフスタイルを実践してる人が全国にもいるんじゃないかと思って、2011年は九州を周った。その時にサイハテエコビレッジの工藤くんとつながって、サイハテが始まる前のサイハテを見に行って。

2012年に四国を車で巡った時に、香川にある廃材天国っていう場所に行きついて。そこで「廃材で左団扇生活」をうたってる秋山ファミリーに出会ったんだ。どうやって廃材集めてるんですか? って聞いたら、「廃材は情熱さえあれば集まる」って言われて、おおーっと! 思って。俺にも情熱はあるからできるかなって。2011年に九州周って、2012年に四国周って、もうインプットが多すぎてアウトプットしたいと思ったの。

それで、最初は自宅の庭に10平米の建築許可のいらない小屋を建てようと計画していて。廃材で建ててあって、オフグリッドで、ロケットストーブやかまどをつくって、全然ライフコストがかからないような。そういう小屋を立てるプロジェクトを計画していた矢先、藤野の中でも山奥の、もう隠れ里みたいな場所にある集落の、廃工場がいきなり売り出されることになったんだよね。ここでやった方が面白いプロジェクト出来るかもと思って、そのまま買い取ったんだ。

買い取ったらお金がすっからかんになったから、もう「廃材は情熱さえあれば集まる」っていうのを信じて、動き始めて。それで始まったのが、「廃材エコヴィレッジゆるゆる(以下、ゆるゆる)」というプロジェクト。

直面した場づくりのリアル

飛龍さん もともとこの集落自体、若い人が少ないから、人口や関わる人を増やしたいという思いもあって、最初は自分も含めて6人のメンバーでプロジェクトをスタートした。でも廃材で工事するハードさに、徐々に徐々にメンバーが辞めていって、最終的には俺しか残らなかったんだよね。

菜央 そうだ、前はメンバーがいたよね。

飛龍さん そうそう。菜央くんが来てくれた時はメンバーがいたんだ。「みんなでやっていくぞー」みたいな感じだったの。ただチームワークでやってくのが、僕も得意ではないこともあって、難しくて。

「大工事Day」っていう月1のイベントは、ゆるゆるが始まって以来ずっとやってたんだよね。イベントにボランティアで定期的に来てくれる人は結構いて、そうしたらチームのメンバーよりもボランティアの方が出席率が高くなってきて。メンバーが2,3か月何もしない一方で、ボランティアで来る人は毎月来てくれるという状況になっていって、そうしたらゆるゆるの在り方として、いろんな人とつくっていくみたいな感じの方がいいかもな、と思い始めた。

それで2年位たった2015年頃からスタイルを変えて、「大工事Day」に手伝いに来てくれる人たちでグループをつくったのが「ゆるゆる村民」と呼んでいるコミュニティの原型みたいな形かな。そんな感じで最初のグリーンズの取材からはもうだいぶ変わってしまったね。最初の4年の死闘っぷりは半端なかったからね。

2013年8月頃のゆるゆる

菜央 あの取材のちょうど後ぐらいからかな? でもそれリアルだなあ。

飛龍さん 本当にね、場づくりのリアルを感じた。どうコミュニケーションとってみんなとうまくやっていけばいいのかはかなり悩んで。メーリングリストをつくって、こうやって工事やるよ! って言っても誰も返事をくれないという事もあった。

菜央 つらいね。

飛龍さん 逆にFacebookページで「大工事Day」っていうイベントを立ち上げると、行きます! って熱いメッセージが来る。あれ? ボランティアで来てくれる人の方がモチベーション高いなって感じたことが度々あって。2015年の2年経った頃に、半分ぐらいになった残りのメンバーも一度リセットすることにした。気持ちを切り替えて、そこからいろんな場づくりをしてる人に学びにいくことにしたんだ。

菜央 へえ、そんなことしてたんだ。

飛龍さん そうそう。それからDIYスキルも、もうちょっと色々見てこなきゃだめだと思って。中国地方、和歌山も行ったし、淡路島と、それから福岡県の「いとしまシェアハウス」も行ったかな。

岡山の美作に住んでるパーマカルチャ―デザイナーのモーリー・クリプトンさんのガーデンで、水の浄化システムを見に行ったり、パサール満月海岸っていう、島根の方でもう10年以上場づくりしてる人にも会ったな。

いろんな人の話を各地で聞いてきて、それぞれの悩みも聞いたりして。それが自分の中でも勉強になって、じゃあゆるゆるはどういう方向性でやっていこうかなって思った時に、「通い型村民」っていうデザインにどんどん変わっていったかな。

初期の大工事day

飛龍さん 最初の4年がほんとめちゃめちゃハードな工事で、まあ基本的に大工事Dayは月1,2回しか開催してなかったから。

ロケットストーブつくりますよ、とか、土壁塗ります、という企画を、Facebookページのイベントとして立てて、人が集まってきてくれて、っていう感じで進めててさ。ただ大工事Dayってうたっても俺しかいない、って時も結構あった(笑)

菜央 そうなんだ。つらい。つらいなー。

飛龍さん そう、平日全部俺1人でずっとやってたから、おぉ、まあ平日が1日増えたかなーみたいな感じで。大工事Day、村長のみ。

菜央 平日に1人で頑張ってきて、よっしゃ、これでみんなの力があるとできる仕事があるぞー。さあ、大工事Day、っつったら誰も来ないみたいな。

飛龍さん そう、誰も来なくて。おお、日常1日増えたーみたいな感じで。でもそういうこと長くやってきてるともう慣れてきちゃってさ。全然へっちゃらになっちゃって。元々美術家だからさ、1人で作業するって結構得意なことだから。そんな4年が続いてって。

それからコミュニティスペースがちょっと出来上がってきて。青木麻耶ちゃんって、アメリカ大陸をチャリンコで横断した女の子がゆるゆる村民でいて、その子が大陸横断して帰国したときに初めてスライドトークのイベントを開催したかな。その時はまだコミュニティスペースしか人が集まれる場所がなくて、あとはまだ、材木がたくさん立てかかってる、倉庫みたいな感じだったんだけど。毎年、春オープン、春オープンって言い続けて4年みたいな。

菜央 開く開く詐欺みたいな。

飛龍さん そうそう。そんな感じでね。最初から勉強だって思ってたから、まったくハードさに対しては気にしてはいなかった。「あ、こうなっていったかーじゃあどうしようかな」しか基本的には考えない。落ち込んでもしょうがない、落ち込んでる暇があったら一本でもビスを打てって思ってたから。

竹細工部、発酵部、フリーランス研究部!?
ゆるゆるの部活動

飛龍さん オープンしてから今は、540人ぐらいが村民登録している。毎週来るディープゆるゆる村民もいるけど、年に一度来るか来ないかの村民もいる。ゆるゆる村民イベントやお祭りやった時には50人以上、大きいイベントでは150人ぐらい集まることもある。

菜央 すごいよね。だってめっちゃ山奥だもんね。

飛龍さん そうそう。山奥だけど。だからある意味本当に関係人口が増えてきていて。

それから自分も自治会長をやったり、民生委員をやったりして地域に関わってるから、地域のおじいちゃん、おばあちゃんもね、ぶらっと訪れて来てくれるんだよね。地域の問題ごとを傍嶋さんが解決してくれるんじゃないか、みたいな感じで。

最近は、野良猫に餌やりしててかわいくなったっていうおじいちゃんに、でも増えたら困るから、捕まえて動物病院に連れてって、避妊手術をしてほしいってお願いされて。自分はもう車が運転できないからって。そのミッションも、この間完了した。

菜央 すごい!

飛龍さん 代わりに地域の人から野菜もらう。物々交換みたいな感じだよね。今、子どもの遊び場のプロジェクトをしてるんだけど、そのプロジェクトのための土地も、地域の3人の地主さんから土地を借りてる。

ゆるゆるの活動風景。集落の竹林整備も兼ねた竹炭づくり

菜央 そうなんだ、そんなことやってるんだね。

飛龍さん 3人の地主さんに話をしたら、ぜひやっていいよって言われて。今その土地を借りて子どもたちとツリーハウスをつくったり、面白い遊び場ができ始めていて。

菜央 すごいなあ。

飛龍さん プロジェクトは結構広がってるかな。あと部活も活発になってきてるしね。

菜央 どんなのがあるの?

飛龍さん 今はね、竹細工部が一番活発。顧問の竹細工職人の先生が村民で、竹藪化しててもうほとんどほったらかしにされてる地域の竹を整備しながら、その材を使ってみんなで竹細工をしている。ゆくゆくは商品化も考えていて、竹のコーヒードリッパーをつくったり、プロジェクトが色々動いていて、月1活動だけど結構盛り上がってるかな。

竹細工部の活動風景

飛龍さん あとは、発酵部っていうのがあって。みそづくりやったり、乳酸菌飲料のミキっていうのをつくったり、たくあんづくりやったり、発酵食品を毎月つくってる。発酵部と竹細工部はメンバーがつながってるから、土曜日は竹細工部で日曜日は発酵部みたいに動いている人もいるね。

あとは、フリーランス研究部かな。どうやって自分のやりたいことでお金を稼いでいくか、みたいなことを研究している。今はYouTuberになる人が増えてるから、この間Zoomで弱小YouTuber会議みたいなものをしたんだ。10万人以上のチャンネル登録者がいるYouTuberの女の子がゆるゆるをネタにして動画をつくってくれたんだけど、そのZoomの会議の時も参加してくれて。めちゃめちゃ参考になる話をみんなで聞けたんだよね。フリーランス研究部は、各地から参加しているゆるゆる村民がいるから、オンラインが多いかな。

菜央 じゃあ、土日で集まる部活は割と近い人が多い?

飛龍さん そうだね、割と近い人が多くて。

菜央 ゆるゆる村民は全国の人も結構いるのかな。

飛龍さん そうだね。月1回ぐらい開催しているオンライン飲み会で再会する人も結構いるかな。それから廃材エコヴィレッジでモバイルハウスを生みだして旅に出た人が、旅先から会議に参加したり。色々面白い動きになってきてるなって。

菜央 広がってるねー。ゆるゆるが全国レベルで広がるっていうのは5年前にはちょっと考えられなかった。

飛龍さん そうだね、色々広がってきてるね。世の中に影響を与える変態を増やしたいって、俺は思ってて。たくさんの変人を増やすことで、世の中ってもっと楽しく面白くなるんじゃないかな。そんな形で結構プロジェクトは今、どんどん面白く広がってるね。

水道代はタダ、電気はソーラー
「廃材エコヴィレッジゆるゆる」の全体像

菜央 色々聞きたいことはあるんだけど1回原点に戻って、ゆるゆるの全体像を理解したいな。例えば、工場の大きさはどれくらいとか、基礎的な部分を教えてもらえる?

飛龍さん 工場の大きさはもともと鉄工所で、幅8m×長さ20mくらいの建物かな。

コミュニティスペースとフリースペースみたいな場所があって。自分は横丁の雰囲気が好きだから、ちょっと横丁っぽくデザインしていて。

現在の工場外観

部屋の内部

菜央 廊下が真ん中にあって、左右に小部屋があって、ぐるっと石の部屋があったり。

飛龍さん そうそうそう。それが6部屋あるんだよね。

最初6人メンバーがいて、3m角の部屋をつくって、そこが自分のアトリエだったり事務所だったりした。その名残がそのまま残ってて。今は応接間っていう場所にいるんだけど、そこはぶらっと人と対話する場所だね。あとは、石倉のスペースと、ギャラリーがあるかな。自分の万華鏡作品が置いてあったりして。

ゆるゆるの応接間

菜央 そうだね、この間行ったときに見せてもらったよね。

飛龍さん そうそう、これから竹細工部の村民たちが商品化したものを置けるような場所にもしようかなとかって思ってて。

菜央 へぇ、なるほど。あと外側にコンポストトイレつくったよね。

飛龍さん あ、そうそう。外にはコンポストトイレ、五右衛門風呂、ミミズコンポスト、ハイブリッド薪キッチンっていうのもあって。それからソーラー発電で6,7割は電気を自給してて、水も沢の水をポンプアップしている。あと雨水利用かな。

コンポストトイレ

五右衛門風呂

薪キッチン

菜央 沢の水は太陽光でポンプアップしてるの?

飛龍さん そうだね、太陽光でポンプアップしてる。あとは高低差で水が出てくるようにしてあって。水は3系統あるね。

菜央 3系統って、どういう意味?

飛龍さん 雨水利用と、ポンプアップと、水源の高いところから農業用ホースで水を引っ張ってきている高低差を利用した水の3系統。その3系統の水を利用して、ゆるゆるは水道代タダを実現してる。

それから工場の隣にある沢で、子どもの遊び場プロジェクトが動き始めていて。廃材で工作したり、沢遊びができたりするスペースが2020年の3月くらいから始まったね。

菜央 ウジ虫コンポストはまだやってるの?

飛龍さん もう色々ミックスすぎてなんだか危険。ネズミが入ったり、コバエが大発生したり。今だいぶ「カオスコンポスト」になってる(笑)

コンポスト

菜央 うちも最初ミミズだったんだけど、カオスコンポストになった。昔コバエが発生していやだなって思ってたんだけど、僕の師匠が「いや、ごみの廃材の中に入ってるエネルギーが虫の形に変換して飛んでったと思えばいいんだよ」って言ってて、なるほどねと思った。

飛龍さん いいね、そういうポジティブな発想は。俺も「奴らは頑張って分解してくれてるんだ」って言ってる。

菜央 そうそう、分解が必要なんだよね。

飛龍さん あとはコンポストトイレのおしっこやうんこも、村民たちで畑の方に運んでいて。落ち葉や刈った草の下に穴掘って埋めて、草をかけて何か月か経って掘り出すと、もう何も形がなくなっていて。その濃厚なエネルギーを畑にパラパラ撒く、そんなゆるい農法、ネグレクト農法って自分は言ってるんだけど、そんなやり方で畑もやってる。

ゆるゆる農園

菜央 ほったらかし、みたいな。

飛龍さん そう、ほったらかし農法って言ってる。

菜央 そうか。じゃあ水道代がタダで、電気はソーラーで賄ってるんだね。

飛龍さん 使った分の3割位は、ソーラー以外の電気代がかかってるって感じかな。

菜央 そこはまあ普通に引いてきて。

飛龍さん あんまりハードエコにもしていなくて。カセットボンベのコンロが2つあって、ハイブリッド薪キッチンがあって。今は人数が多いから、米は薪キッチンを使って羽釜で炊いているね。少人数の料理は、コンロを使っている。

お金に依存しないコミュニティのつくり方

菜央 今新型コロナが流行している状況で、もちろんコロナそのものも大問題だけど、コロナによって経済危機が引き起こされているじゃない。それは単純に言えば、お金に頼りすぎる暮らしをしていたからだと思うんだよね。お金に頼らなくたって、面白く楽しく暮らせるし、お金から自由になると、どんどんクリエイティブになれる余地が増えていく。だからお金から自由になることと、クリエイティブになることは両輪、というかセットな気がしていて。

命の豊かさっていうのかな、自然とつながるとか、人とつながるとか、面白い何か、全然見たこともないものを生み出すとか、そういう仕事、そういうことを、人生の中心とか一部に置きたいって思ってる人がたくさんいると思うんだよね、本当は。

だけど、1日10時間以上働かないと、生活が維持できない、みたいなことが起こるのは、お金のシステムに過度に依存してるからだと思うのね。そこに対して飛龍くんは全然そんなことがないし、自由になれるよってことを言ってるように感じるの。「情熱があれば廃材は集められる」って言ってたけど、情熱があればお金から自由になれるってことだよね。

廃材をもらうために、家の解体を手伝う

飛龍さん そうだね、俺、若いころ自殺したいぐらい悩んでたタイプだから色々と考えていたことがあって。少数民族の幸せなコミュニティっていうのは、基本的に自殺が無くて、精神病がほとんどなかったっていわれてることがあるんだよね。現代は精神病も多いし自殺も多い。でもそれは、社会のデザインによって起こってると思ってて。

だから菜央くんが前に、幸せを指標にした方が良いんじゃないかみたいな、投稿をSNSでしてた記憶があるんだけど、俺はそれめちゃめちゃ良い言葉だなと思って。

多分少数民族の人たちって、狩猟だとかで単体でバラバラいると森の中で不安になるから、群れた方が安心だから、安心のためにミニコミュニティをつくってたんだよね。それをみんなで分かち合って生きてた。例えば漁ができる人はそれを1人で抱え込まないで、神様から与えられた能力としてシェアする。コミュニティの中には、漁が得意じゃない人もいるけれど、でもその人はその人で別の形で貢献する。

そもそもはみんなと分かち合うことを前提に、安心感をつくってる、そういうデザインだったんだと思う。でも今はそうじゃなくて、お金を稼ぐことが得意な人が、肉をたくさん集めて、冷凍庫に保管して、集められなかった人たちはお腹を空かせてしまう。そんなデザインのように感じていて。

それは本質的に幸福度が低いよね。みんなが輪になってつながってシェアしてる方が心って豊かじゃないのかなあ。幸福学の話でも、めちゃめちゃ富裕層って意外と幸福度が低いっていう統計があるのを、なにかで読んだことがあって。もちろん、経済的に貧困な人たちは幸福度は低いんだけど、中くらいの人がそこそこ幸福度が高くて、意外とお金持ちが低いってなってるから、面白い図だなあと思って。

ある程度生活が安定して、シェアできてるっていう人が幸せであると思うし、幸福を指標にしたデザインをみんなで考えていけたらいいよね。今は経済ありきのデザインで社会ができてるっていうことがそもそも問題で、指標を変えて、社会をデザインしていくことがすごく大事だと思ってる。

ゆるゆるは、ある意味でお金依存度を極端に減らした場づくりで、そこで自分が何を感じるかっていうことをやってみたかったっていうのもあった。脱経済の形というかさ。

農園で収穫物を手に

飛龍さん 元々少数民族のコミュニティには家賃が存在してないしね。あとは、狩猟採集の民族でシェアしてた場合は、搾取されるっていうことが基本的にないよね。誰かが土地代をよこせっていうと、その人たちのコミュニティは労働が増えるわけであって。その搾取した人は働いてなかったとしたら、他とバランスがおかしいよね。

そういう意味では、お金依存が減った場合、本当の意味で「ゆるゆる」できるなと思って。うちは今、ドネーション運営って形をとっていて、お金じゃなくても、何でもいいって言ってんのよ。年間のかかる経費が、電気代も含めて計算してみたら、年間10万位でいけるの、全部含めて。だからめちゃめちゃ安いんだよ。

菜央 固定資産税はどんぐらい? 固定資産税と電気代はいくら?

飛龍さん 固定資産税が4万いかないくらいかな。月の電気代が、基本料金合わせて3,000円。冬はちょっと多くなるから、まあ3,000円が平均くらいとして、そうすると相当安いよね。

あとは村民たちが、シェアでいろんな食べ物を持ってきてる。パスタを毎回持ってきてくれる人とか、米を持ってきてくれる人とか、ガスボンベをシェア、ドネーションしてくれる人とか。いろんな関係人口の中で、みんなそれぞれ、あ、これ足りないかなっと思って持ってきてくれて、それがここに滞在して遊ぶ寄附みたいな形になっている。

基本的には「お気持ちで」としか言わないようにしているんだけど。それで成り立ったらもう奇跡だなと思っていたら、成り立っているんだよね。だからこれは、完全に脱お金依存が実現できていることかなって。そうすると村長はゆるゆるできるっていうかさ、ゆるゆる村長になれるかな。

材木の他にも、様々な廃材が集まってくる

菜央 その、ゆるゆる村長にたどり着くまではさ、結構きつい時期もあった?

飛龍さん そうそう。最初の4年の「ブラックエコヴィレッジガチガチ時代」っていうのが存在するから(笑) 気温マイナス5度の冬の朝から、冷え切ったバールを持って一日中釘抜きをしたり。お金がないから、大工事Dayに来てくれた人にも良いご飯も提供できなくて、もらった古米をどうにか美味しく食べようとして、流水で流して浄化して、野草を摘んでお昼ご飯にしていて。そんな感じでも来てくれた人は面白がって来てくれて、成り立っていたかな。

菜央 なるほどね。

飛龍さん だからあんまり頑張ってサービスをしない、っていうのが俺のスタイルかな。

(編集: 福井尚子)

(後編へ続く)

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