義父と義母の認知症が立て続けに発覚。別居しながら介護を試みるライター島影真奈美さんは、「もめない努力は、親の為ならず」を掲げ、愛と笑いのある介護のコツを収集中です。その一部を紹介します。
「ねえ、あなた、ちょっとお茶にしましょうよ。そんなに動き回ったら疲れてしまうでしょ?」 義母がまだ自宅で暮らしていたころ、義母はヘルパーさんや訪問看護師さんが訪れるたび、そう言って台所に誘っていました。 「ありがとうございます。でも、水筒を持ってきてますから」 「お気遣いありがとうございます。でも、ごめんなさい。うかがったお宅で、お茶をいただいてはいけないというルールになっているんです」 にこやかに断られるたび、義母は不満顔。行き場のなくなったサービス精神は次に、嫁であるわたしに向けられます。 「さあ、お茶にしましょう! クッキーはどこかしら。ほら、早くお座りなさいな」 「ちょっと先に、この書類だけ片づけてもいいですか」 「そんなの、あとでもいいわよ」 その言い方……! せっかくのお客さんを思う存分もてなしたい。女主人として采配をふるいたいのはわかる。でも、こちらにも都合がある。やらなきゃいけないことがあるから来ているわけで、さくさく仕事を片づけて家に帰りたい。そんなモヤモヤを抱えながら、断ったり、すっと話題をそらしたり。しばらくそんな攻防戦を続けるうちに、ピタリと義母がしつこい誘いを口にしなくなり、ようやく慣れてくれたかと思うと、またしばらく経ってお誘いモードが再開。単なる気まぐれだったかとガッカリしたことは、一度や二度ではありません。
義母と義夫のやりとりが、私の心を穏やかに
「あなた、お茶にしましょう。ほら、まなみさんも早くいらっしゃい」 その日、いつものように声をかけられた時、わたしはかなりイラ立っていました。義母の誘いをむげに断るのも心苦しく、かといって介護関係の書類記入や手続き、部屋の片づけと雑用は膨大にあって、義母のリクエストに律義につきあっていたら、いったい週に何回、夫の実家に通うことになるのか。当時、夫から「そんなに無理しなくてもいいのに」とたびたび言われていたことが、イライラに拍車をかけていました。 そして、いらだちのあまり、やっていた作業をぜんぶ放り出し、義父母とおやつを食べることにしたのです。時間が足りなくなって、予定していた作業が終わらなくても知るか……!と、ほとんどやけっぱちな気持ちで、出されたクッキーをもぐもぐ。義母は大喜びでスキップしかねない勢いでお茶を淹れてくれます。そして、興奮気味に義父やわたしにあれやこれやと話しかけます。 「ねえあなた。子どものころ、こんなビスケットがあったら、どんな気持ちになったかしら……きっと、胸がいっぱいで食べられなかったかもしれないわね!」 「そうだね」 「あなただったら、何を召し上がる? やっぱりチョコレートクッキーかしら!」 「そうだね」 おしゃべりな義母と、寡黙な義父のとぼけたやりとりを聞いていると、なんだか面白くなってきて、さっきまで心をめいっぱい占領していた腹立たしさが、やわらいでいくのを感じます。
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