対談のラストを飾るのは、主将・副将コンビ。監督交代、未知のウイルス、日本一奪還――。激動のシーズンをチームの先頭で戦う彼女たちの心境に迫った。
※この取材は12月17日に行われたものです。
「とりあえず真帆にボール持たせてバランスとらせればだいたい良い(笑)。」(鈴木)
村上について語る鈴木
――まず初めにお二人について詳しく知りたいので、お互いを紹介してください
村上 (鈴木の)プレー面は、一番後ろにいるっていう良い意味での安心感のオーラ、あ、悪い意味ないかこれ(笑)。
一同 (笑)。
村上 安心感ていうオーラが後ろからぶわーっと漂ってくる。なんかもうそろそろ匂いまで漂ってくるんじゃないかみたいな(笑)。ボランチってとられたらピンチじゃないですか。でもどうしてもボールを失う時があるんですけど、それでやばいって焦ってもさわちゃんが止めてくれるからありがとうって感じだし、皇后杯関東予選の神大戦でのPK戦でも私は一番で外したんですけど、さわちゃんが止めてくれて勝てたのでありがとうって感じです(笑)。ピッチの外では自分でシャイとか人見知りって言うくせに、実際はそうでもないと思う(笑)。そう見せてるし実際そうなんだけど、その壁は意外と薄い、すぐぶち破れる。ぶち破ったらすごく変な人。
鈴木 そうだね。自分でもそう思う。変わってるんだろうなーって。
――この印象を聞いていかがですか
鈴木 まあ…自覚はしています(笑)。真帆は、プレー面だととりあえず真帆にボール持たせてバランスとらせればだいたい良いみたいな(笑)。やっぱり真ん中に4年生が2人しかいないというのもあって、安心感があります。ピッチの外では、誰とでもコミュニケーション獲るよね。
村上 それはそうかもしれない。
鈴木 自分がそういうのが苦手だから、それを真帆が全部やってくれる、自分の短所を全部真帆が補ってくれる。
村上 真帆の短所はさわちゃんが補ってくれる(笑)。
鈴木 結構正反対だよね。すぐ1年生とかとも仲良くしてくれるから、ありがとうって思う、ナイスって(笑)。
――これを聞いていかがですか
村上 さわちゃんは全体を見る力があって、全体を見たうえでどうすればいいかを判断して実行していく力があって。自分はそういう大きなことをやる力がないので、それは本当にすごいなと思います。逆に自分は副将として細かいところをやっていこうと思います。
――ではここからは今シーズンの振り返りに移りたいと思います。まずは活動が休止になった時の心境を教えてください
村上 まじかーって。
鈴木 もしかしたらとは思っていたけど、まさかって
村上 ね。
鈴木 なるかもしれないとは思っていたけど、何とか試合はできるんじゃないかって思っていました。ただ思ったよりも自粛が長くて。
――どのような流れで休止になったのでしょうか
鈴木 とりあえず3日間くらい部活動停止みたいになって、その時期に緊急事態宣言が出たので、もうだめだ、みたいな。
村上 最初は普通に練習をしようとしていて、スタッフと打ち合わせをいつもするんですけど、その時にメールで部活性は明日から3日間休止してくださいっていうのが来て、え、まじ?みたいな。
鈴木 心構えをする間もなくって感じだったよね。
村上 そうそう。
――自粛期間は何をされていましたか
鈴木 1回思考停止したよね。m
村上 した。
鈴木 チームのこともそうですし自分のことも1回何も考えられなくなったけど、何かしなくてはいけないというのがあったから、チームとしてはミーティングしかできないから、そういうのをやっていくしかないよねって。
村上 あとは体力面とかは各自でやってもらうしかないからって感じで。
鈴木 状況が状況だから強制もできなくて、体力を維持しろって言っても外に出ちゃいけないし。そこは各自に任せるって感じでした。
――それは4年生主体でやったのでしょうか
鈴木 監督から言われることもあれば、自分たちからやろうと発信したり、半分ずつくらいでした。
――サッカー、部活以外の面ではいかがでしたか
村上 お父さんも家にいたので、ずっと2人でDIYしてました。ちゃんとタンス作ったり、いろいろしましたね、めっちゃ面白かったですね。
――きっかけは
村上 お父さんがもともと小さな物入れとか作っていて、自分もやりたいという風に言ったら、まず機材を買いに行くところから一緒に…みたいな感じでした。
鈴木 どこにも行けなくて絶対に生活が乱れるから、規則正しく生活しようということを心掛けて毎日過ごしていました。朝ちゃんと起きて、3食食べて、みたいな。それをきっちりやろうと。意識しないと絶対に無理だと思ったので、あえてそれを意識していました。
――4年生のお二人にとっては大学サッカーのラストシーズンがこのような形になってしまいましたが、葛藤や心境の変化はありましたか
村上 学年が上がるにつれて時間が短く感じるっていうのは先輩からも言われていたし3年生まで過ごす中で自分も感じていたので、それをさらに削られるか、みたいな感じで結構ショックだったんですけど、いざ自粛が明けてからの練習してってなると、1人でいる期間というのも、今振り返ればいい期間だったのかなと思います。
鈴木 あー、試合少なくなっちゃったとは思ったけど、でも実際過ごしてみたら、これもありかなというか、過ごすうちにかわって言った感じです。
村上 みんな結構前向きにとらえてたよね、そうしないとやっていけないというか。
鈴木 4年生の中でもそんなにネガティブな感じではなかったよね。しょうがない、って感じ。
――ア女日記にも自粛がいいタイミングになったという記述がありましたが、具体的にどういった意味だったのでしょうか
鈴木 自粛前がシーズン始まって1か月くらいだったんですけど、その時期は監督のやり方にもなれないといけないし、フィジカル面も上げないといけないし、そこは全員がサッカーに集中していた時期で、みんなサッカーしか考えていないというか。スタートのタイミングでその熱量なのは良いんですけど、それがずっと続くのはやばいな、サッカーのことしか考えられないチームになっちゃうなっていう危機感があって、全員が一度頭の中をリセットしなくてはいけないんじゃないかとうすうす思っていて、そこでちょうど自粛期間があったので、サッカーから離れるタイミングになったのは良かったかなという意味です。
――それは4年生全体として感じていたのですか
鈴木 何人かは思っていたけど、それを表に出せない雰囲気もあったという感じです。全員がサッカーに夢中になっていたから、それ以外のことを考えるのは良くない、みたいな。
村上 あんまりバランスがうまくとりにくかったよね。
――印象的な試合が多いシーズンでしたが、特に印象に残っている試合はありますか
鈴木 負け試合しか印象にないんだけど。
村上 真帆も(笑)。
鈴木 負けた3試合がね、結構ね。
村上 その3試合がトップ3みたいな感じで印象に残っています。
――その中でも印象に残っている試合は
鈴木 筑波大戦かな。
村上 私はハリマ。
鈴木 大会が違うからね、試合によってみんなの位置づけが違うからね。
――具体的に関カレの位置づけは
鈴木 その試合に関してはチームとして初の負け試合だったっていうのと、いろいろチャレンジしていこうという時期とぶつかって、チームとして悩んだというか。チャレンジもしないといけないけど勝ちにもいかないといけないっていう感じで、悩むきっかけになった試合になったので印象に残っています。
――選手を大幅に入れ替えていたのがチャレンジということでしょうか
村上 それもありますし、フォーメーションも4-3-3にして、戦術も変えたり。
鈴木 その時期は守備に力を入れてたよね。その中で失点したというのが課題として挙がりました。
村上 その筑波戦の後から皇后杯関東予選が始まって、守備はとても良くなったんですよ。決勝で負けたことは課題ではあるんですけど、大会を通して1失点だったし、点を取られにくくはなったんですけど、今度は点が取れないという壁にぶち当たって。そこからしばらく攻撃の練習をしていて、関カレの続きでは点を取れるようになって、複数得点も取れるようになって、いい感じになった時にハリマ戦でぱきって折られて。自分たちはまだまだ積み上げが足りないと実感させられたので、インカレで優勝するためにはトーナメントで勝ち切る力とか、点を取り切る、守り切る力っていうのがもっと必要だなと痛感させられた試合でした。
――皇后杯関東予選では本当に点が奪えませんでしたが、その原因はどこにあったのでしょうか
鈴木 逆に点を意識しすぎてたのはあるよね。みんな点が取れないというのが課題と分かっていたからこそ、そこを意識しすぎて、急ぎすぎちゃっていたのかなと思います。
――チームの中で下級生の活躍が目立ちますが、印象はいかがですか
村上 頼もしいよね、本当に。
鈴木 一緒にやっていても楽しいし、見ていても楽しいし。自分たちが1年生の時は上級生が偉大過ぎてのびのびとはプレーできていなかったっていうのもあって、今はそれぞれが自分の強みを出せているからそれは良かったと思います。
――そういったチーム作りは意識しているのですか
鈴木 えー、してる?
村上 真帆は意識してる(笑)。本来であれば4年生が試合の中でもっと存在感を出して引っ張っていかなきゃいけない存在ではあるけど、出ている人数も少ないし、私の考えでは全員が100%の力を出せればア女ってすごく強いと思うんですよ。だからそれを学年関係なく全員が出せるようにっていうのは結構3年生くらいから意識していうrの出、それは委縮せず、プラス思考で考えてくれるように声掛けをしたりとか、その声の1つ1つも選んでやっているつもりです。
鈴木 良い意味で4年生の存在感がないよね。あんまり意識していないけど。
――逆に同期とあまりピッチでプレーできていないもどかしさなどはありますか
鈴木 それは常にありますけど、同期もピッチの中が勝負の世界というのは分かっているから、それが悪い方向にはいっていないですね。1年から4年まで平等に勝負っていう気持ちはあるから、お互い割り切っている部分はありますね。
――ラストシーズンでの監督交代になりましたが、感じるものはありましたか
村上 今までの流れにはならないじゃないですか。だからそこに対する不安は若干あったけど、まあどうにかいい方向に行ってくれっていう思いだったので、監督が代わるからどう、というのはなかったです。あった?
鈴木 ない。大きく変わるとは思ったけど、ア式は選手主体を大事にしているから、結局は自分たち次第かなというのがあったし、シーズン前に福さんと話して、サッカーに対する考え方とか、それ以外の考え方とかも理解していたので、良い感じでお互いの良さを出していければなと思っていました。
「サッカーが、ピッチの中がガラッと変わった」(村上)
監督交代について語る村上
――監督が代わることによってどのような変化がありましたか
村上 サッカーが、ピッチの中がガラッと変わりました。
鈴木 今まではサッカーに対して漠然と考えていたんですけど、今は考える質が変わったよね。
村上 そうね。今までは下の部分をみんなで考えていたけど、それを一段階持ち上げてくれたというか、実際に考えるのは自分たちなんですけど、その質を上げて、1つ上で考えさせてくれるようになりました。最初は結構難しいし、本当にいろいろなことを考えないといけないメニューもあったり大変なんですけど、上を目指すにはそこまでやらなきゃいけないというのもあったので、すごくそれは楽しいなと思いました。
鈴木 ここにきてサッカー楽しいなって思えた。
村上 そう、試合ができるから楽しいとかじゃなく、サッカーをしていて楽しいっていう感情が生まれました。
――具体的に難しかった点はありますか
鈴木 福さんは自分たちよりサッカーを知っているから、福さんの答えを探してしまって、そうするとプレーがうまくいかなかったり、柔軟性も求められたよね。これがこうだからこう、というのを考えすぎてしまったけど、こうなったらこうなるし、こうなったらこうなるし、みたいな。
村上 めっちゃこんがらがったよね。
鈴木 結局シンプルに考えればよかったみたいなこともあったし。
――試合中はあまり声を出さないイメージですが、練習中はいかがですか
鈴木 練習では言うよね。
村上言うね。引き出しを決行作ってくれるような声掛けとか、できるのにやれていないというのは選手からも監督からも言いますね。こういう時はこうしろ!みたいなレールを作った声掛けはあまりないですね。選手の考えを尊重しつつ、違う意見も教えてくれるので幅が広がるというか。
鈴木 選択肢を増やしてくれるよね。練習でそれだけ言って考えさせてくれるから、試合ではあまり声を出さないのかもしれない。
――練習中の競争も激しくなったのですか
鈴木 バチバチだよね。試合に出たいからバチバチというよりも、ア女のサッカーがしたいから一人ひとりの質を上げて以降みたいな感じだよね。
村上 そうすると結果的に自分のマークしている相手には負けられないという気持ちは増えたなと思います。
――監督を一言で表すと、どのような監督ですか
村上 熱い。
鈴木 暑苦しい。
――何かエピソードを教えてください
鈴木 今は慣れたけど、あー…って感じだったよね。そういう暑さでくるんだ、みたいな。
村上 確かに(笑)。あとは遊びでやるリフティングとかも絶対に選手に負けたくないって感じで、勝つと選手より喜ぶし、負けたらめちゃめちゃ悔しがるし、そういう意味でも、プラスに働く暑さ、自分たちももっとできるんじゃないかと思わせてくれます。
――さきほどア女のサッカーという言葉が出ましたが、ア女らしさ、ア女のサッカーとはどういったものでしょうか
鈴木 そういわれると難しいよね。
村上 サッカーじゃないですけど、ア女の人たちってみんな負けず嫌いなんですよ。けどそれが今年に入ってより増したなと。そういったところがア女らしさかなと思います。
鈴木 11人以外もレベルが高い。誰が出てもやってくれるというのは思います。交代で1年生が入ったとしても大丈夫、何かやってくれると思うし、負けないようにもっと頑張らなきゃというのは思います。
――ではここからは個人について質問をさせていただきます。理想とする主将像はありますか
鈴木 自分の主将としての役割は、決めた理念に対してみんなが向かっていけるように導いていくのが役割だと思っていたし、同期に伝えていたという感じです。
――それは達成できましたか
鈴木 達成できたかはわからないけど、まだやれるなというのはあります。
村上 でも確実に進めているよね。
――ではプレイヤーとしてのご自身の出来はいかがですか
鈴木えー…、でも成長したかな?
村上 めっちゃしたと思う。
鈴木 技術とかじゃなくて全体的にかな。全体的に成長したと思います。1,2年の頃は試合に出る回数が少なかったので練習で技術を磨こうと考えていて、3年で怪我をして、4年で試合に出れるようになって、テクニックよりもスキルが身についた年だったと思います。
――点数をつけるなら何点ですか
鈴木 70点、いや75点で!残りの25点は伸びしろで残しておきます(笑)。試合に出て経験を詰めているからこそ高い点数にはしておきたいです。
――村上選手はチームの浮き沈みをピッチ内で体感したシーズンだったと思います。
村上 前までは勝ち切れない、調子が悪い時期に落ちていってしまうことがあったんですけど、最近は上がっているときはもちろん上がるし、チームが落ちているときもなんとか自分たちで維持・向上できるようにしようというのがあるから、やっていてどうすればいいの、みたいな気持ちになることが減ったなというのは思っています。
――理想の10番像を教えてください
村上 私が1年生の頃に10番をつけていた選手を本当に尊敬していて。自分だけじゃないと思うんですけど、みんなから頼られる、絶対的な選手だったので、理想としています。
――今シーズンの出来を点数で表すと
村上 50点。ちょっとまだ全然あと1か月じゃ足りないくらい改善点があるので、ただできる限りのことはやっていきたいと思います。
――ここからはインカレについて伺います。まずは組み合わせについて印象を教えてください。
村上 印象としては、毎年日体と帝京平成が逆山だなーって。
鈴木 毎年同じだよね。
村上 初戦で当たるかもしれない大東文化大とは関カレでやっていて、自分たちが慣れていない、苦手意識を持っているプレースタイルなので…それにしっかり対応する必要があると思います。
鈴木 苦手なサッカーをすることを知っているチームがいるっていうのでやりにくさはあったよね。
――この大学とはやりたくないなどと考えたりするのですか
鈴木 あった?
村上 なかった。逆に筑波には一度負けているし、日体もベストメンバーではなかったので、むしろ両方と戦って勝ちたかったという気持ちがあります。
――次にインカレでのア女の注目選手を教えてください
村上 前線だったら、雛(高橋)とヒロ(廣澤真穂)の2トップを見てほしいです。1年間ずっと2人でやってきてどんどん連携もよくなっているし、どちらも得点力があるので、まじで魅力的な2トップです。
鈴木 前線で言ったら加藤希です。今年サイドハーフにコンバートされたんですけどクロスもいいしハードワークもできるし、点も取れるしオールマイティーで、自分の好きなタイプの選手ですね。
村上 みんな注目してほしいんですけど、一番は佐和子です。勝手に思っていただけなんですけど、4年生になって試合に出る回数が多くなって、技術とかスキルもうまくなっているのが分かるし、でもそれ以上に今年に入って、絶対に守ってやるという覚悟を感じるから、それを期待して、見てほしいです。
鈴木 プレッシャーだわー。私は2人のCBですかね。1年生でプレッシャーを感じながらも必死にやっているし、璃子も自分のプレーで悩みながらも成長していっている感じを一番近くで見てますし、若葉も能力があるから、だからこそア女全体をコントロールするというのを頑張っていたというのを近くで見ていたので、その2人です。
――ご自身のプレーの注目ポイントを教えてください
村上 去年も同じだったんですけど、前線の戦油はみんなうまいし早い選手ばっかりなので、その人たちに合わせたスルーパスを見てほしいです。それをたくさん出せるように頑張ります!
鈴木 クロスとかハイボールとかの競り合いの部分を見てほしいと思いますね。そこを短所だと思っていた分、1年間力を入れてきたので、その成長を見てほしいのと、DFラインとの連携した守備。
村上 マジで声掛けがすごいんですよ。とりあえず佐和子の言葉に従っておけば良いみたいな(笑)。
鈴木 自分で動いてー(笑)。口が回らないのよ(笑)。
――では最後に、インカレへの意気込みをお願いします
村上 やるしかないと、ア女でできる最後の大会ですし、やり残したって思わないように試合をして、優勝します!
鈴木 最後だからというのをあまり思いたくないというか、自分たちにとっては最後の大会だけど、後輩にとっては2021年のスタートでもあるので、そこでやりきるというよりは成長過程としてインカレを向かいたいというのはあるのはあるので、その中で優勝したいと思います。
鈴木・村上 はーい(笑)(笑)。
――ありがとうございました!
(取材・編集 稲葉侑也、橋口遼太郎)
インカレへの意気込みを色紙に書いていただきました!
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