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Friday, November 27, 2020

【居酒屋ブルース】日曜東京12R - サンケイスポーツ

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 【東京12R・ジャパンカップ】

 先週、縁あって両国国技館で大相撲11月場所を観戦した。打ち出し後、近くにある「クラフトビールの聖地」と呼ばれるPへ向かった。

 新型コロナウイルス流行の「第3波」が襲っている最中だけに、寒くてもテラス席を予約していた。ところがこの日は、予想より気温が高く、しかも心地よい風も吹いている。コロナ感染予防対策を考えても、屋外でビールを飲むにはこれ以上ないほど条件がそろっていた。これには升席で一緒に観戦した友人の作家、須藤靖貴さんもニコニコだ。

 向かい合って飲むのは飛沫(ひまつ)をお互いにかけ合うようなものなので避けたい。同じ方向を向きながら話すのがベストだが、さて外を向くか、ガラスの向こうに店内が見える内を向くか。須藤さんに尋ねると「そりゃあ、店内を見ながらでしょう」とニヤリ。店内にいる客たちの人間模様を想像しながら、それをさかなに飲もうというわけだ。向こうの会話は聞こえないが、こちらの会話も店の中の客には聞こえない。好き勝手なことを想像して須藤さんとの話が盛り上がれる。

 「さっそく面白くなってきましたよ」と須藤さん。

 窓際の4人席で一人、ビールをパイント(Pでは14オンスと表記。14オンスは414ミリリットルだから、実際はUSパイント=473ミリリットルより少ない)で飲みながら食事していたイニエスタ似の外国人に、待ち人が現れたのだ。

 こちらは石井浩郎似の日本人。石井浩郎もパイントでビールを注文。乾杯したかと思うと、驚きの行動に出た。お互いのビールを交換して試し飲みしたのだ。

 須藤さんと顔を見合わせた。コロナ禍では気軽にできる行為ではない。「同居しているのでは?」。須藤さんの言葉で腑に落ちた。

 その後、石井浩郎は、酔いも手伝って興が乗ったのか2人を隔てている高さ60センチほどの透明なパーテーションパネルの上に両腕を乗せ、イニエスタに近づいて英語で話している(口の動きから英語、少なくとも外国語だろうと想像した)。

 その隣のテーブルに男女がやってきた。お互い40代だろうか。会社の同僚? 会社の同僚同士の不倫カップル? 須藤さんと想像を膨らませながらビール(われわれはいろいろな種類を飲みたいため9オンス=266ミリリットル)を飲んでいた。男女は静かに、しかし楽しそうに飲んでいたが、女がトイレに立ったときに見過ごせない動きがあった。男が、スパゲティを女が使っていたフォークで食べたのだ。やっぱり不倫か。

 「いや、夫婦かも」と須藤さん。

 会計は女がクレジットカードで支払った。不倫なら男が払うよな、やっぱり夫婦だったんだと2人が納得したその時だった。男が財布を取りだして割り勘分を女に渡したのだ。

 夫婦? 不倫? それとも男の片恋慕? 意見がまとまらないうちに男女は帰ってしまった。

 そんな人間観察に加え、過ごしやすい天候も手伝ってビール(飲んだのはIPA=インディア・ペール・エールばかり)が進んだ。Pの自家醸造ビール(特に試行錯誤を繰り返したというヘイジーIPA)も良かったが、二人とも絶賛したのは三重のブルワリー(醸造所)、伊勢角屋麦酒の「酒粕ヘイジーIPA作」。三重の誇る銘酒「作(ざく)」の酒かす、酒米、三重の清酒酵母を使ったスペシャルなヘイジーIPAだという。濃い黄色というより白く濃く濁ったビールで、甘さの少ない好みのヘイジーだった。これはめっけものだったね。

 「予想を当てた鈴木さんが、クラフトビールというか、クラフトビールのお店での人間観察の話に終始するというのは解せません」

 ひいきの居酒屋のカウンター席で先週の出来事を話していると、バイトの桃ちゃんに疑いの目で見られた。

 「もしかして馬券を買い忘れたとか?」

 そんなことはないよ。

 「じゃあ、なんで当たったことを自慢しないで、競馬以外の話ばかりするんです?」

 賞味期限の短い話だからね。大相撲も終わったし、馬券が外れるのを待っていられなかったんだよ。

 「それだけ?」

 うん。

 「怪しい」

 怪しくないって。しっかり馬券も取れて、うれしいよ。エリザベス女王杯に続きマイルチャンピオンシップの馬券もゲット。欣快(きんかい)、欣快。そして琥珀ヱビスはいつも以上に美味。

 「怪しい」

 なにが?

 「そう言いながら、ニヤニヤしてLINEを打っているところが怪しい。もしかして、鈴木さんこそ不倫?」

 失礼だね。

 「じゃあ、LINEの相手は誰です?」

 桃ちゃんの知らない人。

 「怪しい」

 怪しくなんかないって。実は、その人に居酒屋ブルースを読んでもらってから、潮目が変わったのか2週続けて的中。来週も予想を送るので読んでください、ってLINEを送ったわけ。

 「ふーん。やっぱり怪しい」

 痛くもない腹を探られるのは気分が悪いよ。もしかして桃ちゃん、マイルチャンピオンシップの馬券を外したとか?

 「そんなことはありません。本線で来てくれなかったからトリガミになっただけです」

 ○のレシステンシアも▲のサリオスも駄目だったからね。そういえば先週、「気になることがあるけど、マイルCSが終わってからにする」って言ってたけど、なに?

 「それでトリガミになったんです」

 どういうこと?

 「鈴木さんの買い目を見たら、1点だけ買ってない馬連があったんです。グランアレグリアとサリオス」

 うん。結果的に2頭の馬連は3.3倍。これでは1点勝負じゃなければ割が合わないと思って買うのをやめたんだ。

 「それがヒントだと思って」

 ヒント?

 「引きの悪い鈴木さんが買わなかった馬券が来るって」

 失礼だね。

 「それで2頭の馬連をがっつり買い足したら…。それでトリガミ」

 ドンマイ。

 「鈴木さんに言われるとは…」

 そんなに落ち込まないでよ。でも、今週のトリは僕が務めさせてもらうよ。

 「はいはい」

 じゃあ桃ちゃんからどうぞ。

 「そんなに早く予想に入っていいんですか。今週のジャパンCは『世紀の一戦』と呼ばれているほど注目の大一番なんですよ。鈴木さんだって、先週の『甘口辛口』に書いていたじゃないですか」

 「甘口辛口」とは、サンケイスポーツの最終面に毎日載っている名物コラム。そこで僕が今週のジャパンCについて書いたことを桃ちゃんは言っているのだ。

 「誰に向かって言っているんです」

 ユーザーの皆さん。

 「はいはい」

 そのコラムをここに再録する。

◇◇◇◇◇

 「事実は小説より奇なり」のことわざ通り、あまりにもリアリティーに欠ける絵空事で小説に書くのもはばかれることがたまに起こる。史上最年少の18歳1カ月でのタイトル二冠奪取と八段への昇段を果たした高校生プロ棋士、藤井聡太がいい例だ。

 16歳で将棋界の最高位の一つである竜王となった主人公らの青春の日々を描く人気ライトノベル「りゅうおうのおしごと!」(GA文庫)。その作者、白鳥士郎は藤井八段の登場に「将棋界は創作を超えた」と脱帽した。

 競馬でも「ありえない話」が現実になろうとしている。29日のジャパンCで、史上3頭目の無敗3冠馬コントレイル、史上初の無敗3冠牝馬デアリングタクト、史上初の芝GI8勝馬であり2018年に牝馬3冠を達成したアーモンドアイが激突する。小紙は「世紀の大一番」として連日のように報道しているが、その表現は大げさではない。無敗の3冠馬が同じ年に2頭誕生するのは初めてだし、3頭の3冠馬対決も史上初だから。

 JRA賞馬事文化賞と山本周五郎賞を獲得した小説「ザ・ロイヤルファミリー」(新潮社)のクライマックスは3強による有馬記念。作者の早見和真は「その人気三頭の単勝オッズは、おそらくは歴史上においても類を見ない混戦」とつづる。3頭のオッズは2・8倍、3・1倍、3・1倍。「三つ巴の戦いに対するファンたちの期待が反映されていると言えるでしょう」と続ける。

 だがそこに無敗の3冠馬も芝GI8勝馬もいない。作者は、そんな設定を思い浮かべたとしても、あまりにもリアリティーに欠けると発想をすぐに打ち消したはずだ。フィクションより「ありえない」現実の結果はいかに-。

◇◇◇◇◇

 3頭のオッズが2・8倍、3・1倍、3・1倍になったら「ザ・ロイヤルファミリー」が予言してた、って話題になりそうだね。これでジャパンCの特別感も出せたはず。じゃあ桃ちゃん、予想よろしく。

 「はいはい」

 本命は3強の中にいるの。

 「もちろん。アーモンドアイです」

 桃ちゃんは、アイちゃんのことをずっと応戦しているもんね。まさにアーモンド愛。

 「引退レースですよ。本命を打って応援できるのは今回が最後。無敗の3冠馬2頭を破って有終の美を飾り、9冠馬になって生まれ故郷に戻ります」

 「キュウリになって故郷に戻るってどういうこと?」

 厨房(ちゅうぼう)から店主のミチヤが聞いてきた。

 「キューカンバー(Cucumber)じゃなくって9冠馬!」

 「キュウリに割りばしを4本差すと、お盆のお供え物の精霊馬になるね。ご先祖さまがそれに乗って早く帰って来られるように脚の速い馬を意味しているだってさ」

 「ミチヤさん、話を変なところに持っていかないでください!」

 「ごめんね」

 本命の理由はアーモンド愛だけじゃないよね。

 「もちろんです。東京の芝2400メートルでは、オークスとジャパンCを勝っています。中でもジャパンCは2分20秒6という、とてつもなく速い時計でした。しかもアイちゃんには、2頭の無敗3冠馬にはない、強い相手と戦い続けた経験があります。3歳の2頭はまだ年長馬と一度も対戦していないけど、アイちゃんは3歳のジャパンCから強豪古馬を相手に勝ってきています。海外でも勝っているんですよ。今回は最後にこの経験の差が出てくるとみています。あとは確変中で無双状態のルメールさんの手綱に託します」

 ルメールがこの秋、勝ちまくっている理由って単純明快なんだよ。コロナ禍で世界的ジョッキーたちが一人も短期騎手免許を使って来日しなかったから。普通の年なら、秋はムーア、スミヨンといったヨーロッパの第一人者が来日して強い馬に騎乗するけど、今年はJRAはOKを出しても政府がビザを出さなかったから来日できなかったって話だよ。というわけで、ルメールに強い馬が回ってくるから勝ちまくれるってわけ。

 「ここ2週の私みたいに『ずるい!』って言わなかったから、ルメールさんが乗っても、鈴木さんの本命はアーモンドアイじゃないってことですね」

 そうだよ。どの馬を本命にしようかずっと頭を悩ませていたけど、熟考に熟考を重ねてコントレイルに決めたよ。

 「過去2頭の無敗3冠馬は、ともに菊花賞の次のレースで負けていますよ」

 もちろん知っているよ。シンボリルドルフはジャパンCに出走して、カツラギエースに逃げ切られて3着。ディープインパクトは有馬記念に出走して、早めに抜け出したハーツクライを捕らえ切れず2着。でも、2頭とも少し体調に不安があったって話だし、ルドルフはマークする相手を間違えたというところもあったようだし。ディープはいつもの競馬に徹したのに直線でいつものように飛ばなかったから、体調が万全ではなかったんだろうね。

 「ディープを負かしたハーツに乗っていたのはルメールさんです」

 それはすごく気になるけど、今年のジャパンCのルメールはマークされる側だからね。2番枠アーモンドアイ、6番枠コントレイルという並びからしても、好位のインで競馬をするアーモンドアイをコントレイルの福永祐一がぴったりマークしてレースを進めるはずだよ。こうなると、最後の直線は2頭の地力勝負に持ち込まれるはず。菊花賞で想像以上の勝負根性を見せたコントレイルを上位に取ったというわけ。

 「でも、過去の無敗の3冠馬と同じように、コントレイルには体調不安説が流れていたみたいじゃないですか」

 そこは気になったけど、矢作調教師ならコントレイルの体調が本物ではなかったら「勇気ある撤退」を選択したはずだけど、そうしなかった。ということは、体調に問題はないと判断したい。実際、矢作調教師は1週前追い切りでは不満を述べていたけど、最終追い切り後は「普通の馬では1週前の状態からきょうの状態は考えられませんが、それだけ上がってくるのがコントレイル」って。6番枠に決まったときもトレーナーは「(この1週間で)想像を超えて良くなった。(状態が)一度落ちて上がってきたのはむしろいいかも。心配事はなくなった。すがすがしい気持ちで送り出せる」と話していたよ。超回復といったところだね。追い切りでまたがった福永祐一も「非常にいい動きだったと思います。こちらも驚くくらいの良化度合いを見せてくれています」と話しているので問題ないだろう。

 東京の芝2400メートルは実力を発揮しやすい舞台。それだけにどの馬を力を出し切って素晴らしいレースを見せてほしいね。

 ◎⑥コントレイル
 ○②アーモンドアイ
 ▲⑤デアリングタクト
 △①カレンブーケドール
 △④キセキ
 △⑮グローリーヴェイズ

《3連複》
 ②⑤⑥ 5000円

《3連単》フォーメーション
 ⑥→②⑤→②⑤(2点) 各1000円
 ⑥→②⑤→①④⑮(6点) 各500円

 「最後にデアリングタクトについて言わせてください」

 3強の中で、この馬は一度も触れなかったね。どうぞ。

 「今年は牝馬の年です。大阪杯も宝塚記念も秋の天皇賞も高松宮記念も安田記念もスプリンターズSもマイルチャンピオンシップも牝馬が勝ちました。そのうち、高松宮記念、大阪杯、安田記念、安田記念は牝馬のワンツー決着。3冠牝馬が3歳時にジャパンCに出走したのはジェンティルドンナとアーモンドアイの2頭。ともに勝っています。というわけで、今年のジャパンCはアーモンドアイとデアリングタクトのワンツーを期待してます。あとカレンブーケドールも応援します」

◇◇◇◇◇◇◇◇

主な登場人物

ミチヤ…ひいきの居酒屋の店主。ずぶの素人から、どこまで競馬に興味を持ってくれるか

桃ちゃん…ひいきの居酒屋のアルバイト。馬券のセンスが抜群の競馬女子(UMAJO)。ちなみに、居酒屋ブルースのUMAJOは、酒場のあすピー→バイトのマヤ姉(ねえ)→桃ちゃんと変遷

カズマサ…夢の中の(?)ひいきの居酒屋の店主。馬券はデータ派。この居酒屋ブルースの世界から去っていった

琢磨…夢の中の(?)ひいきの居酒屋のスタッフ。好不調の波はあるが、馬券が当たると好調が続く。カズマサ同様、この居酒屋ブルースの世界から去っていった

もりやさん…夢の中の(?)ひいきの居酒屋の常連客。競馬とお酒が大好き。カズマサ、琢磨と一緒にこの居酒屋ブルースの世界から去っていった

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