悩んだり、イライラしたり、日々浮き沈みする心を穏やかにしたい……。そんな悩みに、心理カウンセラー僧侶の羽鳥裕明さんが寄り添い、仏教と心理学の視点からヒントをくれるこの連載。1回目は、「ネガティブな自分」との向き合い方について考えてみましょう。 はじめまして、心理カウンセラー僧侶の羽鳥裕明です。この連載で、読者のみなさんの心が少しでも穏やかになるヒントをお伝えしていけたら、と思っています。 私は現在、東京や群馬を拠点にカウンセリングを行ったり、法事を行ったりしています。僧侶になる前は、電子回路の設計エンジニアとして9年間、企業に勤務していました。エンジニアになったのは、家電販売店に生まれ育ったことが影響しているかもしれません。 幼かったころの私は、父親のトラックの助手席に乗って、いろいろなお宅に出かけたものです。出されたお茶を飲みながら、話題に上る家庭内のもめごとや大人たちの悩みごとなどに耳を傾けていた記憶があります。その後、大学では好きな電子工学を学びながらも心理学にも興味を引かれ、縁あって31歳のときにお寺の娘さんと結婚して僧侶となり、心理カウンセラーとしても活動するようになりました。
「否定」をすると、苦しみが増す
長年多くの悩み相談を承ってきましたが、昔は夫婦や嫁姑問題など家庭中心だった女性の悩みが、最近では、職場など社会そのものに移ってきたと感じます。職場の同僚と待遇や仕事の負担度を比較したり、管理職になったけれど周囲がついてきてくれなくて自己嫌悪に陥ったりする。この先いいことなど一つもないように思い、そんなネガティブな発想をする自分のことをどんどん嫌いになる。 心理学では、頭に浮かぶ考えによって、物事を偏ってとらえてしまう状態のことを「認知のゆがみ」と呼びます。しかし、実はそうやって自分をダメと位置づけて否定することが、よけいにその人の苦しみを深めている、という側面もあるのです。 現代女性が直面している苦しみと同様に、仏教用語でも、「四苦八苦」という苦しみがあるとされています。体の不調でも、人間関係でも、自分の思うようにならないことに葛藤するのは、お釈迦様の時代からずっと続く、人間の普遍的な感情です。このような苦しみをいかに解釈し、心穏やかに生きていけるかを考えるのが仏教です。同様に、心理学でも心穏やかに生きるために「認知のゆがみ」を修正することが大切であると考えます。 【ミニ知識】人の悩みに関わる仏教用語の深い意味 四苦八苦 四苦八苦という言葉は、「生・老・病・死」の四苦に、「愛する人と別れること」「嫌いな人に会うこと」「求めるものが得られないこと」「人間の肉体と精神が思うがままにならないこと」という四苦を加えた8つの苦しみがこの世にあることを意味する仏教用語。私たちが日々感じる苦しみには「思うがままにならないこと」という共通点があります。
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August 31, 2020 at 09:00AM
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