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Sunday, May 3, 2020

佐野元春インタビュー「現実逃避するだけではなく、そこから先に見える景色を楽しみたい」 - マイナビニュース

佐野元春インタビュー「現実逃避するだけではなく、そこから先に見える景色を楽しみたい」

緊急事態宣言下で外出自粛要請が続くなか、佐野元春が自らのバンド、ザ・コヨーテバントと新曲「この道」を発表。

メンバーそれぞれが自宅で演奏した音源を佐野がミックスし、さらにミュージックビデオでは「Social Distancing Version」と銘打ち各々の演奏風景が映し出されている。今年でデビュー40周年を迎え、常に時代の冒険者である佐野元春は今何を考えているのか? リモートインタビューで迫った。

―リモートでのインタビューになりますがどうぞよろしくお願い致します。

佐野:はい。よろしくお願いします。

―最近はどんな風に時間を過ごしていらっしゃいますか?

佐野:手短に答えるよ。床屋に行きたい。

―いきなり佐野さんらしいパンチラインで、なんだか安心しました。自分なりの部屋での過ごし方、マイブームはあったりしますか?

佐野:社会のことを考えると楽しめないのが本音です。

―家で音楽を聴いたり、映画を観たり、本を読んだりされている方が多いと思いますが、佐野さんから何かおすすめはありますか?

佐野:普段読書できないから、こういう期間を利用して、読みたい本を読みまくってるんだ。その中でおすすめしたいのが鮎川信夫さんの『吉本隆明論』。これはちょっと変わった本なんだよ。鮎川さんも吉本さんも、詩人であり現代批評家でもあるんだけど。この本、一方から読むと鮎川さんのテキストで、逆サイドから読むと吉本さんのテキストになっている。だから真ん中で鮎川さんの「吉本隆明論」と、吉本さんの「鮎川信夫論」に分かれているんだ。

―面白い!!  いつの本なんですか?

佐野:これはね、1982年が初版。まだお二人がご健在の時です。

―これは古書じゃないともう手に入らないんですか?

佐野:だと思う。僕は古本屋から送ってもらった。だからね、だいぶ汚れていたんだ。こういうご時世だから、この本が来た時にシューっと消毒して陰干ししました。

―荷物が一つ届いても、部屋や事務所に入れるのに気をつかわないといけないですよね。

佐野:当然だね。

―そんな今の状況を佐野さんはどんな風にとらえていらっしゃいますか?

佐野:ある意味、来るべき非接触社会の予行演習だと思っています。

―その流れでいうと、4月8日に佐野元春 & ザ・コヨーテバンド「この道」のSocial Distancing VersionがYouTubeにアップされました。

佐野:状況は厳しいです。だから、ファンのみんなに落ち着いてもらいたいという気持ちで曲を書きました。曲はすぐできた。その後、”ソーシャル・ディスタンシング”をコンセプトにして、バンドのメンバーとオンラインでレコーディングをしてみようと、そういうアイディアが浮かびました。で、実行しました。

・”ソーシャル・ディスタンシング”をコンセプトにした「この道」のミュージックビデオ

「次々に送られてくるみんなの演奏と映像を見て、僕は部屋の中で、ちょっと泣きました」

―オンラインでのレコーディングは具体的にどういう風に?

佐野:詳しく言うと、僕が演奏して歌ったデータファイルをバンドのメンバーみんなに共有してもらって、メンバーそれぞれ自宅でダビングし、ダビングしたファイルがまた僕のところに戻ってきて、僕がミックスをして出来上がりました。ただ、今回は音だけではなく、みんなそれぞれの部屋で演奏しているムービーを自撮りしてもらった。やろうと思えばソーシャル・ディスタンシングでもセッションできるんだとわかって楽しかった。

―佐野さんが一人で歌うのではなく、バンドでやると。

佐野:そうだね。バンドの僕らは離れていても絆は壊れることはない。それをテーマにした共同作業だった。僕一人じゃないっていうことです。

―演奏したり、映像をまとめたりする時にこだわったポイントは?

佐野:実はバンドのメンバーには僕から何も言わなかった。けれども、演奏も動画も最高のものを送ってくれた。で、このバンドすごいなと思った。さすが結成15年目と思った。次々に送られてくるみんなの演奏と映像を見て、僕は部屋の中で、ちょっと泣きました。感動してね。

―バンド15年の絆が、3分ほどの映像と演奏に凝縮されていたと。素晴らしいですよね。

佐野:ありがとう。また曲がいいんだよ、すごく。自分で言うのもなんなんですけど(笑)。

―シンプルなのにとてもいい曲です。

佐野:子ども達とも一緒に歌えるような曲ですよね。

―歌詞も”いつか きっと 願いが叶うその日まで”といった感じでお子さんも一緒に口ずさめるような言葉ですしね。個人的には”私たちはきっと幸せになるだろう”の一節が琴線に触れました。

佐野:この曲は「私」の歌ではなく「私たち」の歌だ。特に今は自分のことと同じくらい同胞のことも思いやらなくちゃいけないと思う。コロナのことでこの先、困難な状況に陥る人たちも出てくると思う。そんな時、この歌のことをどこかで知ってくれたらいいなと思う。

―同感です。そして近い将来、ライブでこの曲をみんなで歌える日が来て欲しいですね。

佐野:そうだね。今回の「この道」は曲もムービーもしばらくの間、パブリックドメインとして、ネット上に置きます。なのでみんな気に入ったらカバーしてもらってもいいし、どういう風に形を変えてもらっても構わない。

コヨーテバンド15年の歩みで表現してきたこと

―今年は佐野さんデビュー40周年とザ・コヨーテバンド結成15周年なのですが、コロナ禍でアニバーサリーライブは延期になっています。そんななか、6月10日にコヨーテバンド結成15年のベストアルバム『THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005 - 2020』が出ますよね。しかも内容が凄くて、ディスク1に16曲、ディスク2に18曲。その内リミックスが5曲、新曲も1曲入っていて、単なるベスト盤ではないということがひしひしと伝わってきます。

佐野:ええ。これは最高のベストアルバムです。僕とコヨーテバンド15年間の仕事をまとめて、ファンに楽しんでほしい。これをきっかけに10代、20代、30代の新しい音楽リスナーも僕らの音を楽しんでくれたらいいな。きっと気に入ってもらえると思う。

―ディスク1とディスク2に分けた意図は?

佐野:ディスク1は、ファンが愛してくれた楽曲を集めたメインストリーム・サイド。そしてディスク2は、コヨーテバンドのアイデンティティを主張したオルタナティブ・サイド。そんな感じかな。

―曲順も年代順ではないのですが、曲順にも何かストーリーがあるのでしょうか?

佐野:そうだね。ディスクを鳴らしてくれたらもう最後まで聴きたくなるような、一つのストーリーを持ったプレイリストになっています。

―そのストーリーというのは聴いた人が感じればいいということですかね?

佐野:もちろんです。ふりかえってみて、この15年間、僕らはいろいろなことがあった。自然災害のこと、政治のこと、身の回りのこと。社会が激しく変容していってるように見える。自分はソングライターとしてこの時代に生きて思ったことや感じたことを曲として綴ってきた。このベストアルバムにはきっと聴き手のみんなと響きあうストーリがあると思う。

―ということは、ある意味その2000年代の15年間の時代をパッケージしたと言ってもいい?

佐野:まさにその通りです。

―2000年代はSNS時代で、たくさんの情報に目を奪われてしまいがちですが、このベスト盤を聴くことで、あの時はあんなことがあったな、ということを私たちが思い出すきっかけにもなりそうですね。

佐野:そうだね。ローリングストーンマガジンを読んでいる人達がロックンロール好きだということを前提にして発言すれば、僕らはロックンロール音楽を武器にして、このくそったれな現実を乗り越えていくし、それを諦めたりしない。

―ベスト盤に入っている新曲「エンターテイメント!」が先行でリリースになりました。歌詞の”奇妙なガスに満ちているこの危うげな世界”という部分は今の状況を予言しているかのような内容です。

佐野:曲自体は去年書いて、レコーディングは今年しました。歌詞には時として未来を予見したような表現が出てくるんです。それが何故なのかは僕にもわからないです。

―なるほど。

佐野:ひとことでいうと、エンターテイメントへの愛と皮肉の背中合わせって感じ。

―曲の中に”束の間でいい イヤなことを忘れる夢のような世界”という歌詞が出てきますけども、佐野さんはエンターテイメントの役割をどんな風にとらえていますか?

佐野:僕自身はエンターテイメントに触れて現実逃避するだけではなく、そこから先に見える景色を楽しみたいと思う。だから現実逃避するだけのエンターテイメントはあんまり好きじゃない。いずれにしてもぼんやりしたものでなく、何か力強いメッセージがあるものが好きです。

―それは佐野さんが奏でる音楽もやはりそうでありたい、そうであるということでしょうか?

佐野:まぁね。何故ならロックロール・ミュージックってそんなものだから。

―こういう状況の中で「音楽の力」が叫ばれていますが、佐野さんの中で音楽の役割をあらためてどんな風に感じていますか?

佐野:普段気づかないことに気づかせてくれるもの。僕はミュージシャンなので音楽の力を信じている。音楽は今のように厳しい局面を乗り切ろうというときには、けっこう力になると思う。自分も表現者としてできることをやっていきたいと思っています。

―最後になりますが、読者へこの機会に伝えたいメッセージがあればお願いします。

佐野:まず何かプランを立てる。そしてルーティンを維持する。そしてTVから離れて過ごす。

―TVから離れて過ごすというのは結構大事ですね。

佐野:陰謀の渦に巻き込まれないようにね。


『THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005 - 2020』
佐野元春 & THE COYOTE BAND
DaisyMusic
6月10日発売

佐野元春 & THE COYOTE BAND マーチャンダイジング販売サイト
http://mws.shop-pro.jp

本記事は「Rolling Stone Japan」から提供を受けております。著作権は提供各社に帰属します。

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May 03, 2020 at 04:09PM
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