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Thursday, November 25, 2021

僕は不老不死のベニクラゲになりたい。ベニクラゲを食べた魚は不老不死になるの?|読むらじる。|NHKラジオ らじる らじる - nhk.or.jp

僕は不老不死のベニクラゲになりたい。ベニクラゲを食べた魚は不老不死になるの?

22/01/16まで

子ども科学電話相談

放送日:2021/11/21

#子ども科学電話相談#いきもの#サイエンス#SDGs

11時台を聴く
22/01/16まで

NHKのSDGsキャンペーン「未来へ17action」の関連イベント、「未来へ17action~渋谷ではじめよう」の一環として東京・渋谷のヒカリエホールで開催された<子ども科学電話相談>。ゲストに長濱ねるさんをお迎えして、公開生放送でお届けしました。おざわふうたくん(小学2年生・東京都)からの質問に、「水中の生物」の林公義先生が答えます。

【出演者】
石井アナ:石井かおるアナウンサー
山本アナ:山本志保アナウンサー
林先生:林公義先生(北里大学海洋生命科学部講師)
藤田先生:藤田貢崇先生(法政大学教授)
長濱ねるさん:ゲスト・NHK・SDGs キャンペーン 「未来へ17action」PR大使
ふうたくん:質問者


石井アナ: 会場に来ているお友達からの質問です。おざわふうたくん、いますか? 手をあげてもらえますか?
山本アナ: はい、元気よく手をあげてくれました。グレーのモコモコのジャンパーを着ていますね。こんにちは~。
ふうたくん: こんにちは~。
山本アナ: はい、東京から来てくれました。質問、どうぞ。
ふうたくん: あの、僕がもしも動物になれるならベニクラゲになりたいんですけれど、どうしてかというと、ベニクラゲは不老不死だからなんだけど、ベニクラゲは、環境が変化したり、ほかの魚に食べられると、普通に死んじゃうこともあるんでしょうね。
山本アナ: 「ベニクラゲになりたい」というふうたくん。不老不死のクラゲじゃないか、と。
ふうたくん: それで、ベニクラゲを食べた魚は、不老不死になれるんですか?
石井アナ: おー、なるほど~。ベニクラゲになりたい。それは不老不死、死ぬことがないから。でも、ほかの魚などに食べられてしまったら、その食べた魚が今度は不老不死になるのかな、ということが気になるんですね。
ふうたくん: はい。
石井アナ: わかりました。これは林先生ですね。
林先生: はい。ふうたくん、こんにちは。
ふうたくん: こんにちは~。
林先生: えーっとね、そう、ベニクラゲね。この質問はとってもめずらしい質問で、例えば「不老不死」っていうことばを、ふうたくんが知っているということ自体、おじさん、すごく驚いたんだけれども、生きてるもの、たぶんすべてが、「自分はいつまでも、老いない、年をとらないで生きる」っていうことを望んでいると思うんです。それが、「不老不死」っていうことばの意味になるんだけれども。
ふうたくん: はい。
林先生: 僕自身としては、もし地球上のすべての生物が不老不死になったら、ちょっと困ることが起きるかなとも思うんだけれども、ふうたくん、どう思う?
ふうたくん: うーん、確かに僕も……。
林先生: うん、そうだね(笑)。確かに、理由はなかなか言えないんだけども、ちょっと困ることになるかもしれないね。
じゃあまずベニクラゲっていうのは、一般のクラゲと違って不老不死、つまり、一度生まれたベニクラゲは、ある状態になってから、また元の自分のベニクラゲに戻れて、これが繰り返されるから不老不死っていうんです。これは、「多細胞動物」といって1個の細胞ではなくてたくさんの細胞を持つ、私たちもそうですがそういうものでできているすべての生きものの中で、不老不死の生活史を持っているのは、今のところ、このベニクラゲだけなんです。
ふうたくん: はい。
林先生: だから、「ベニクラゲを食べたら不老不死になる」っていうことを考えるのは、普通だと思うんですよね。「ところがどっこい」っていうのが最後の正解なんですけれども。
まずね、ふうたくん。一般的にクラゲってどういう生活をしているのか、わかります?
ふうたくん: わかる。
林先生: わかる! あっ、それはいいな。じゃあ、オスとメスがいるってことも知ってるね。
ふうたくん: うん。
林先生: じゃあ、オスとメスのクラゲから卵が受精して1つのクラゲになっていって、そのクラゲは最初水の中を漂っているわけだよね。
ふうたくん: うん。
林先生: 漂っていたクラゲが、今度は下のほうの岩だとかなにか物にくっついて、今までプラプラ泳いでいたかたちとはちょっと姿が変わって、「触手」という腕が出てきてイソギンチャクのような感じになるんだよね。
ふうたくん: 知ってる!
林先生: ああ、知ってる! もう、そこまでいったら問題ないな。それで今度そのイソギンチャクみたいなのが、傘みたいに何段も増えていって、そこから1個ずつ傘が外れて、1個ずつクラゲになっていく。だから何段もあるクラゲというのはお友達ではなくて「クローン」といって、同じ母親と父親からできた同じ動物、つまりきょうだいとしてたくさんいるものなんだよね。
ふうたくん: はい。
林先生: それで今度その1センチくらいのベニクラゲなんだけど、これがどういう状態になると不老不死の状態になるのかというと、クラゲだから、当然エネルギーがだんだん衰えてくると死んでしまったり、傷がついてしまうと死んでしまうわけだよね。ところがベニクラゲに関しては、「ちょっと僕は年をとったかな……。ちょっと体に傷がついちゃって、このままじゃダメだな」という感じになると、不老不死の準備を始めるんですよ。
ふうたくん: はい。
林先生: だから一般のクラゲだと、だいたいそこでおしまい。つまり海底に落ちて、腐ってアウト。またはほかの動物に食べられて、姿がなくなるということなんですよね。
ふうたくん: なるほど……。
林先生: ところがベニクラゲに関しては、自分でそういうことを感じると一度海底のほうにずーっとおりていって動きを止めて、プヨプヨしたやつを全部外してしまって小さな肉だんごみたいなかっこうになるの。
ふうたくん: へえ~。
林先生: その肉だんごが、2~3日たつとエネルギーを回復してまた触手が出てきて、さっき言ったような傘になってどんどん増えていく。だから、どうしたって同じDNAを持ったところから生まれた、また同じDNAのものが繰り返し出るわけだよね。そういうことができるので、不老不死というふうにいわれている特殊なやつなんだけど、でも例えばほかの魚に食べられたり、例えばオサガメなんていうのはちょっと小さいから食べないかもしれないけど、食べられておなかの中に入ってしまうと、さすがのベニクラゲも消化液で消化されちゃうでしょう? だからそこでベニクラゲは、「はい、さよなら」。終わり。
ふうたくん: はあ……。
林先生: そこでベニクラゲは死にます。だから、食べられたもの、または肉だんごの状態のときに、食べられたり傷を負ってそのまま命を落とすようなことがあれば、ベニクラゲの不老不死はそこでおしまいになっちゃうんですね。でもそういうことがなくて、自分でストレスを感じると、「あっ、不老不死にならなきゃ……」っていうことの準備に入るみたいなんですよ。
ふうたくん: へえ……。
林先生: だから、そういう点は、すごいな。今、この不老不死のしくみを一生懸命研究者の先生たちが考えていて、ベニクラゲの不老不死の、つまり、一回肉だんごになってまたもう一回、自分の体をクローンとして生き返らせることができる。つまり、エネルギーを新しいものに変える、若返りができるということですね。そういう状況を調べていけば、いずれ私たち、多細胞のほかの動物にもそのしくみを取り入れれば、不老不死も夢ではないんじゃないかということでやっています。
ふうたくん: はい。
林先生: でもね、SDGs的な考え方を持つと、そういう研究というのはすばらしい研究で、それがもし成功したらやっぱりすごいことだろうとは思うんだけれども、地球上で生まれたものが死んで、またほかの動物や植物のエネルギーに変わっていくということが今あるから、私たち、いろんな生物がどんどん次々に命をつないでいくことができてるわけだよね。

ベニクラゲだけは、本当に特殊なんだよね。だからすべてベニクラゲみたいに不老不死になっちゃったら、やっぱりちょっと困るかなとも思うんだけれども、ふうたくんも、さっき一生懸命考えてくれて、「やっぱり困る」ということになったから、たぶんおじさんと同じ考えで、そうなったと思うんですね。

きょう会場においでの皆さん。ふうたくんの質問にあった、「ベニクラゲは不老不死」ということを知ってる人がいましたら、手をあげてください。……あっ、何名かいた! その方たちは、不老不死の研究が成功することを願っていますか? そう願っている方、手をあげてみてください。

石井アナ: あっ、ふうたくんを含めて……、4人!
林先生: ああ。じゃあもしそうだとしたら、病気をしたりなんかしないようにして、同じDNAを持った、要するに自分の不老不死の体がまたそこで本当に終わってしまったらダメだから、そうすると、藤田貢崇先生、バクテリアだとかウイルスだとか、そういうものにも打ち勝たないといけないわけですよね。
藤田先生: そうですね。
林先生: そうじゃないと、不老不死はまったくできなくなりますね。
石井アナ: ふうたくん、先生のお話を聞いて、どう思いましたか?
ふうたくん: すごかった……。
林先生: はははは。ほんと、すごい話なんだよねえ、この不老不死の話っていうのは。
ふうたくん: 知らなかった。
石井アナ: いろいろ考えると知恵熱が出てしまいそうですね。でも、いろんな先生にヒントをもらいましたね。きょう、ゲストで来てくださっている長濱ねるさんは長崎県の五島列島の中通島で育ったから、こうした海の生きものたちにも親しんでこられたんでしょうね。
長濱ねるさん: いや、でも私、ベニクラゲが不老不死って知らなかったので、ふうたくん、肉だんごになるのも知っていたので、すごく詳しいなってびっくりしました。
石井アナ: ふうたくんは、どうしてこんなに水の中の生きものに興味があるんですか?
ふうたくん: ……あんまり興味ない。
石井アナ: ええっ?!
林先生: はははは。
長濱ねるさん: 興味ないのに詳しかった?
石井アナ: えっ、えっ、どういうこと? ベニクラゲの不老不死に興味がある、っていうこと?
ふうたくん: はい。
石井アナ: そうなんですねえ。まさかの一点突破ですね。
長濱ねるさん: いいですね。
石井アナ: でもとてもいろんなことを考えさせてくれる、いい質問をしてくれました。ふうたくん、どうもありがとうございました~。
ふうたくん: ありがとうございました~。
長濱ねるさん: ありがとうございました~。

【放送】
2021/11/21 子ども科学電話相談 「水中の生物」 林公義先生(北里大学海洋生命科学部講師)

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