Kroiが6月23日にメジャー1stアルバム「LENS」をリリースした。ポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsから発表された本作には、“カルト”をテーマにした独特なテイストのミュージックビデオが公開中のリードトラック「Balmy Life」など、R&Bやファンク、ロック、ヒップホップといったさまざまなジャンルをミックスさせた全12曲を収録。CD+DVD盤には、彼らが今年3月に東京・ WWW Xで開催した「3rd EP『STRUCTURE DECK』Release Tour "DUEL"」最終公演のライブ映像が収録される。
音楽ナタリーでは、メンバーの内田怜央(Vo)、長谷部悠生(G)、関将典(B)、益田英知(Dr)、千葉大樹(Key)にインタビュー。「LENS」の制作の裏側や、収録曲の魅力について話を聞いた。
取材・文 / 黒田隆太朗 撮影 / トヤマタクロウ
最近おしゃれになりすぎた
──関さん、腕にRage Against The Machine「The Battle of Los Angeles」のジャケットのタトゥーを入れたんですね。
関将典(B) お! そこ気付いてもらえてうれしいです。たまに「ミシュランですか?」って言われるんですよ。
内田怜央(Vo) ミシュランだと思うやつなんなの?(笑)
益田英知(Dr) (笑)。
──素晴らしいアルバムが完成しましたが、まずは今作の制作においてとっかかりになった楽曲を教えてください。
関 アルバムのレコーディングが始まったのは去年の8月で、「夜明け」という曲を皮切りに作業を進めていきました。その後「HORN」や「Page」など「STRUCTURE DECK」(2021年1月発表の音源集)にも入っている曲をレコーディングしていたので、その頃に「LENS」を並行して作っていたんです。
──なるほど。
関 なのでわりと制作期間は長くて、今回のアルバムは毎月スタジオに入って10カ月くらいかけてじっくり作りました。
──「夜明け」はパーティ感がある楽曲で、今作の中では一番テンションが高いですよね。
内田 Kroiって俺的にはバカなバンドなんです。でも最近おしゃれになりすぎてる感じがあったので、その調整のためにもこういう曲も入れようかなと(笑)。
千葉大樹(Key) ここまでにぎやかしの曲は意外となかった気がするよね。
内田 そうそう。僕らはにぎやかしソングが好きで、本当はこういうデモがいっぱいあるんですよ。例えば「昆虫ワナビー」とか(笑)。
千葉 「昆虫ワナビー」はいい曲なので、今後リリースすると思います。
──内田さんは、虫とか動物が好きですよね。
内田 やっぱ動物オモロいんですよね。
──今作も魚の曲が1曲あります。
千葉 「Pirarucu」ですね。
内田 小さいときからめっちゃ好きで、ピラルクとオカピとシャチは特に好きです。
──「Pirarucu」は繊細でメロウな音が気持ちいいです。
内田 デモができたのはかなり前なんですけど、その頃すごくメランコリックな感じだったんですよね(笑)。ときどきあるんですけど、「Pirarucu」は気持ちで作ったというか、あんまり曲調を考えて作った曲ではないです。今作だと「feeling」なんかもそうなんですけど、そういう状態で作るとだいたい暗くなるので身から出たサビ的な曲です。
──ナーバスになっていた時期があるんですね。
内田 いや、時期というか1日、2日のことなんですね。妄想が膨らみすぎちゃって、「自分から音楽を取ったら何が残るんだろう?」とか考えちゃったりして。
関 この曲ができたのって、2年ぐらい前だよね?
長谷部悠生(G) うん。今名前が出た「Pirarucu」「夜明け」「feeling」は同時期にデモができたのでだいぶ古い曲です。
この間作った曲やろーぜ
──今作の中で以前からあった曲はほかにありますか?
関 「a force」もそうかな。千葉がバンドに入る前の曲で、この曲はできたときのエピソードがオモロい曲ですね。
──というのは?
関 4人でスタジオに入る日に、悠生が仕事で30分くらい遅れてきたことがあったんです。そこで先に入った俺と益田と怜央の3人でジャムっている内にできた曲なんですけど、悠生が到着してから何も知らせずに「この間作った曲やろーぜ」っていきなりこの曲を始めて(笑)。
内田 (笑)。
関 その場で作ったばかりだから遅れてきた悠生が知っているはずないんですけど、オドオドしながら知っている風に弾いて誤魔化そうとしているんですよ(笑)。
──かわいそうですよ(笑)。
長谷部 週1の貴重な時間に自分だけやることやってないのヤバいなって思って焦りました(笑)。
関 めっちゃ焦ってたよね。
内田 俺ら焦るほど厳しいバンドじゃないから(笑)。
──できあがった楽曲は1980年代のシンセポップからの影響を感じました。千葉さんが入ったことでアレンジも当初と変わっているんでしょうか。
千葉 Royksoppっていうユーロのシンセポップっぽくしたいとは思っていました。今言っていただいたように少し古い感じに聴こえるのは、ソリーナというストリングスシンセを入れているからかもしれないです。1973年製の機材で、シンセでストリングスを弾いているみたいな独特な音を出せるんですよ。
──アルバムを通して言えば、ギターはワウを使った音色も印象的でした。
長谷部 フィルターでオートワウをかけていて、「shift command」や「Balmy Life」で使っています。
内田 エフェクトが好きなんですよ。
関 悠生はギターの音を作るとき、毎回フィルターの話してるよね(笑)。
内田 益田さん、震え声で「またフィルターの音がする!」って言ってたから(笑)。
──エフェクターにこだわりがあるんですね?
長谷部 好きです。インパクトがあるし、曲なじみがいいというか。Kroiの音にハマるんですよね。
Kroiのジャムシリーズ
──「STRUCTURE DECK」の「marmalade」に引き続き、「ichijiku」というインスト楽曲があります。これもパンなどに塗るジャムと、音楽のジャムセッションをかけたものですか?
関 ご名答です(笑)。
千葉 このシリーズはずっとやっていくと思います。世のジャムがなくなるまで。
──(笑)。ボンゴの音も入っていますが、やっぱりこうした曲ではKroiの遊び心が出ますね。
千葉 そうですね。楽器がフィーチャーされる曲なので、好きにやったらいいかなと。でも前回は本当に録っただけのジャムだったので、今回はシーケンス組んだりしっかりと作った感じはあります。
関 作曲は千葉なんですけど、俺がビートとベースを基盤としたジャムが欲しいと伝えて、3日後くらいに上げてくれました。
千葉 フュージョンっぽい曲をやってみたいと思っていて、今風のフュージョンを意識しました。そこにドラムとベースを基盤にした曲っていうのと、あとは速めのスラップをしたいと言っていたので、その発想を足してこの形になりました。
──ドラムはカチッとしている印象です。
益田 そこはけっこう意識していました。「夜明け」を去年の8月に録って、最後のレコーディングは今年の4月だったので、その期間にだんだんと勝手をつかんでいくところがあって。どのへんの音を出したらいいのか、内田と千葉と話しながら詰めていきました。「ichijiku」で言えば小部屋に入ってミュートもして、遮音板を360度に貼り巡らしてデッドになるように工夫しています。
内田 音を作り込んでレコーディングするということを始めたのが、今回の作品でした。ビートは要なので全曲通してそこはすごく意識していて、逆に言うと楽曲の顔的な部分を作ってしまえば、あとはそこに沿うようなサウンドメイクをしていくだけでしたね。
──ちなみにアルバム制作中によく聴いていた音楽はありますか?
千葉 俺はテクノが好きでよく聴いていましたけど、あんまり作品に反映されている気はしないかな。
関 特にリファレンスになったような曲は今回はなかったよね?
内田 そうだね。
関 でも「ichijiku」とかを録っていたレコーディング後半は、みんなでGhost-Noteを聴いていました。Snarky Puppyのメンバーや、モノネオンっていうベーシストがいるバンドで超絶うまい人たちの集まりなんですよ。サウンドもドギツイものを作っていて、「どうやったらこんな音になるんだよ」と思いながら聴いてました。
──長谷部さんはどうですか?
長谷部 僕は昔のブルースですね。本屋さんでブルースの本を買ってきて、歴史を学びながら聴いていました。1960年代くらいのジャズとブルースが混ざり始めた時期の音が好きです。
──今日のファッションも、60年代を意識しているんですかね?
長谷部 そうなんですよ。その影響があるかもしれないと思いました(笑)。
千葉 それどうにかしてください。
益田 (笑)。
関 明らかに1人だけテイスト違うもんな。
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