わずか4館での全米公開ながらクチコミによって大きな話題を呼び、多数メディアからも絶賛を浴びて大ヒットを記録した映画『フェアウェル』が、2020年4月10日(金)よりついに日本公開!
米ニューヨークで暮らすビリーはガンで余命3ヶ月と宣告された祖母に会うため、「いとこの結婚式に出席する」という口実で生まれ故郷の中国に一時帰国する。祖母に真実を伝えるべきだと訴えるビリーに対し、過剰に心配させたくないと反対する家族。それぞれの立場と主張をぶつけ合い、葛藤と衝突を繰り返したビリーたちが、帰国当日の朝に出した答えとは……。
第77回ゴールデン・グローブ賞でアジア系女優史上初の主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞したオークワフィナが、本作への特別な想いを語ってくれた。
「アジア系アメリカ人女性を代表するような人物にしようって監督と話し合った」
―ルル・ワン監督との仕事はいかがでしたか?
素晴らしい時間を過ごすことができたね。脚本を受け取ったときに、この題材を書いたのがアジア系アメリカ人で、しかも女性だとは思っていなかったんだ。ルルはとてつもなく才能があって、自分が伝えたい物語の明確なイメージがあったから、とても仕事がしやすかった。ただ、私とそっくりなルルに演出してもらうのは、ちょっと変な気分だったかな。たまに彼女を見ていて、「あれ、なんで自分がそこにいるんだろ?」って思ったくらい(笑)。
―あなたが演じた主人公ビリーにも、監督ご自身が投影されているそうですね。
うん、確かにビリーというキャラクターは監督の体験談をベースにしてる。でも特定の人物ではなく、アジア系アメリカ人の女性みんなを代表するような人物にしようって監督と話し合ったんだ。大切な人を失ったり、母国に行って妙な気分を味わったことがある人なら、誰でも共感できるようにって。
―ビリーは祖母に対して秘密を守ることを迫られますが、あなたならどうしますか?
脚本を読んだとき、私にはそんなことできないと思った。だからビリーとまったく同じ心境だね。大切な人にそんな仕打ちをするなんてクレイジーだと思ったし。でも中国に行って、彼らがガンを告知せずに嘘をつく根拠を知ったんだ。本人の精神的な負担を取り除くために、その重荷をみんなで背負ってあげる、っていう。この映画に関わるうちに、双方の考え方を理解できるようになったんだよね。
「自分を奮い起こすために“オークワフィナ”っていうアイデンティティを作ることにした」
―あなたが出演している『クレイジー・リッチ!』(2018年)がアメリカで大ヒットしたことで、アジア映画に注目が集まるようになりましたね。
そうだね。アジア系アメリカ人を題材にした映画は昔からあったけど、『クレイジー・リッチ!』の大成功は、観客がこうした映画を求めているってことを世界に示してくれた。そのおかげで、同様の映画企画にゴーサインが出やすくなったんだよね。『フェアウェル』に関しても、間違いなくその恩恵を受けてると思う。まだまだ偏見は残ってるけど、アジア俳優が出演している映画のムーブメントを起こしてくれた大切な作品だね。
―いまやアクション俳優として活躍しているドウェイン・ジョンソンは、映画デビュー当初はプロレスラー時代のリングネームである“ザ・ロック”名義で活動していました。あなたも役者として本格的に活動するにあたり、ラッパーとしてのオークワフィナから本名のノーラ・ラムに変える予定はありますか?
いまのところはないかな。いま変えると、オークワフィナとノーラ・ラムが別人だと思われちゃうから。たしかに“オークワフィナ”っていうのは馬鹿げた名前だよね。『オーシャンズ8』(2018年)の予告編で、出演者の名前が次々登場したんだけど、サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、リアーナ……で、いきなりオークワなんとか(笑)。
※オークワフィナは「Awkward」と「fine」をつなげた造語で「私は不器用だけどそれでいい」という意味
―(笑)。
あれにはみんな混乱したと思う。この名前をつけたのは24才のときで、初めて舞台にあがるにあたって自信を奮い起こす必要があった。それで、オークワフィナっていうアイデンティティを作ることにしたんだ。でもその後、仮面であるオークワフィナと、私自身であるノーラ・ラムが重なりあうようになってきた。ただ、いまはオークワフィナっていう仮面は捨てたくないな。まだ不安でいっぱいだから。
取材・文:小西未来
『フェアウェル』は2020年4月10日(金)よりTOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー
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March 29, 2020 at 09:37AM
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