一つのハッシュタグが、国を動かすきっかけとなったーー。5月18日、今国会での成立が見送られた検察庁法改正案。大きなきっかけは、Twitter上で「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグを含む抗議の声が5百万回以上ツイートされたことだった。著名な芸能人やクリエイターも多数参加して世論の「うねり」を可視化してみせたツイッターデモ。このハッシュタグを発案し、最初のつぶやきを行った30代の女性会社員・笛美さんに話を聞いた。
インタビューを行った21日はちょうど、黒川弘務・東京高検検事長が緊急事態宣言下で「賭け麻雀」を行っていた事実を認め、辞任を表明したタイミングだった。笛美さんはこんな感想を漏らした。
「私が問題視していたのは、あくまで政府が公的な権力を恣意的に濫用することの怖さ。黒川さん1人に責任を押し付けたいわけではなかったんです」
そもそも、今回のTwitterデモを起こしたきっかけは何だったのか。笛美さんは、自身の置かれた境遇から、行動を起こすまでの道のりを語ってくれた。
東京都内在住で、広告制作系の仕事に従事している笛美さん。20代の頃は深夜勤務も当たり前のハードな毎日を送っていた。
「成功願望が強くて、仕事一筋の生活でした。ニュースは全然見ていなかったし、ましてや政治への興味なんてゼロでした」
20代後半に入ると、職場では男性の同僚や先輩が次々と結婚するようになり、焦りを感じるようになったという。
「男性の場合、結婚しても子どもができても、家事は奥さんに任せて、仕事で同じように成果を上げ続けられる。でも女性の場合は、仕事を続けたいなら家庭も両立していかないといけない。プレッシャーに感じてしまって、辛かったですね。職場では、『結婚したらすぐ仕事辞めそうだね』『女を使って仕事をもらってる』などと、冗談交じりに言われることも多かった。社内外の期待に応えたくて『若くて可愛い』女の子の枠に自分を進んで当てはめようとしていたと思います」
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